退職金が持つ意味

  • 社長にとって:引退後の生活資金(引退後の生活資金の考え方
  • 会社にとって:損金として計上できる(要件を満たす場合)
  • M&Aにおいて:譲渡代金との配分で手取りが変わる
  • 承継において:先代への報酬であり、区切りでもある

金額の考え方

実務では、次のような考え方が用いられることがあります。

最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率

  • 最終報酬月額:退任時の役員報酬
  • 在任年数:役員として在任した期間
  • 功績倍率:役職や貢献度に応じた係数

倍率の水準は、会社の規模・業種・役職によって判断されます。 具体的な数値は個別の判断になるため、必ず税理士に確認してください。

「不相当に高額」とされないために

退職金が過大と判断されると、その部分は損金に算入できません。判断の材料は次のような点です。

  • 在任年数
  • 退職の事情
  • 同規模・同業他社の水準
  • 最終報酬月額が実態に見合っているか

退職の直前に役員報酬を大幅に引き上げると、問題になることがあります。設計は数年前から考えてください。

手続き

  1. 退職金規程を確認する:役員退職慰労金規程があるか
  2. 株主総会の決議:金額または算定基準を決議する
  3. 取締役会等での決定:具体的な金額・時期・方法
  4. 議事録を残す
  5. 支給

規程がない場合、この機会に整備することも検討してください。規程があると、算定の根拠が明確になります。

支給の時期

M&Aの場合、クロージング前に支給するか、後にするかが論点になります。

時期特徴
クロージング前会社の資金で支給。純資産が減るため、価格に影響する
クロージング後買い手の同意が必要。最終契約に定める

いずれにせよ、最終契約で明確に定めてください。 口約束のままだと、後で支給されないことがあります。最終契約書の主要条項条件交渉で譲れない点の決め方をご覧ください。

譲渡代金との配分

社長が会社から受け取る総額を、株式譲渡代金と退職金にどう配分するかで手取りが変わります。

  • それぞれ課税の仕組みが異なる
  • 退職金は会社の損金になるため、会社側の税負担にも影響する
  • 買い手にとっても関心事になる

複数のパターンで試算してもらってください。手取りを最大化するための順序株式譲渡益課税の基本をご覧ください。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。

会社の資金

退職金を支給するには、会社に資金が必要です。

資金の手当てを先に確認してください。「規程では◯円だが、払える資金がない」という事態は実際にあります。

保険の活用

役員向けの保険を退職金の原資として積み立てている会社があります。

  • 解約返戻金の額と、ピークの時期
  • 解約のタイミングと退職金の支給時期を合わせる
  • 税務上の取扱い

保険の設計は数年前から考える必要があります。保険の活用と解約返戻金をご覧ください。

親族内承継の場合

株式を渡すため、譲渡代金は入りません。退職金が主な収入源になります。

  • 会社に支給できる資金があるか
  • 支給後の会社の財務が悪化しないか
  • 後継者の負担にならないか

会社の体力を超えた退職金は、後継者を苦しめます。 分割支給や、金額の調整も検討してください。

配偶者・役員親族の退職金

配偶者や親族が役員になっている場合、その退職金も設計に含められます

  • 実際の職務内容に見合った水準か
  • 在任年数
  • 名目だけの役員でないか

配偶者が役員の場合の承継設計をご覧ください。

相続との関係

社長が在任中に亡くなった場合、死亡退職金が支給されることがあります。相続税の扱いが異なるため、税理士に確認してください。

また、規程がないと支給の根拠が曖昧になります。規程の整備は、相続への備えでもあります。相続・自社株対策の完全ガイドをご覧ください。

まとめ

役員退職金は、最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率という考え方で設計されます。退職直前の報酬引き上げは問題になり得るため、数年前から検討してください。M&Aでは譲渡代金との配分で手取りが変わるので、複数パターンで試算を。会社の支給資金の手当ても先に確認してください。