まず1件あたりの獲得コストを出す
これを把握していない会社が多くあります。計算は単純です。
広告費の総額 ÷ 成約した件数 = 1件あたりの獲得コスト
これを1台あたりの粗利と比べてください。獲得コストが粗利の大半を占めているなら、構造の問題です。
さらに、経路別に分けてください。
- 検索広告
- 一括査定などの紹介サービス
- 自社サイトからの自然流入
- 紹介、リピート
- 看板、チラシなど地域の広告
経路ごとに獲得コストと成約率が大きく違います。分けて測らなければ、どこを削るべきか分かりません。
3つの改善余地
1台あたりの利益は、次の式で決まります。
(売却額 − 買取額)− 獲得コスト − 作業・運搬費
したがって手を入れる場所は3つです。
① 成約率を上げる
同じ広告費で成約が増えれば、獲得コストが下がります。効くのは次の点です。
- 対応の速さ:問い合わせから連絡までの時間が短いほど成約します。
- 査定の分かりやすさ:金額の根拠を説明できるか。
- 引取までの手間の少なさ:書類、日程調整の負担を軽くする。
- 初回の応対:電話に出る人が変わるだけで成約率が変わります。
1番目が最も効きます。問い合わせた人は、複数社に連絡しているのが通常です。最初に具体的な話をした会社が有利になります。
② 売却額を上げる
買い取った車から、より多く回収する。
- 解体して部品として売る(自社に設備があるなら)
- 中古車として売れるものを見極める
- 輸出できるものを見極める
- 素材としての歩留まりを上げる
2番目と3番目の判断が収益を左右します。「廃車」として引き取った車の中に、まだ値のつくものがあることがあります。見極めの基準を持っているかどうかで差がつきます。
③ 買取額を適正にする
成約を取るために高く買いすぎていないか。算式で上限を決め、それを超えないという運用にしてください。
成約率を上げるために価格を上げるのは、最も安易で最も利益を削る方法です。価格以外で選ばれる要素を作ってください。
広告依存から抜ける経路
広告は止められません。しかし比率は下げられます。
紹介を作る
- 成約したお客様に、周囲へ紹介してもらう
- 整備工場、販売店、鈑金工場との提携
- 保険会社、代理店との関係
- 地域の不動産会社(相続や空き家の片付けで車が出ます)
2番目が最も効率的です。継続的に車が出てくる場所と関係を作るほうが、都度広告を出すより安いのです。
提案の内容としては、引取の速さ、書類対応の代行、価格の明示といった相手の手間を減らす要素が効きます。
自然流入を増やす
時間はかかりますが、獲得コストが最も低い経路です。
- 地域名を含む検索で見つかるようにする
- 手続きの疑問に答える情報を載せる
- 実際の対応事例を載せる
広告と違い、積み上げた分が資産として残ります。そして承継の場面でも評価されます。
リピートと周辺需要
廃車は繰り返しの需要が少ない領域ですが、次のような広がりがあります。
- 法人の車両(複数台、定期的に発生する)
- 家族、親族の車
- 次の車の購入相談(提携先へつなぐ)
法人との関係は特に価値があります。1件の関係から継続的に台数が出ます。
承継の場面で何が資産になるか
設備を持たない業態のため、買い手が見るものは限られます。
- 集客の経路:広告に依存しているのか、紹介と自然流入があるのか
- 提携先:継続的に車が出てくる関係。書面になっているか。
- データ:問い合わせ数、成約率、獲得コスト、1台あたり粗利の推移
- 対応の仕組み:応対と査定が社長個人に依存していないか
- 許認可:引取業の登録、古物商許可
1番目が決定的です。広告を止めた瞬間に問い合わせがゼロになる事業は、買い手から見て資産が薄く見えます。
逆に、提携先と自然流入で一定の台数が確保できている事業は、引き継いだ後も回ります。これは明確な価値です。
広告費の比率を下げる取り組みは、日々の利益改善であると同時に、譲渡価格を上げる準備でもあります。
断る判断も収益になる
成約率を上げようとすると、すべての問い合わせを取りに行きたくなります。しかし取るべきでない案件があります。
- 遠方で、運搬費が粗利を超える
- 書類が揃わず、手続きに時間がかかる
- 所有者と持ち込む人が違い、経緯が不明
- リサイクル料金が預託されておらず、負担者が決まらない
- 相場からかけ離れた金額を要求される
これらを無理に取ると、手間と費用だけが残ります。断る基準を決めて、現場が判断できるようにしてください。
1件あたりの手間を測る
粗利だけでなく、時間も測ってください。
- 問い合わせ対応から成約までの連絡回数
- 引取に要する時間(往復の移動を含む)
- 書類手続きに要する時間
時間あたりの粗利で見ると、金額の大きい案件が必ずしも効率が良いとは限らないことが分かります。この視点があると、どの経路の案件を増やすべきかが見えてきます。
※ 広告の効果や獲得コストは市場環境と地域によって異なります。改善策は自社の実績データに基づいて検討してください。