工程で分ける

解体・リサイクルの作業を工程に分解してください。おおむね次のようになります。

  1. 入庫:引き取り、搬入、受入確認、報告
  2. 前処理:液抜き、バッテリー・フロン類の処理、エアバッグ処理
  3. 解体:部品の取り外し
  4. 部品処理:清掃、検査、撮影、データ登録、保管
  5. 選別:素材ごとの分別
  6. 出荷:積み込み、運搬、計量
  7. 事務:報告、記録、請求、販売対応

この分け方で時間と費用を割り付けると、どの工程が重いかが見えます。

時間を測る

1週間でよいので、実測してください。方法は簡単です。

  • 工程名を書いた紙を現場に貼る
  • 作業を始めた時刻と終えた時刻を書く
  • 1週間分を集計する

厳密さは要りません。おおよその比率が分かれば十分です。

測ると、想像と違う結果が出ることがあります。

  • 解体そのものより、部品処理に時間がかかっている
  • 探す時間、運ぶ時間が予想以上に多い
  • 事務作業が現場の時間を食っている
  • 待機している時間が長い(重機の順番待ち、車両の入れ替え)

2番目と4番目は付加価値を生まない時間です。ここが最初の改善対象になります。

人件費を工程に割り付ける

測った時間の比率で、人件費を配分します。

例えば、現場の人件費が年間で一定額あり、時間の比率が「入庫1割、前処理1割、解体3割、部品処理3割、選別1割、出荷1割」なら、その比率で割り付けます。

これで工程ごとのコストが見えます。そして次の問いが立てられます。

  • 部品処理に3割のコストをかけて、部品の収入はそれに見合っているか
  • 選別に1割しかかけていないが、増やせば歩留まりが上がるか
  • 事務作業を現場から切り離せないか

設備費を割り付ける

減価償却費と維持費を、使う工程に割り付けます。

  • 重機:解体、選別、出荷
  • フォークリフト:部品処理、出荷
  • フロン類回収装置:前処理
  • プレス:出荷前の圧縮
  • 倉庫、棚:部品処理
  • 油水分離設備:前処理、全体

これで設備の重い工程が分かります。そして稼働率と照らせば、投資の妥当性が判断できます。

土地の費用を忘れない

この業態で最も見落とされるのがここです。

ヤードの土地は、次の形で費用になっています。

  • 借地なら地代
  • 自社所有なら固定資産税、機会費用
  • 社長個人所有なら支払地代

そして面積の使い方で、どの工程が土地を食っているかが分かります。

  • 解体前の車両の保管:入庫の滞留
  • 部品倉庫:部品処理
  • スクラップの置き場:出荷前の滞留
  • 作業スペース:解体

滞留している車両やスクラップが広い面積を占めているなら、その面積分の費用を滞留が生んでいます。回転を上げれば減ります。

重い工程が分かったあと、何を試すか

測って終わりにしないために、工程ごとに「まず試すこと」を用意しておきます。いずれも設備投資を伴わない範囲です。

重かった工程よくある原因費用をかけずに試せること
入庫・受入置き場が決まっておらず、置き直しが発生する入庫直後の置き場を区画で固定し、表示を出す
前処理道具と回収装置が離れていて往復が多い前処理の位置を1か所に集約し、道具を定位置に置く
解体車両の向き・高さが作業に合っていない架台の使い方を統一し、作業姿勢を揃える
部品処理撮影とデータ登録が後回しになり、二度手間になる取り外し→清掃→撮影→登録を1連の作業として並べる
選別品目の区分があいまいで、出荷前に選び直す容器ごとに品目を固定し、表示を貼る
出荷積み込みの順番待ちで重機が止まる出荷の時間帯をまとめ、重機の担当を決める
事務現場が記録と請求を兼ねている記録の様式を減らし、入力を1回にする

共通しているのは、置き場を決める・順番を決める・道具の位置を決めるの3つです。動線の無駄は、費用ではなく取り決めで減ります。効果が出れば、次に測ったときの比率で確認できます。

設備の検討は、この3つをやり切ってからです。順序を逆にすると、動線が悪いまま処理能力だけが上がり、詰まる場所が別の工程に移るだけになります。

改善が効く順番

原価が見えたら、次の順で手を付けてください。

第1:付加価値を生まない時間を削る

探す、運ぶ、待つ。費用がかからず、すぐ効きます。動線の見直し、置き場の固定、区画の表示。

第2:滞留を減らす

土地の費用と資金の両方に効きます。入庫から出荷までの日数を短くする。

第3:手をかける範囲を絞る

売れない部品を取らない。手間に見合わない選別をやめる。原価が見えて初めて判断できます

第4:処理費を交渉する、または減らす

外部要因ですが、量を減らす工夫と、複数の委託先による比較ができます。

第5:設備に投資する

最後です。上の4つをやらずに設備を入れても、効果は限られます

年に一度見直す

一度測ったら終わりではありません。年に一度、1週間だけ測り直してください。

  • 改善の効果が出ているか
  • 新たに重くなった工程はないか
  • 扱う車種が変わって、時間配分が変わっていないか

そしてこの記録は、承継の場面で「改善を続けてきた会社」の証明になります。買い手は、まだ改善余地があるかどうかも見ています。

よくある質問

Q. 税務上の原価計算と何が違うのですか。 A. 目的が違います。税務の原価計算は申告のための計算で、区分の仕方も定められた考え方に従います。ここで扱っているのは、どの工程に手間がかかっているかを知って手を打つための計算です。精度より、比較できることと続けられることを優先します。

Q. 現場が忙しく、測る余裕がありません。 A. 1週間だけ、工程を6〜7個に絞り、15分単位で丸めて構いません。記入する人も1人か2人に限定します。目的が「人の評価ではなく工程の重さを知ること」だと伝われば、負担感は下がります。

Q. 土地の費用まで配分する必要がありますか。 A. この業態では必要です。ヤードの面積は有限で、滞留した車両やスクラップが占める面積には費用が発生しています。面積の使い方を工程に割り付けると、回転を上げることが土地の費用を下げることだと分かります。

Q. 測った結果は、承継の場面で使えますか。 A. 使えます。年に一度測り直した記録は、改善を続けてきた証拠になります。買い手は現在の収益だけでなく、まだ改善の余地があるかどうかも見ています。工程別の数字は、その余地を具体的に示せる材料です。

1週間の測定を実際にどう回すか

「測る」と決めても、現場が動かなければ進みません。負担を最小にする方法を示します。

  • 工程名を6〜7個に絞り、紙に印刷する
  • 時刻は分単位でなく、15分単位で丸めてよいと伝える
  • 記入する人を1人か2人に限定する
  • 1週間だけと期限を明示する
  • 目的を伝える(人を評価するためではない、と明言する)

5番目が重要です。「作業が遅いことを責められる」と受け取られれば、正確な記録は出てきません。改善のために工程の重さを知りたい、と伝えてください。

そして結果を現場に返してください。「部品処理に3割かかっていた。だから撮影の段取りを変える」といった形で、測ったことが改善につながると分かれば、次も協力が得られます。

※ 原価の配分方法は事業構成によって異なります。税務上の原価計算とは別のものとしてご活用ください。