実績報告とは
交付決定を受けた内容どおりに事業を実施したことを、書類で証明する手続きです。報告の内容が確認され、補助額が確定してから入金されます。
制度によって必要書類は異なるため、交付決定時に示される要領を必ず確認してください。
※ 補助金の名称・対象経費・要件・公募時期は年度によって変わります。本記事は一般的な進め方を整理したものですので、実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。
この手続きを経なければ、入金されません。だから、導入して終わりではなく、報告までが一連の作業だと考えてください。
一般的に必要になる書類
| 書類 | 確認されること |
|---|---|
| 見積書 | 交付決定前に取得したものか。相見積りの有無 |
| 発注書・契約書 | 交付決定後の日付か |
| 納品書 | 実際に納品されたか、日付 |
| 請求書 | 金額、内訳 |
| 領収書・振込記録 | 実際に支払ったか |
| 通帳の写し | 支払いの事実 |
| 写真 | 導入した設備の現物 |
| 実績報告書 | 事業の内容と効果 |
日付の整合性が最も厳しく見られます。交付決定 → 発注 → 納品 → 支払いの順になっているかを確認してください。
日付の整合が厳しく見られるのは、順序が制度の前提だからです。決定より前に発注していれば、その経費は対象になりません。
だから、書類を揃えたら日付を並べて確かめてください。決定、発注、納品、支払い。この順になっているか。
順序が崩れていることに報告の段階で気づいても、直せません。だから、発注のときに確かめる習慣が要ります。
見積りについては、決定より前に取ったものでも問題ありません。むしろ、申請には見積りが要るため、前に取ることになります。
支払方法の注意
- 振込が原則:現金払いは証拠が弱く、認められないことがあります
- 会社の口座から支払う:社長個人の口座からの支払いは問題になります
- クレジットカード払い:引き落としまで確認できる書類が必要になることがあります
- 相殺・手形:認められない場合があります
- 報告期限までに支払いが完了していること
社長個人のカードで支払ったというケースは実際にあります。これは公私混同の問題でもあります。公私混同の解消が最優先である理由をご覧ください。
この五つは、どれも証拠として示せるかという観点から決まっています。誰が、いつ、いくら払ったかが確かめられる形であることが求められます。
会社の口座から払うという点は、特に守ってください。個人の口座やカードから払うと、会社の事業として支出したことを示しにくくなります。
資金が足りずに個人で立て替える場面もあるかもしれませんが、その場合は先に交付元に確認してください。後から相談するより確実です。
支払いが期限までに完了している必要もあります。分割で払っている途中だと、認められないことがあります。契約のときに支払いの条件も確かめてください。
写真の撮り方
制度によって求められる撮り方が異なりますが、次が基本です。
- 設置前・設置中・設置後を撮る
- 設備の全体が分かる写真
- 型番・製造番号が読める写真
- 設置場所が分かる写真
- 補助事業である旨の表示が求められる場合は、それも撮る
設置前の写真は、撮り忘れると後から撮れません。 導入の当日に、担当者が撮る段取りを決めておいてください。
設置の前の写真は、撮り忘れると取り返せません。だから、導入の当日までに段取りを決めておいてください。
決めるのは、誰が撮るか、何を撮るか、どこに保存するかの三点です。当日は業者も慌ただしく、後で撮ろうと思うと機会を逃します。
型番や製造の番号が読める写真も、忘れやすい部分です。全体の写真だけでは、何を導入したかが特定できません。
写真には日付がわかる形で保存してください。撮影の日時が記録に残る形なら、そのまま使えます。
求められる撮り方は制度によって違います。交付決定のときに示される要領で確かめてください。
報告が通らない典型例
- 交付決定前の日付で発注していた:最も多い
- 見積りと違うものを買った:型番・仕様の変更を事前に届け出ていない
- 対象外の経費が混ざっていた:付属品、消耗品、保守料など
- 支払いが完了していない:分割払いの途中
- 領収書の宛名が個人
- 写真がない・不鮮明
- 報告期限を過ぎた
2番目について、変更が必要になったら必ず事前に相談してください。「良かれと思って上位機種にした」も問題になります。
七つのうち、上の三つは事前に防げるものです。日付を確かめ、変更を勝手にせず、対象になる経費かを確かめる。
二つ目については、変更したくなる場面が実際に起こります。納期が間に合わない、型が変わった、より良い提案が来た。
そのときに相談してから決めるという習慣があるかどうかで、結果が変わります。連絡先を控えておき、迷ったらすぐ聞ける状態にしておいてください。
五つ目の宛名は、細かい点ですが差し戻されます。発行してもらうときに会社名で頼んでください。
七つ目については、期限を暦に入れておけば防げます。担当が代わるときの引き継ぎも決めておいてください。
日頃の保管の仕方
導入が決まったら、専用のファイルを1つ作ってください。
- 公募要領、交付決定通知
- 見積書、発注書、契約書
- 納品書、請求書、領収書
- 振込記録、通帳の写し
- 写真(日付が分かる形で)
- やりとりのメール
後からかき集めるのが最も大変です。その都度入れる習慣にしてください。
専用の場所を作るというのは、紙でも電子でも構いません。大事なのは、その場所が決まっていて、全員が知っていることです。
電子で保管する場合は、名前の付け方も決めておいてください。後から探すときに、何の書類かがわかる形にしておきます。
やりとりの記録も残す価値があります。変更を相談したときの返答、対象になるかを問い合わせたときの回答。後で根拠として使えます。
保存期間
補助金に関する書類には、一定期間の保存義務があります。期間は制度によって異なります。
また、実地検査が行われることがあります。設備が実際に使われているかを確認されるため、書類とともに現物の状態も維持してください。
保存の期間は制度によって違います。台帳に記録しておけば、いつまで保管するかも管理できます。
保管の場所が代わるときは、引き継ぎを忘れないでください。事務所の移転や担当の交代のときに、まとめて処分されることがあります。
効果報告
制度によっては、実績報告とは別に数年間の事業化状況報告が求められます。
- 売上・利益の推移
- 労働時間・生産性の変化
- 賃上げの状況(要件になっている場合)
申請時に書いた効果の数値と照らされます。過大な数字を書いていると、ここで説明に困ります。事業計画書の書き方をご覧ください。
照らされることを前提に、申請の段階から測る仕組みを考えておいてください。書いた数字を確かめる手段がなければ、報告のときに困ります。
承継・M&Aとの関係
補助金を受けた設備がある場合、次を整理しておいてください。
- いつ、どの制度で、何を導入したか
- 処分制限の期間(取得財産の処分制限)
- 報告義務が残っているか
- 関係書類の保管場所
デューデリジェンスで確認されます。 制限の内容を把握していないと、手法の選択にも影響します。法務デューデリジェンスと契約書の棚卸しをご覧ください。
この四つは、台帳を作っておけば揃います。だから、補助を受けた時点で台帳に記録する習慣にしてください。
把握していないと、確認の場面で調べ直すことになります。しかも、担当が代わっていると経緯を知る人がいません。
制限の内容がわからないまま手法を決めると、後から変更を求められることがあります。だから、早い段階で確認しておく必要があります。
報告の作業をいつ始めるか
導入が終わってから始めるのでは、間に合わないことがあります。だから、導入と並行して進めてください。
並行して進めるとは、書類を集めながら導入するということです。見積り、発注、納品、支払い。それぞれの段階で書類が発生します。
その都度、専用の場所に入れていけば、報告のときには揃っています。後からかき集める作業が要りません。
報告書そのものも、早めに下書きを作っておいてください。何を書くべきかを先に見ておけば、必要な材料もわかります。
効果について書く欄があるなら、測る仕組みも要ります。導入の前の数字がなければ、変化を示せません。
誰が担当するか
この作業は、事務の負担として見込んでおく必要があります。誰が担うかを決めていないと、忙しい時期に止まります。
向くのは、書類の扱いに慣れている人です。経理や総務の担当なら、日頃から似た作業をしています。
ただし、現場のことがわからないと書けない部分もあります。だから、現場と事務で分担する形が実際的でしょう。
担当が代わる可能性も考えてください。手続きの期間は長く、その間に人が代わることがあります。資料の場所と残っている手続きを共有しておいてください。
外部に頼む場合も、社内で内容を把握している人は必要です。すべてを任せきりにすると、質問に答えられません。
実地の確認に備える
制度によっては、実際に設備が使われているかを確かめに来ることがあります。だから、書類だけでなく現物も維持しておく必要があります。
確かめられるのは、その設備が申請した場所にあるか、使われているか、申請した用途で使われているかです。
だから、設置の場所を変える場合は注意が要ります。事前に届け出が必要なこともあります。
使われていない状態だと、目的どおりでないと判断される可能性があります。導入したものの使っていないという状態は、この面でも問題になります。
書類の保管場所も、すぐ出せるようにしておいてください。求められたときに探し始めると、時間がかかります。
その後の報告に備える
制度によっては、実績の報告の後にも数年にわたって報告が求められます。この期間も見込んでおいてください。
報告する内容は、事業の状況や効果です。だから、測る仕組みを続けている必要があります。
申請のときに書いた数字と照らされます。過大な見込みを書いていると、ここで説明に困ります。だから、申請の段階で控えめに見積もっておくほうが安全です。
達成できない場合も、状況を説明することになります。理由を示せれば、それで済むこともあります。放置して報告しないほうが問題になります。
報告の時期を暦に入れ、担当を決めておいてください。数年にわたる話なので、仕組みにしておかないと忘れます。
業者との連携
報告に必要な書類の多くは、業者から受け取るものです。だから、業者との連携が結果を左右します。
まず、制度を使うことを伝えてください。書類の形式や日付について、気をつけてもらう必要があります。
伝えるべきは、決定より前に発注できないこと、書類に何が必要か、いつまでに揃える必要があるかです。
この分野の制度に慣れた業者なら、こちらが言わなくても揃えてくれます。慣れていない業者なら、必要なものを具体的に伝える必要があります。
書類を受け取ったら、その場で内容を確かめてください。宛名、日付、内訳。後から直してもらうより、その場のほうが早く済みます。
写真についても、撮る時期を業者と共有しておいてください。設置の作業中に撮る必要があるなら、事前に伝えておく必要があります。
減額されたときにどうするか
報告の結果、想定より入る額が減ることがあります。この場合、資金の計画に影響します。
減った理由は、確認の連絡で伝えられます。対象外の経費が含まれていた、支出が見積りより少なかった、書類が足りなかった。
書類の不足が理由なら、追加で提出できることもあります。だから、まず理由を確かめて、直せる部分があるかを聞いてください。
直せないなら、その額で資金の計画を組み直すことになります。借入で立て替えているなら、返済の計画も見直す必要があります。
この経験は、次に活かせます。何が対象外とされたかを記録しておけば、次の申請で同じことを繰り返しません。
まとめ
実績報告では、交付決定 → 発注 → 納品 → 支払いの日付の整合性が最も厳しく見られます。支払いは会社の口座から振込で行い、設置前の写真を撮り忘れないでください。導入が決まったら専用のファイルを作り、書類をその都度入れる習慣にしてください。