収入を分解する
1台の車から得られるものを、すべて挙げてください。
- 再使用部品の販売
- 鉄スクラップの売却
- 非鉄(アルミ、銅)の売却
- 触媒の売却
- 制度に基づく資金の受け取り
- その他(バッテリー、タイヤなど有価で出せるもの)
問題は、これらが1台ごとに紐づいていないことです。部品は数か月後に売れ、スクラップはまとめて出荷されます。
したがって、厳密に1台ずつ追うのは現実的ではありません。月次の合計を台数で割るという方法から始めてください。
まず月次で割る
手順は単純です。
- その月の解体台数を出す
- その月の収入を項目別に集計する(部品、鉄、非鉄、触媒、制度資金)
- それぞれを台数で割る
これで1台あたりの収入の内訳が出ます。粗い数字ですが、月ごとに並べれば傾向が見えます。
そして内訳を見ると、経営上の発見があります。
- 触媒が想像以上に大きな比率を占めている
- 部品販売が思ったほど寄与していない
- 制度資金が台数に連動する安定収入になっている
1番目に気づいたら、EVが増えたときの影響を試算する必要があります。
費用を分解する
次に費用です。1台にかかるものを挙げます。
直接的に発生するもの
- 車の買取価格(または引取に伴う収支)
- 引取の運搬費
- 処理費(廃タイヤ、廃油、ASRなど)
- 出荷の運搬費
台数に応じて配分するもの
- 現場の人件費
- 重機の燃料費
- 設備の維持費と減価償却
- ヤードの土地の費用
- 電力費
後者は年間の合計を年間の台数で割るのが実務的です。精密さより、続けられることを優先してください。
作業時間を測る
費用配分の精度を上げるなら、作業時間を測ってください。
- 1台の解体に要する時間(車種群別に)
- 部品の取り外しに要する時間
- 撮影とデータ登録の時間
これが分かると、時間あたりの粗利が計算できます。1台あたりの粗利が大きくても、時間がかかりすぎていれば効率が悪いという判断ができます。
測るのは大変なので、1か月だけ、あるいは特定の車種群だけでも構いません。感覚を数字で裏付けるだけで十分です。
測ると何が変わるか
① 買取価格の上限が決まる
1台あたりの収入と費用が分かれば、いくらまで払えるかが算式で出ます。勘に頼らずに済みます。
② 車種による差が見える
どの車種が儲かり、どの車種が薄いのか。入庫の選別に使えます。
③ 取る部品を絞る判断ができる
部品の収入が全体の何割かが分かれば、手をかける価値の判断ができます。
④ 改善の効果が測れる
選別の精度を上げた、処理費を交渉した、作業手順を変えた。その効果が数字で確認できます。
⑤ 相場の影響を切り分けられる
粗利が減ったのは相場のせいか、自社の問題か。判別できれば打ち手が変わります。
承継の場面での価値
買い手が最も知りたいのは、「この事業は1台からいくら稼げるのか」です。
この数字を示せる会社は、次の点で有利になります。
- 収益構造を説明できる
- 台数を増やせば利益がどう増えるかを示せる
- 相場が下がった期の説明ができる
- 改善の余地を具体的に提示できる
逆に、決算書の売上と利益しか示せない会社は、買い手が独自に推定することになります。そして推定には保守的な仮定が入ります。
月次の台数と収入項目を並べるだけなら、既存の伝票から集計できます。今月から始めて1年たてば、強い材料になります。
車種群に分けて見る
全体の平均が出たら、次は車種群に分けてください。1台あたりの粗利は車によって大きく違います。
分け方の例を挙げます。
- 年式(新しい/中間/古い)
- 車格(軽/小型/普通/大型)
- 状態(事故車/自然故障/過走行)
- 動力(エンジン車/電動車)
分けると、どの車を積極的に集めるべきかが見えます。買取価格の算式も、群ごとに変えるほうが精度が上がります。
そして4番目は今から測っておく価値があります。電動車の台数が少ないうちに実績を取っておけば、比率が上がったときに慌てません。
1年分たまってから判断する
月次の数字は振れます。1か月の結果で判断しないでください。
理由を挙げます。
- 部品は数か月後に売れるため、月ごとの対応が取れない
- スクラップの出荷が月をまたぐ
- 季節性がある
- 大きな案件が入ると平均が動く
12か月分を並べて、傾向を見てください。そこで初めて「自社の1台あたり粗利」と言える数字になります。
※ 費用の配分方法は事業構成によって異なります。自社の実績に基づいて設計してください。