まとめて見ると判断できない
出荷の売上を合計で見ていると、次のことが分かりません。
- どの品目が利益を出しているか
- 手間をかけた分が価格に反映されているか
- 相場が下がったとき、どこから影響が出るか
- 分別に人をかける価値があるか
- 取引先ごとの条件の良し悪し
4番目が経営判断に直結します。非鉄を分ける作業に1日2人かけているとして、それが増える売上に見合っているかどうか。合計の数字では判断できません。
3番目も重要です。鉄の比率が高い会社と、非鉄の比率が高い会社では、同じ相場の動きでも影響の出方が違います。自社がどちらなのかを知っておく必要があります。
まず4つに分ける
細かく分けようとすると続きません。最初は4区分から始めてください。
- 鉄(プレス、ギロチン、新断などの区分は後回しでよい)
- 非鉄(アルミ、銅、真鍮をまとめて1つ)
- ミックス、雑品
- 部品として売ったもの
この4つで、大まかな構造が見えます。売上の何割がどこから来ているかが分かれば、それだけで判断が変わります。
4番目を入れる理由は、部品と素材の比率を見るためです。同じ車から取れる金額は、部品として売るか素材として出すかで大きく変わります。その比率が自社の収益構造を決めています。
慣れたら、非鉄をアルミと銅系に分け、鉄を等級で分けてください。段階を踏むほうが定着します。
費用をどう割り振るか
売上を分けるだけでは粗利が出ません。費用も分ける必要があります。
実務的な方法を示します。
- 買取価格は台数で按分する(1台あたりの仕入原価を出す)
- 処理費のうち、品目に紐づくものは直接充てる
- 運搬費は出荷ごとに紐づける(品目が分かる)
- 人件費は工程ごとの時間で按分する
- 細かく割れないものは共通費としてまとめる
3番目が最も精度が上がる部分です。出荷伝票に運搬費を紐づけるだけで、品目ごとの手取りが見えます。
4番目は厳密にやろうとすると止まります。1週間だけ工程の時間を測り、その比率を使い続ける形で十分です。毎月測る必要はありません。
5番目を恐れないでください。共通費が残っても、品目ごとの傾向は見えます。完璧を目指すより、続けられる形にしてください。
何が見えてくるか
集計を始めると、多くの会社で次のことが判明します。
- 売上の比率と、粗利の比率が違う
- 量の多い品目が、利益に貢献していない場合がある
- 手間をかけている品目の採算が合っていないことがある
- 逆に、軽視していた品目が稼いでいることがある
- 取引先によって条件に差がある
1番目が最も多い発見です。売上の大半が鉄でも、粗利の大半は非鉄や部品から出ているという構造は珍しくありません。
3番目が判断を変えます。分別に人と時間をかけている品目が、実は合っていない場合があります。逆に、もっと手をかける価値がある品目が見つかることもあります。
判断にどう使うか
数字が出たら、次の判断に使ってください。
- 人をどの工程に配置するか
- 分別の手間をかける品目を絞る
- 買取価格の算式を見直す
- 取引先ごとの条件を交渉する
- 設備投資の優先順位を決める
- 相場が下がったときにどこを守るか
3番目が効きます。どの車から何がいくら取れるかが分かれば、買取の上限を根拠を持って決められます。感覚で買っている状態から抜けられます。
6番目は平時に決めておいてください。鉄が下がったときに何を優先するか、非鉄が下がったときにどうするか。数字があれば、先に方針を立てられます。
取引先ごとにも並べる
品目で分けたら、次は出荷先ごとに見てください。
- 品目ごとの単価
- 減量や歩留まりの扱い
- 決済の条件(支払までの日数)
- 運搬の負担がどちらか
- 受け入れの制約(持ち込む形状、時間帯)
2番目が見えにくい差です。単価が高くても、減量が大きければ手取りは下がります。実際に入金された額を重量で割った数字で比べてください。
3番目も採算に含まれます。支払が遅い相手は、その分の資金負担が生じています。単価だけでなく、そこまで含めて比べてください。
続けるための工夫
集計が止まる理由は、手間です。負担を下げてください。
- 出荷伝票に品目の区分を書く欄を作る
- 入力する人を決める
- 月末にまとめず、出荷のたびに1行足す
- 表は1枚に収める
- 3か月分たまってから傾向を見る
3番目が要点です。月末にまとめて入力しようとすると、伝票を探すことになり止まります。その日に1行足す運用にしてください。
5番目も忘れないでください。1か月では判断できません。相場も出荷の量も月ごとに振れます。3か月から半年並べて初めて構造が見えます。
後継者に引き継ぐ材料になる
この集計は、承継の準備としても効きます。
- どこで稼いでいるかが数字で説明できる
- 買取価格の判断を根拠とともに渡せる
- 相場が動いたときの対応を教えられる
- 後継者が金融機関に説明する材料になる
2番目が最も価値があります。「この車はこれくらい」という長年の感覚を、数字に置き換えて渡せます。感覚のままでは引き継げません。
そして買い手から見ても、品目別の数字を出せる会社は評価されます。合計の売上しか出てこない会社とは、交渉の進み方が違います。
※ 集計の方法や費用の配分は各社の実情に応じた設計が必要です。具体的な進め方は税理士および専門家にご相談ください。