在庫を担保にするとはどういうことか
不動産を担保にする融資と考え方は同じです。ただし対象が動産、つまり棚にある商品になります。動産・売掛金担保融資(ABL)と呼ばれます。
不動産を持たない事業者でも資金調達の道が開ける、というのが本来の趣旨です。
ただし、不動産担保と比べると取り扱っている金融機関は限られます。在庫の状況を継続的に確認する手間がかかるためです。まずは取引のある金融機関に扱いがあるかを聞くところから始めてください。
金融機関が見ているのは「換金できるか」
担保である以上、いざというときに売って回収できなければ意味がありません。金融機関が確認するのは次の点です。
- その商材に相場があるか(換金価格を見積もれるか)
- 数量と所在を正確に把握できているか
- 短期間で換金できる販路があるか
- 盗品や偽造品が混ざるリスクが管理されているか
この4点は、裏を返せば在庫管理の水準を問うものです。相場のある商材を扱っていても、数量と所在が把握できていなければ担保としては評価されません。管理の状態が、そのまま調達力になります。
向く商材と向かない商材
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 貴金属(地金相場がある) | ヴィンテージ・骨董(相場が個別) |
| ブランド品(業者間市場が厚い) | 古着・雑貨(単価が低く運搬費が乗る) |
| 新しめの家電・工具 | 年式の古い家電 |
要するに、誰が見ても価格が付けられる商材ほど担保として扱いやすくなります。
複数のカテゴリを扱っている場合、向く商材だけを対象にする形もあります。店全体の在庫ではなく、貴金属やブランド品に限って担保とする。金額の大きいカテゴリに絞るほうが話は進みやすくなります。
求められる管理体制
担保にする以上、金融機関は定期的に状況を確認します。次の体制が求められます。
- 在庫が個品単位で管理され、一覧をいつでも出せる
- 定期的に在庫の報告を提出できる
- 実地の確認(モニタリング)を受け入れる
- 預かり品・委託品と自社在庫が明確に分かれている
裏を返せば、この体制がない店では検討の土俵に乗りません。
この体制は、担保調達のためだけに作るものではありません。個品管理と一覧の出力、預かり品の区分。いずれも日々の経営に効く仕組みであり、承継やM&Aの場面でも必ず問われる項目です。調達の可否にかかわらず、整えて損はありません。
注意すべき点
- 評価は保守的になる:簿価どおりには見てもらえません
- 報告の手間がかかる:定期報告とモニタリングの負担を見込んでください
- 担保に入れた在庫は自由に処分しにくい:条件によっては制約が生じます
- 承継やM&Aで論点になる:担保設定は買い手が必ず確認します
3番目については、契約の内容を必ず確認してください。担保に入れた在庫を通常の営業で売ってよいのか、売った代金の扱いはどうなるのか。ここが曖昧なまま契約すると、日々の商売に支障が出ることがあります。
相談に行く前にそろえる資料
金融機関に相談する場合、次の資料があると話が具体的になります。逆に、これがそろわない状態では検討の土俵に乗りません。
- 在庫の一覧 — カテゴリ別、できれば個品単位。簿価と想定売価を並べます
- 日齢の分布 — 滞留がどれだけあるかを示します。少ないほど担保としての評価は上がります
- 直近の実売データ — 「この商材はこの価格でこの日数で売れる」という実績が換金性の根拠になります
- 実地棚卸の記録 — 帳簿と現物が合っていることの裏づけです
- 保管場所の一覧 — 店舗、倉庫、EC出品中、委託中。所在が把握できていることを示します
- 預かり品との区分 — 自社在庫との線引きが明確であることを示します
このうち3番目が最も効きます。相場表よりも、自店の実売データのほうが換金性の説明として説得力があります。
まず検討すべきは在庫圧縮のほう
資金が足りない原因が滞留在庫にある場合、担保に入れて借りるより、在庫を売って現金化するほうが早いことがほとんどです。
担保調達が向くのは、回転が速く、買取機会を逃さないための資金が要る店です。滞留を抱えたまま借りると、返済負担が重なるだけになります。
見分け方としては、日齢181日超の在庫がいくらあるかを見てください。そこに相当な金額が寝ているなら、借りる前に売るほうが早いということです。滞留がほとんどなく、それでも買取機会に資金が足りないのであれば、調達を検討する場面です。
まとめ
在庫担保の資金調達は、相場のある商材を、個品単位で管理できている店なら選択肢になります。逆に管理体制がなければ土俵に乗りません。
いずれにしても、まず在庫を個品で管理し、一覧を出せるようにすること。それが調達の前提であり、同時に資金繰り改善の第一歩でもあります。
個品管理と一覧の出力は、主力カテゴリから始められます。調達の前提であると同時に、資金繰り改善の第一歩でもあります。着手のしかたからご相談いただけます。