まず洗い出す
年間の費用を、固定と変動に分けてください。
固定費(売上が減っても変わらない)
- ヤードの地代、固定資産税
- 設備の減価償却費
- 設備のリース料
- 正社員の人件費
- 保険料
- 借入の利息
- 許認可の維持費用
- 基本料金部分の電力費、通信費
変動費(処理量に応じて増減する)
- 車の買取価格
- 処理費(量に比例)
- 運搬費(外注分)
- 燃料費
- 消耗品費
そして固定費の年間合計を出してください。これが、何もしなくても出ていく金額です。
損益分岐点を出す
固定費が分かれば、次の計算ができます。
固定費 ÷ 1台あたりの粗利 = 損益分岐点の台数
この台数を下回れば赤字です。そして次の問いが立てられます。
- 今の台数は分岐点の何倍か
- 相場が2割下がって1台あたりの粗利が減ったら、分岐点は何台になるか
- その台数を確保できるか
この計算をしていない会社が多くあります。自社がどれだけ余裕があるのか、感覚では分かりません。
変動費化できるもの
固定費を変動費に変えられる部分を挙げます。
① 運搬
自社トラックと運転手を抱えるか、外注にするか。
- 自社:稼働が高ければ安い。ただし固定費。
- 外注:使った分だけ。繁閑に対応できる。
実際の稼働日数を測ってください。週の半分しか動いていないなら、外注のほうが安い可能性があります。
② 設備
購入からレンタルへ。稼働率の低い設備は、持たないほうが安いことがあります。
③ 繁忙期の人員
季節変動が大きい場合、繁忙期だけ外部の力を借りるという形があります。ただし技能が社内に残らないという代償があります。
④ 事務の一部
経理、給与計算などは外部委託が可能な領域です。
削ってはいけないもの
固定費を削る際、次は慎重に判断してください。
現場の人
この業界で最も採用が難しいのは人です。一度手放すと戻りません。相場が回復したときに、動かせる人がいなければ機会を逃します。
削るなら、まず他のところを見てください。
安全と法令遵守に関わる費用
保護具、教育、点検、記録の管理。ここを削ると事故と行政指導のリスクが上がります。長期的には最も高いコストになります。
稼働している設備の維持費
整備を削れば故障が増え、結果として高くつきます。
稼働率を上げるという別解
固定費を削るのが難しいなら、同じ固定費で処理量を増やすという方向があります。
これが実は最も効果的な打ち手です。固定費は台数が増えても変わらないため、増えた分がほぼそのまま利益になります。
確認すべき点を挙げます。
- 設備の能力に対して、実際の処理量は何割か
- 人の稼働に余裕はあるか
- 敷地に余裕はあるか
- 入庫を増やせる余地はあるか
4番目が課題であることが多くあります。能力に余裕があるのに入庫が足りない。この場合、営業に手を入れるのが最も効きます。
土地の費用を見直す
この業態で固定費の中核をなす部分です。
- 使っていない部分はないか:遊休スペースを活用するか、返すか
- 地代は適正か:相場と比べて高すぎないか(社長個人からの賃借なら特に)
- 面積を減らせないか:滞留を減らせば、必要な面積が減ります
- 遊休地を収益化できないか:駐車場、保管受託
3番目が本質的です。滞留を減らすことが、土地の費用を減らすことにつながります。
承継の場面での意味
買い手は固定費の構造を必ず見ます。
- 固定費が売上に対して重すぎないか
- 損益分岐点はどこか
- 稼働率に余裕があるか(伸ばせる余地)
- 変動費化できる部分があるか
3番目が実は好材料になります。「稼働率に余裕がある」=「入庫を増やせば利益が伸びる」と読まれます。買い手が自社の入庫ルートを持っている場合、それが買う理由になります。
逆に、能力を使い切っていて、伸ばすには投資が必要な状態は、追加投資として価格から差し引かれます。
固定費の一覧と損益分岐点。この2つを出すのに数日です。示せるようにしておいてください。
相場が下がる前に計算しておく
損益分岐点の計算は、相場が良いときにやってください。悪くなってからでは手遅れです。
平時に出しておくべき数字を挙げます。
- 現在の1台あたり粗利と、損益分岐点の台数
- 単価が1割下がった場合の分岐点
- 2割下がった場合の分岐点
- それぞれの台数を確保できるか
- 確保できない場合、固定費をどこまで下げる必要があるか
5番目まで出しておけば、相場が下がり始めた時点で何をすべきかが決まっています。判断が遅れません。
この試算は数時間でできます。決算の数字が出たタイミングで行うことをお勧めします。
※ 費用の固定・変動の区分は事業構成によって異なります。自社の実績に基づいて分類してください。