審査で見られる観点
制度によって異なりますが、おおむね次が共通します。
- 課題が明確か
- その課題が、この取り組みで解決するか
- 効果が定量的に示されているか
- 実現できる体制と資金があるか
- 市場・需要の裏付けがあるか
- 政策の目的に合致しているか
1番目と3番目で差がつきます。
基本の構成
- 企業概要
- 現状と課題
- 取り組みの内容
- 効果(定量・定性)
- 実施体制とスケジュール
- 市場・需要の見通し
- 収支計画
1. 企業概要
食品工場では、次を含めると理解されやすくなります。
- 主な製品と、その用途(どこで売られているか)
- 取引先の構成(業態別、比率)
- 営業許可の種類、取得している認証
- 主要な設備と、その稼働状況
- 従業員数と構成
審査する人は食品工場の実態を知らないことがあります。「スーパーで販売されている◯◯を製造」といった具体性が有効です。
2. 現状と課題(最重要)
数字で書いてください。抽象的な記述は評価されません。
| 避けたい書き方 | 望ましい書き方 |
|---|---|
| 人手不足が深刻 | 包装工程に1日15人時を要し、繁忙期は月40時間の残業が発生。過去1年の求人に対し応募は3件 |
| 設備が老朽化している | 充填機は導入から◯年、直近3年の修繕費は年平均◯万円で増加傾向。年間◯時間の突発停止が発生 |
| 生産性が低い | ライン稼働率は◯%。うち段取り替えが◯%、チョコ停が◯%を占める |
| 歩留まりが悪い | 充填工程の過剰充填が平均◯%、年間◯万円の原料損失 |
これらの数字は、日頃から測っていなければ書けません。ライン稼働率の見方と生産実績の自動収集をご覧ください。
課題の背景も書く
- 市場・業界の動向
- 取引先からの要求の変化
- 原材料価格や人件費の上昇
- 従業員の高齢化
食品製造業の業界動向をご覧ください。
3. 取り組みの内容
- 導入する設備の名称、型式、仕様
- それが課題をどう解決するか
- 設置場所とレイアウト(図を入れる)
- 工程がどう変わるか(変更前後の工程図)
変更前後の工程図が効果的です。文章より一目で伝わります。
「なぜこの設備か」を書く
- 他の選択肢と比較した結果
- この仕様が必要な理由
- 自社の製品特性への適合
相見積もりの資料としても使えます。
4. 効果(定量的に)
算定の型
| 効果 | 算定式 |
|---|---|
| 人件費の削減 | 削減人時 × 時間単価 × 年間稼働日数 |
| 原料費の削減 | 歩留まり改善率 × 原料単価 × 年間使用量 |
| 不良の削減 | 不良率の改善 × 生産量 × 製造原価 |
| 生産量の増加 | 増加数量 × 限界利益 |
| エネルギー削減 | 削減量 × 単価 |
算定の根拠を必ず示してください。「メーカーの仕様値による」「テスト結果による」「過去実績からの推計」など。
付加価値額の向上
多くの制度で、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の向上が目標として設定されます。
投資による減価償却費の増加も含めて、目標が達成可能かを試算してください。無理な目標は、後で返還のリスクになります。
5. 実施体制とスケジュール
- 責任者と担当者
- 操作する人材の確保・育成計画
- 設置工事の見通し(電源、エア、基礎、排水)
- 月単位のスケジュール
営業許可に関わる場合は、その手続きも含めてください。新しい品目を作る場合、許可の取得期間がスケジュールを左右します。営業許可が要る業種はどれかをご覧ください。
6. 市場・需要の見通し
「作れば売れる」という前提は通用しません。
- 既存取引先からの増産要請(あれば具体的に)
- 新規の引き合い・商談の状況
- 市場の動向
- 競合との比較
具体的な引き合いがあると、計画の実現性が大きく高まります。
7. 収支計画
- 投資額と資金の調達方法
- 売上・原価・利益の見通し(3〜5年)
- 投資回収の見通し
- 借入がある場合、返済計画との整合
既存の利益計画と整合しているかを確認してください。利益計画の立て方をご覧ください。
書き方の技術
1. 審査項目に沿って書く
公募要領に審査項目が示されています。その順序と見出しに沿って書くと、審査する側が確認しやすくなります。
2. 図表を使う
- 工程図(変更前後)
- レイアウト図
- 数値の推移グラフ
- 工場・設備の写真
文字ばかりの計画書は読まれません。
3. 専門用語に説明をつける
審査する人が食品業界に詳しいとは限りません。業界用語には簡単な説明を添えてください。
4. 分量を守る
ページ数の上限がある場合は必ず守ってください。超過すると審査対象外になることがあります。
相談する
- 認定経営革新等支援機関
- 商工会議所・商工会
- よろず支援拠点
第三者に読んでもらうことが有効です。自社では当たり前のことが、外部には伝わらないことがあります。
計画書は社内でも役立つ
作成の過程で、自社の課題と数字が整理されます。
この資料は、金融機関への説明、後継者への引き継ぎ、M&Aの企業概要書にも活用できます。採択されなくても、作る価値があります。
金融機関への説明をご覧ください。
※ 補助金・税制優遇の制度名、要件、補助率、公募時期は年度ごとに変わります。本記事は一般的な考え方を整理したものです。実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認のうえ、認定経営革新等支援機関等の専門家にご相談ください。