在庫回転を測る

まず現在地を知ります。よく使われるのは次の2つです。

  • 在庫回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫。1年で在庫が何回入れ替わったかを表します。
  • 在庫回転日数 = 365 ÷ 在庫回転率。在庫が現金に戻るまでの平均日数です。

ただし、会社全体の平均値だけを見ても打ち手は出ません。カテゴリ別に分けて初めて、どこが詰まっているかが分かります。家電と時計と古着では、健全な回転日数がまったく違うためです。

在庫日齢で管理する

平均値より実務的なのが在庫日齢です。一点ごとに「仕入れてから何日経ったか」を持ち、日齢の区分ごとに金額を集計します。

毎月、次の表を出すだけで会話が変わります。

日齢金額構成比前月比
0〜30日
31〜90日
91〜180日
181日以上

「181日以上を、今月中に◯%減らす」といった目標が立てられるようになります。目標が具体的になると、現場も動けます。

値下げをルールにする

多くの現場で、値下げは担当者の裁量に委ねられています。その結果、「思い入れのある商品ほど下げられない」「特定の担当者だけが安売りする」といったばらつきが生まれます。

ルール化の一例です。

  1. 日齢30日で、陳列位置を変える/写真を撮り直す(値段は下げない)
  2. 日齢60日で、◯%値下げ
  3. 日齢120日で、さらに◯%値下げ、あわせて販路を変更
  4. 日齢180日で、処分方針を決定(まとめ売り、業者間市場、廃棄)

重要なのは、「下げる」ことより「いつ判断するかを決めておく」ことです。判断が自動的に発生する仕組みにすれば、放置がなくなります。

なお、いきなり大幅に下げるより、段階的に下げるほうが結果的に回収額が大きくなる傾向があります。カテゴリごとに検証してみてください。

買取(仕入れ)の上限を設計する

在庫が滞留する原因は、売り方だけではありません。そもそも高く買いすぎているケースが少なくありません。

買取価格を決めるとき、次を明確にしておきます。

  • カテゴリごとの目標粗利率
  • 想定販売価格に対する買取上限の比率
  • 想定販売期間(この日数で売れる見込みがあるか)
  • 上限を超える場合の決裁者と、その判断基準

「買取件数」を目標にすると、無理な高値買取が起きやすくなります。件数ではなく、「粗利額」と「想定回転日数」を目標に据えるほうが健全です。

販路を使い分ける

同じ商品でも、売る場所によって回転と粗利が変わります。

販路特徴向いている在庫
店頭粗利は高いが、商圏に限られる地域で需要のある実用品、来店動機になる商品
自社EC・モール商圏が広い。手数料と発送の手間指名で探される商品、希少品
ネットオークション・フリマ回転は速いが価格は読みにくい相場が形成されている量産品
業者間市場まとめて現金化できる。単価は下がる滞留品、専門外のカテゴリ

「店頭で90日売れなければECへ、ECで60日売れなければ業者間市場へ」といった流し方の順序をあらかじめ決めておくと、判断に迷いがなくなります。

やってはいけないこと

  • 一斉の投げ売り:短期的に現金は入りますが、粗利を失い、客単価の感覚も崩れます
  • 「いつか売れる」で持ち続ける:保管コストと機会損失が積み上がります
  • 回転だけを追いかける:安く売れば回転は上がります。粗利額とセットで見てください
  • 感覚での判断:数字を出さずに議論すると、声の大きい意見が通ってしまいます

効果はどこに出るか

在庫回転が改善すると、次の順で効いてきます。

  1. 資金繰りが楽になる(在庫に縛られていた現金が戻る)
  2. 買取に回せる資金が増え、良い仕入れができるようになる
  3. 売場の鮮度が上がり、来店頻度が改善する
  4. 財務内容が良くなり、金融機関の評価が上がる
  5. 将来の承継・譲渡の場面で、企業価値として評価される

つまり、今の経営改善と、将来の磨き上げが同じ施策で進みます。優先度が高い理由はここにあります。

まとめ

在庫回転の改善は、在庫日齢の可視化から始まります。値下げと買取上限をルール化し、販路の流し方を決める。この3点を仕組みにすれば、担当者の裁量に頼らず回るようになります。

どこから着手すべきか、現状の数字をもとにご一緒に整理します。お気軽にご相談ください。