計上しないとどうなるか
簿価が実態とかけ離れたままだと、次が起きます。
- 買収監査で必ず指摘される
- 「管理されていない会社」と評価される
- 在庫全体の信頼度が下がる(健全な在庫まで疑われる)
- 表明保証で、在庫の実在と価値について広い責任を負わされる
- 減額交渉の材料にされる
隠しても必ず発覚します。実地棚卸で現物を見られるためです。
計上する効果
- 残った在庫の信頼度が上がる
- 「実態を把握している会社」と評価される
- 買い手が独自に減額する余地が減る
- その後の月次の数字が実態を反映する
タイミング
次のいずれかで検討してください。
- 譲渡を考え始めた時点:早いほど、その後の決算が実態を反映します
- 譲渡の1〜2期前:直近の決算が整理された状態になる
- 売却の直前:効果は限定的。むしろ「直前に操作した」と見られる恐れも
- まず売れるものは売る(値下げ、販路変更、業者間市場)
- 売れなかったものについて、評価減を計上する
- 採用している評価方法(原価法か低価法か)
- 評価損を計上できる事由に該当するか
- その事実を客観的に示せるか(日齢データ、実売実績)
- 「実態に合わせた一時的な処理である」
- 「本業の収益力は変わっていない」(正常化後の利益で示す)
- 「これにより在庫の質が改善した」(日齢分布の推移で示す)
- どの在庫を、いくら評価減したか
- その根拠(日齢、実売実績、相場の下落)
- 判断した時期と責任者
- 税理士の確認を得たこと
- 実売は、現金が入る — 金額は小さくても、資産が現金に変わります
- 実売は、実勢価格の根拠になる — いくらで売れたかが記録に残ります
- 実売は、保管コストも止まる — 場所と管理の負担が消えます
- 評価減は、現物が残る — 簿価は下がりますが、在庫としては残ったままです
- 評価減だけでは、買い手の懸念は消えない — 売れない在庫が売れないままである事実は変わりません
- 処理の内容を明細で示す — 何を、いくらで、いつ処理したかです
- 処理前後の在庫構成を並べる — 日齢の分布がどう変わったかを見せます
- 営業損益と特別損益を分けて示す — 本業の収益力が損なわれていないことを説明します
- 翌期以降の見込みを示す — 一過性の処理であることを明確にします
- 金融機関に事前に説明する — 決算書が出てから説明するのでは遅くなります
- 譲渡の直前は避ける — 数字を作ったと見られる可能性があります
- 2〜3期前に実施する — 処理後の期の数字が、実力として見てもらえます
- 継続的に少しずつ行う — 一度に大きく処理するより、管理されている印象になります
- 繁忙期を避ける — 処理の作業自体に人手がかかります
1番目か2番目が望ましい。直前は避けてください。
実際に売るほうが良い
評価減は帳簿上の処理です。実際に売れば、現金が戻り、スペースが空きます。
順序としては、次が理想です。
税務上の論点
在庫の評価減が税務上も認められるかは、要件によります。
必ず税理士に相談してから計上してください。要件を満たさなければ、税務上は損金になりません。
赤字になる場合の判断
評価減で赤字になっても、次の理由があれば説明できます。
説明できる赤字は、評価を下げません。むしろ健全化の証拠になります。
記録を残す
評価減と実売、どちらを選ぶか
簿価を落とす方法と、実際に売って処理する方法があります。性質が違います。
可能な限り、実際に売って処理してください。評価減は会計上の処理であり、事業の実態は変わりません。買い手が見ているのは簿価ではなく、その在庫が現金に変わるかどうかです。
赤字になる場合の説明
処理によって単年が赤字になる場合、その説明の準備が必要です。
5番目を怠ると、融資の判断に影響します。意図的な在庫整理であることを、実行前に伝えておいてください。事前の説明があれば、赤字そのものより改善の姿勢が評価されます。
実行の時期を考える
いつ処理するかで、評価への影響が変わります。
2番目が理想的な形です。処理を終えた後の決算を2期分示せれば、その数字が現在の実力だと説明できます。譲渡を検討し始めた時点が、処理に着手すべき時期です。会計処理と税務上の要件については、税理士にご確認ください。
まとめ
評価減は、譲渡の1〜2期前までに。直前は避けてください。まず売れるものを売り、残りを評価減に。
税務上の要件は税理士に確認を。根拠となる日齢データと実売実績を必ず残しておきましょう。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。