全体の流れ
- 公募の開始
- 申請
- 審査
- 採択の通知
- 交付申請 → 交付決定
- 事業の実施(発注・納品・支払い)
- 実績報告
- 確定検査
- 補助金の入金
- その後の報告義務
4番と5番が別であることを、必ず理解してください。ここでの誤りが最も多い失敗です。
最重要:交付決定前に発注しない
「採択されました」という通知を受けても、まだ発注してはいけません。
採択の後、交付申請を行い、交付決定の通知を受けてから発注・契約します。
なぜ厳しいのか
交付決定前に発注したものは、補助金がなくても実施したとみなされ、補助の対象外になります。
よくある失敗
- 採択の通知で喜んで、すぐ発注してしまった
- 納期が長いので、先に発注しておいた
- 口頭で発注の意思を伝えていた
- 内示書・注文請書の日付が交付決定前だった
納期が長い設備ほど注意が必要です。食品機械は受注生産が多く、納期が半年に及ぶこともあります。
対策:メーカーに事情を説明し、交付決定後に正式発注する前提で、生産枠だけ押さえてもらうといった調整ができないか相談してください。ただし、それが「発注」とみなされないことを確認する必要があります。
申請時の実務
電子申請の準備
- 電子申請用のアカウント取得(日数がかかります)
- 必要な認証情報の準備
- 締切間際はシステムが混み合う
アカウント取得は、公募が始まる前に済ませておいてください。
必要書類
- 事業計画書
- 決算書(数期分)
- 登記事項証明書
- 納税証明書
- 見積書
- 認定支援機関の確認書(求められる場合)
- 加点項目に関する証明書
証明書類の取得にも日数がかかります。逆算して準備してください。
事業実施時の実務
1. 相見積もり
一定額以上の調達では、相見積もりが求められることがあります。
1社にしか作れない特殊な設備の場合は、その理由を説明する書類が必要になります。「この仕様に対応できるのは1社のみ」という技術的な根拠を示してください。
2. 計画の変更
計画と異なる設備を購入する、金額が大きく変わる、実施期間を延長する。いずれも事前の手続きが必要です。
事後の報告では認められないことがあります。変更が生じたら、すぐ事務局に相談してください。
3. 支払いの方法
- 銀行振込で支払う(現金払いは避ける)
- 振込の記録を残す
- 手形・相殺は認められないことがある
- 実施期間内に支払いを完了する
「納品はされたが、支払いが期間内に終わらなかった」という失敗があります。支払条件を確認してください。
4. 証拠書類を揃える
実施中から、次を1つのファイルに整理してください。
- 見積書(相見積もりを含む)
- 発注書・契約書
- 納品書・検収書
- 請求書
- 振込の証拠(通帳の写し、振込明細)
- 設置前・設置後の写真
- 設備の銘板の写真(型式・製造番号が分かるもの)
写真は忘れやすい項目です。設置工事の各段階で撮影しておいてください。
実績報告
事業完了後、期限内に報告します。期限を過ぎると補助金が受け取れないことがあります。
報告の内容
- 実施した内容
- 経費の明細と証拠書類
- 成果(当初の計画に対してどうだったか)
確定検査
書類の審査に加え、現地確認が行われることがあります。
- 設備が計画どおり設置され、稼働しているか
- 銘板と書類が一致しているか
- 補助事業に使われているか
入金後の義務
1. 事業化状況の報告
一定期間、毎年報告が求められることがあります。売上、付加価値額、雇用の状況など。
報告を怠ると、返還を求められることがあります。担当者と期限を明確にしてください。
2. 財産の処分制限
補助金で取得した設備は、一定期間、処分に承認が必要です。
「処分」に当たりうるもの
- 売却
- 廃棄
- 他の用途への転用
- 担保に入れる
- 事業譲渡・会社分割で移転する
最後の項目はM&Aに直結します。承継を検討している場合、事前に事務局へ確認してください。
株式譲渡であれば会社は変わらないため影響は小さいと考えられますが、事業譲渡では扱いが異なる可能性があります。株式譲渡と事業譲渡はどちらを選ぶかをご覧ください。
3. 収益納付
補助事業により一定以上の収益が生じた場合、その一部の納付が求められることがあります。制度により異なります。
4. 帳簿・書類の保管
証拠書類は、一定期間の保管が必要です。
目標未達の場合
賃上げや付加価値額の目標が要件になっている場合、未達だと返還を求められることがあります。
申請時に、達成できる目標を設定してください。無理な目標を掲げて採択されても、後で困ります。
資金繰りへの影響
補助金は後払いです。設備代金を全額立て替える必要があります。
入金までの期間は、事業完了から数か月に及ぶこともあります。補助金は後払いと資金繰り表の作り方をご覧ください。
担当を決める
申請から報告まで、1年以上にわたる長い手続きです。
- 担当者を決める
- 期限を一覧にして管理する
- 証拠書類の保管場所を決める
- 担当者が交代する場合の引き継ぎ
担当者が退職して、報告が漏れるという事態を避けてください。
※ 補助金・税制優遇の制度名、要件、補助率、公募時期は年度ごとに変わります。本記事は一般的な考え方を整理したものです。実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認のうえ、認定経営革新等支援機関等の専門家にご相談ください。