なぜリユース業で起きやすいのか

この業種は、仕入れた商品が売れるまで現金が戻りません。回転が遅い商材を扱っていれば、資金は棚の上で眠り続けます。

その結果、決算書上の資産は大きいのに、預金残高は薄い。ところが相続税は、その大きい資産をもとに計算されます。払う対象は大きく、払う手段は小さいという構図です。

この構図は、会社が順調に見えているときほど気づきにくいものです。売上が伸び、仕入れも増えていれば経営はうまく回っているように見えます。しかし在庫が積み上がっているだけで現金が戻っていなければ、納税の場面で行き詰まります。

相続後に換金しようとすると起きること

相続税には申告と納付の期限があります。それまでに現金を作らなければなりません。

この状況で在庫を売ろうとすると、次のことが起きます。

  • 時間がないので、業者への一括引き取りに頼ることになる
  • 足元を見られ、通常より低い価格になる
  • 本来売るべきでない売れ筋在庫まで手放し、事業が回らなくなる

納税のために、店の商売そのものを削ってしまう。実際に起きていることです。

この事態を防ぐには、どの在庫は売ってよく、どれは残すべきかを生前に区分しておくことが効きます。売れ筋と滞留品の線引きが分かっていれば、残された家族が慌てて売り急ぐ場面でも事業の根幹を削らずに済みます。カテゴリ別の一覧に印をつけておくだけで足ります。

手当て1:在庫を減らして評価を下げる

最も筋のよい方法です。売れない在庫を処理すれば、株の評価が下がり、必要な納税資金そのものが減ります。

効果が出るまでに数年かかりますが、本業の資金繰りも同時に改善します。最初に着手すべきはここです。

着手のしかたとしては、まず日齢365日超がいくらあるかを出し、3年でどこまで落とすかを決めます。一度に処理する必要はありません。年度ごとに区切って進めれば、損失の出方も平準化できます。処理の時期は税負担にも関わるため、税理士と相談して決めてください。

手当て2:生命保険で現金を用意する

保険金は、相続の発生と同時に現金として受け取れます。在庫のように換金の手間がかかりません。

会社が契約者となり、経営者の死亡時に会社が受け取って退職金の原資にする形や、個人で契約して相続人が受け取る形などがあります。どの形が合うかは、家族構成や借入の状況によって変わります。

検討する際に確認したいのは、受け取る人と、受け取った資金の使い道が一致しているかです。納税するのは株を受け取った相続人ですから、その人に現金が渡る設計になっていなければ意味がありません。契約者・被保険者・受取人の組み合わせを一度確認してください。

手当て3:役員退職金と組み合わせる

引退時に退職金を支給すると、会社の純資産が減り、株の評価が下がります。同時に、受け取った側には現金が入ります。

評価を下げながら納税資金を作れるため、承継対策としてよく検討されます。ただし金額が不相当に高いと認められない可能性があるため、必ず税理士と設計してください。

あわせて、支給する年度の資金繰りも見てください。まとまった額を支払うことになるため、手元現金が薄い状態で実行すると本業の買取資金に響きます。在庫を軽くして現金を戻してから支給するという順序が現実的です。

手当て4:生前贈与で分散させる

株を一度に相続させると、その年に大きな税負担が生じます。生前に少しずつ移していけば、負担を平準化できます。

とくに、業績が落ちて評価が下がっている年に移すと効果的です。そのためにも、毎年の評価額を把握しておく必要があります。

ただし、評価が下がる年を待つことだけが目的になると本業がおろそかになります。在庫の整理を進めた結果として評価が下がった年に渡す、という順序が健全です。税のために業績を落とすのは、目的と手段が入れ替わっています。

納税資金が足りないときの選択肢

準備が間に合わなかった場合でも、いくつかの方法があります。ただしいずれも条件や負担があるため、早めに税理士に相談してください。

  • 延納 — 分割で納める方法です。担保の提供や利子の負担が伴います
  • 物納 — 現金以外の財産で納める方法です。認められる財産の種類や順位に決まりがあります
  • 金融機関からの借入 — 会社の状況や担保次第です。返済原資をどう作るかが問われます
  • 事業用資産の一部売却 — 最後の手段です。急いで売れば買い叩かれます

どれも負担が残る方法です。だからこそ、在庫を軽くして必要額そのものを下げる準備が最も効きます。それは同時に、本業の資金繰りを楽にする打ち手でもあります。

まとめ

納税資金の問題は、相続が起きてからでは解けません。在庫を減らして必要額を下げる、保険や退職金で現金を用意する。この2方向を並行させてください。

最初にやるのは、自社株の評価額を出して必要な納税額を知ることです。金額が分かれば、何年で何を用意すべきかが決まります。

試算は決算書があれば進められます。「まだ元気だから」という時期の試算がいちばん役に立ちます。手を打てる期間が長く残っているからです。数字を見てから、何年かけて何をするかを一緒に組み立てましょう。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。