EBITDAとは

営業利益に減価償却費を足し戻した数字です(厳密な定義には幅があります)。設備投資の会計処理の違いに左右されにくいため、企業間の比較に使われます。

食品工場は設備投資が重く、減価償却費が大きくなります。そのため、営業利益だけで見ると小さく見えても、EBITDAでは相応の数字になることがあります。

M&Aでの使われ方

「EV/EBITDA」という形で使われます。EV(企業価値)がEBITDAの何倍かを見る指標です。

実務では、この倍率を使って次のように評価額の目安を作ります。

調整後EBITDA × 倍率 - 純有利子負債 = 株式価値

純有利子負債の考え方はネットデット調整をご覧ください。

「調整後」が重要

決算書のEBITDAをそのまま使うことはありません。中小企業では次の調整が必須です。

  • 経営者・親族の役員報酬を適正水準に置き換える
  • 経営者の生命保険料、私的な費用を除く
  • 一時的な損益(保険解約益、災害損失、補助金収入)を除く
  • 親族への地代・家賃を相場に調整する
  • 非経常的な修繕費をならす

この調整をした後の数字が「調整後EBITDA」です。自分で計算しておくと、交渉の出発点が変わります決算書の磨き上げを参照してください。

食品工場でEBITDAが誤解を生む理由

EBITDAは減価償却費を足し戻すため、「設備が古くて償却がほぼ終わっている工場」ほど数字が良く見えるという性質があります。

しかし実態は逆で、償却が終わっている設備は更新時期が近いということです。買い手は当然ここを見ます。

したがって、食品工場の評価では次を必ずセットで見ます。

  • 今後3〜5年で必要になる設備投資の額
  • 維持に必要な年間の投資水準(更新投資)

この必要投資額が大きいと、EBITDAが良くても評価は下がります。設備の評価設備の寿命から逆算するをご覧ください。

倍率はどう決まるか

倍率に固定の相場はありませんが、次の要素で上下します。

倍率が上がる要因倍率が下がる要因
利益が複数年で安定している年によって利益が大きく振れる
取引先が分散している1社への依存度が高い
価格改定を実現している何年も価格を据え置いている
設備が更新済みで余力がある更新投資が近く必要
属人化が解けている特定の人がいないと作れない
買い手にシナジーがある単独での運営が前提

季節性の扱い

食品製造業では、年間の繁閑差が大きい会社があります。単年度のEBITDAだけを見ると、その年がたまたま良かった(悪かった)だけという可能性があります。

そのため、3期分を並べて平均や趨勢を見るのが実務です。1年だけ良い数字を作っても、評価には反映されにくいということでもあります。利益の安定性をどう見せるかを参照してください。

売り手が事前にできること

  1. 3期分の調整後EBITDAを自分で計算する
  2. 調整の根拠を資料として揃える(役員報酬、保険料など)
  3. 設備の年表を作り、今後の必要投資額を明示する
  4. 年による変動があれば、その理由を説明できるようにする

3番目は一見不利に思えますが、先に示すほうが結果的に有利です。隠していても買収監査で必ず分かります。環境・設備デューデリをご覧ください。