なぜ在庫が焦点になるのか

製造業なら設備、運送業なら車両と許可、小売業なら立地。業種ごとに価値の源泉は違います。リユース業では、その多くが在庫です。

ところがリユースの在庫には、他業種にない性質があります。

  • 一点物が多く、同じ商品の相場が参照しにくい
  • 状態(コンディション)によって価値が大きく変わる
  • 相場が変動する(ブランド品、貴金属、トレーディングカードなど)
  • 時間の経過とともに価値が下がるものが多い

つまり、帳簿価額が「今その金額で売れること」を意味しないのです。買い手はここを疑ってかかります。疑うのが仕事だからです。

買い手が確認する4つのこと

1. 実在性

帳簿に載っている商品が、本当にそこにあるか。実地棚卸の記録があるか、いつ行われたか。棚卸差異が出た場合、どう処理してきたか。数年間まともに棚卸をしていない会社は、この時点で大きく減点されます。

2. 評価の妥当性

帳簿価額は取得原価(買取金額)で計上されているのが一般的です。買い手が知りたいのは、それが今いくらで売れるのかです。直近の実売データと突き合わせて確認されます。

3. 滞留の状況

仕入れてから何日経った在庫が、いくらあるのか。これを在庫日齢と呼びます。90日以内、180日以内、1年以上、といった区分で分布を見ます。1年以上の在庫が大きな割合を占めていれば、そこは実質的に価値が減っているとみなされます。

4. 帳簿に載っていない在庫

逆のパターンもあります。個人的なルートで仕入れたものが記録されていない、社長が私物と混在させている、といったケースです。これは在庫評価の問題であると同時に、コンプライアンス上の重大な懸念として扱われます。

在庫日齢で管理する

在庫を金額だけで見ていると、実態が見えません。日齢を加えると、途端に手を打つべき場所が分かります。

在庫日齢見方打ち手
30日以内健全通常販売
31〜90日要観察陳列位置の変更、写真の撮り直し、販路の変更
91〜180日要対応段階的な値下げ、EC・業者間市場への移動
181日以上滞留処分方針を決める(まとめ売り、値下げ、廃棄)

区分の日数はカテゴリによって変えて構いません。回転の速い家電と、じっくり売る骨董品では基準が違います。重要なのは、区分を決めて定期的に見ることです。

評価減はどう整理するか

滞留在庫や相場下落品について、帳簿価額を実勢価格まで引き下げる処理を検討することになります。

ここで多くの経営者が躊躇します。評価減を計上すれば、その期の利益が減るからです。銀行との関係を考えると避けたい、という気持ちも分かります。

しかし、M&Aの場面では話が逆になります。買い手は必ず実勢価格で見直します。そのとき、こちらが先に整理していれば「管理できている会社」と評価され、放置していれば「実態が見えない会社」として大きく割り引かれます。

会計上・税務上の処理には要件があり、判断には専門家の関与が必要です。ただ、「今すぐ現金化したらいくらか」という管理上の数字を、社内で持っておくことは今日からできます。

実地棚卸の準備

デューデリジェンスでは、実地棚卸の立会いを求められることがあります。備えとして、次を整えておくと安心です。

  • 個品管理(一点ごとに管理番号と仕入原価が紐づく状態)
  • 年1回以上の実地棚卸と、その記録の保存
  • 棚卸差異が出た場合の原因と処理の記録
  • 店舗・倉庫・委託販売中・EC出品中といった保管場所ごとの数量把握
  • 預かり品(買取前の預かり、修理預かり)と自社在庫の明確な区別

特に預かり品と自社在庫の混在は、指摘されやすいポイントです。物理的にも帳簿上も分けておいてください。

指摘される前にやっておくこと

  1. 在庫日齢の分布を出す(まずは金額ベースで概算でも可)
  2. 日齢の長い在庫について、実売可能価格を調べる
  3. 帳簿価額との差額を把握する
  4. 処理の方針(売り切る/値下げする/廃棄する)を決めて実行する
  5. 実地棚卸を実施し、記録を残す

これらは譲渡のためだけの作業ではありません。在庫が軽くなれば資金繰りが楽になり、粗利の実態も見えるようになります。今の経営にとってもプラスです。

まとめ

リユース業のM&Aで、在庫は必ず調べられます。実在性・評価の妥当性・滞留・簿外在庫の4点です。

先に整理しておけば評価につながり、放置すれば割り引かれます。指摘される前に自分で整える——これが最も効率のよい備え方です。整理の進め方から、お手伝いします。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。