損益を4つに分解する

まず構造を明確にします。破砕1トンあたりの損益は、おおむね次の要素で決まります。

  1. 受入時の収支:廃車ガラを買い取るのか、処理費をもらうのか
  2. 鉄の売却益:最も量が多い部分
  3. 非鉄の売却益:量は少ないが単価が高い
  4. ASRの処理費:確実に出ていく費用

加えて、電力費、設備の維持費と減価償却、人件費が乗ります。

ASRの処理費が上がったとき、1から3のどこかを動かさなければ利益は減る一方です。順に見ていきます。

打ち手1:ASRの発生量を減らす

最も本質的な打ち手です。処理費は「単価 × 量」なので、量を減らせば効きます。

発生量は、投入される物の中身で決まります。

  • 解体段階での取り外しを増やす:シート、内装材、樹脂部材、ガラス、タイヤが車体に残っていれば、そのままASRになります。
  • 受入基準を明確にする:どこまで解体された状態で受け入れるかを決め、基準を満たさないものは価格を変える。
  • 投入前の選別:明らかに可燃物が多いものを分ける。

2番目が交渉になります。解体業者にとっては、取り外す手間が増えます。だから価格差で誘導する必要があります。

「よく解体されたものは高く買う、そうでないものは安く買う」という差を明示すれば、相手も判断できます。曖昧なまま一律の価格で受けていると、手を抜いたものばかりが集まります。

打ち手2:選別の精度を上げる

破砕後の選別で、ASRに回る量が変わります。

  • 磁力選別で鉄を取り切れているか
  • 非鉄の選別で、アルミや銅を取り残していないか
  • 選別設備の状態が保たれているか(摩耗、詰まり)

設備は経年で性能が落ちます。導入時と同じ歩留まりが出ているかを測ってください。落ちているなら、整備や部分的な更新で回復する可能性があります。

測り方は単純です。投入量に対する鉄・非鉄・ASRの構成比を、一定期間記録する。過去と比べれば傾向が見えます。

打ち手3:受入単価に転嫁する

処理費の上昇を自社だけで吸収し続けることはできません。受入単価に反映する必要があります。

そのためには算式が要ります。

  • 鉄と非鉄の想定売却額
  • 1トンあたりのASR発生率と処理単価
  • 電力費、人件費、設備費
  • 目標とする利益

これらから受入価格の上限を出し、処理費が上がったら算式を更新するという運用にします。

算式があれば、価格改定の説明が「値上げのお願い」ではなく「構造の説明」になります。相手も処理費の動向は知っているため、根拠が示されれば理解を得やすくなります。

打ち手4:出荷先と処理先を見直す

年に一度は条件を確認してください。

  • ASRの処理を委託している先の単価と、他社の水準
  • 受入可能量と、断られたことがあるか
  • 代替の処理先があるか
  • 鉄・非鉄の出荷先の条件

3番目が重要です。処理先が1社しかないと、値上げを受け入れるしかありません。交渉力を持つには代替が必要です。

打ち手5:全部再資源化という選択

ASRを発生させない形で処理を完結させる認定の仕組みがあります。取得すれば、処理費の構造そのものが変わります。

ただし相応の体制が求められます。検討する際は次を確認してください。

  • 求められる要件と、自社の設備で満たせるか
  • 必要な投資額
  • 取得後の運用負担
  • 処理費削減による回収期間

投資規模が大きいため、引退時期との関係を必ず確認してください。回収に長期を要するなら、判断は慎重に行うべきです。

稼働率という前提

ここまでの打ち手は、稼働率が確保されている前提です。

破砕設備は固定費が大きいため、稼働が落ちればトンあたりの固定費が跳ね上がります。処理費の上昇より、稼働率の低下のほうが損益への影響が大きいことがあります。

確認してください。

  • 設備の能力に対して、実際の処理量は何割か
  • 入荷が細っている場合、原因は何か
  • 他社から集める余地はあるか

稼働率が5割を切っているなら、処理費の話より先に入荷の確保が課題です。

畳むという選択も比較する

最後に、経営判断として避けられない論点です。

処理費が上がり、稼働率が落ち、設備の更新時期が近い。この3つが重なっているなら、更新して続けるのか、破砕をやめるのかという判断になります。

比較すべき数字を挙げます。

  • 設備を更新した場合の投資額と回収期間
  • 更新せずに使い続けた場合、あと何年もつか
  • 破砕をやめて外注に切り替えた場合の損益
  • 設備を撤去する費用
  • 事業ごと譲渡した場合の評価

3番目が現実的な選択肢になることがあります。解体までを自社で行い、破砕は他社に委ねるという形です。設備の負担がなくなり、収益は下がりますが安定します。

4番目を先に把握しておいてください。撤去費用が分かっていなければ、どの選択も比較できません。

構成比を毎月測る

改善の起点は測ることです。次を月次で記録してください。

  • 投入した廃車ガラの重量
  • 産出された鉄の重量
  • 産出された非鉄の重量(品目別)
  • 発生したASRの重量
  • ASRの処理単価と支払額

これで投入に対するASRの発生率が出ます。この率が上がっていれば、投入される物の中身が悪くなっているか、選別性能が落ちています。

どちらなのかは、投入元別に分けて見れば分かります。特定の取引先から来るものだけ発生率が高いなら、そこに手を打つ余地があります。

※ 処理費の水準や認定の要件は市況および制度の運用によって変わります。個別の判断は自社の数値と所管窓口への確認に基づいて行ってください。