重量と寸法が前提を変える
大型車は、乗用車の何倍もの重量と寸法を持ちます。これが次の違いを生みます。
- 重機の規模:吊り上げ、切断、移動に必要な能力が上がります。
- 敷地:作業に必要なスペース、旋回半径、搬入路の幅。
- 保管:1台が占める面積が大きく、積み上げも困難です。
- 搬入:自走できない車両を運ぶには、それに応じた車両が必要です。
特に搬入路と旋回スペースが制約になります。乗用車は入れても大型車は入れないヤードがあります。参入を検討するなら、まず自社の敷地を確認してください。
1台あたりの収益は大きい
手間は増えますが、収益も増えます。
- 鉄の量:重量が大きいため、素材としての売却額が増えます。
- 部品の単価:エンジン、ミッション、デフなどが乗用車より高く売れます。
- 需要の性質:トラックは長く使われるため、古い年式の部品にも需要があります。
- 架装物:クレーン、パワーゲート、荷台などに個別の需要があります。
3番目が事業として重要な点です。乗用車より部品の需要期間が長いため、在庫が長く売れる可能性があります。
作業時間と人
1台にかかる時間が長くなります。
- 部品が大きく重いため、1点の取り外しに時間がかかる
- ボルトが固着していることが多い
- 油量が多く、抜き取りに時間がかかる
- 切断する部位が多い
人については、次の点が課題になります。
- 重量物を扱うため、身体的な負担が大きい
- 大型の重機を扱える人が必要
- 吊り作業が増えるため、玉掛けの資格が必要な場面が増える
- 大型車の構造を理解している人が要る
資格と技能の両方が必要です。乗用車の解体経験があっても、そのまま移行できるわけではありません。
安全上の注意
重量が大きいため、事故が起きたときの被害も大きくなります。
- 吊り上げた部品の落下
- 車体の転倒
- キャブの傾斜機構による挟まれ
- エアサスペンションの圧力
- 大型タイヤの取り扱い(重量とホイールの構造)
これらは乗用車の解体では想定しない類型です。手順書を別に作り、教育してください。
特に吊り作業は、資格と手順の両方が必要です。慣れた作業に見えても、荷重の見誤りが重大な事故につながります。
販路が別
乗用車の部品と大型車の部品では、買い手が違います。
- 運送会社:自社で整備する会社は部品を直接買います。
- 大型車専門の整備工場
- ディーラー、部品商
- 海外:日本の中古大型車部品に需要がある地域があります。
既存の乗用車部品の販路が、そのまま使えるとは限りません。参入前に販路の目処を立ててください。
部品検索のネットワークも、大型車を扱っているか確認が必要です。
架装物の扱い
大型車固有の論点です。
クレーン、タンク、冷凍機、パワーゲート、ミキサーなど、架装物が付いている車両があります。
- 架装物自体に需要がある場合、取り外して売る
- 特殊な構造のため、解体に専門知識が要る
- 危険物を運んでいた車両は、残留物に注意が必要
- 冷凍機には冷媒が入っている
3番目に注意してください。何を運んでいた車両かを確認するという手順を、受入時に入れてください。タンク内に残留物があれば、通常の解体はできません。
参入するかどうかの判断
次を確認してください。
- 敷地が対応できるか:搬入路、旋回スペース、保管場所
- 重機の能力が足りるか:足りなければ投資額を見積もる
- 入庫の見込みがあるか:地域に運送会社、建設業者がどれだけあるか
- 販路の目処があるか
- 人を確保できるか:資格と体力
- 投資の回収期間と引退時期
1番目で無理なら、そこで判断がつきます。敷地の制約は投資では解決しにくい部分です。
逆に、敷地に余裕があり、地域に運送会社が多いなら、検討する価値があります。乗用車だけの事業より、収益の柱が増えることになります。
すでに扱っている場合の見直し
既に大型車を扱っているなら、次を測ってください。
- 大型車と乗用車で、1台あたりの粗利がどう違うか
- 作業時間の差はどれくらいか
- 時間あたりの粗利で比べるとどちらが高いか
3番目が判断の基準になります。1台あたりの粗利が大きくても、時間がかかりすぎていれば効率が悪いことがあります。
測った結果によって、大型車の比率を上げるか下げるかの判断ができます。感覚ではなく数字で決めてください。
受入時に確認する項目
大型車では、受入の段階で確認すべきことが増えます。チェックリストにしてください。
- 何を運んでいた車両か(危険物、化学品の残留)
- 架装物の種類と、冷媒や油圧油の有無
- タンク内の残留物
- エアサスペンションの状態
- 自走できるか、牽引が必要か
- 搬入路と旋回スペースで入れるか
- 書類が揃っているか
1番目と3番目を省略しないでください。タンク内に残留物がある車両を通常の手順で解体すると、危険が生じます。分からない場合は、引き取る前に確認してください。
6番目も実務的な問題です。引き取りに行ってから入れないと分かるのでは、運搬費が無駄になります。事前に確認する手順を入れてください。
※ 必要な設備や資格は作業内容によって異なります。架装物や危険物を運んでいた車両の取り扱いは、事前に確認のうえ行ってください。