非上場株には市場価格がない
上場していない会社の株には、売買される市場がありません。そのため、相続や贈与のときには決められた方法で価値を計算します。
中小企業では主に2つの考え方が、会社の規模に応じて組み合わされます。
- 純資産価額方式:会社の資産を相続税評価額に置き換え、負債を引く
- 類似業種比準方式:同業種の上場会社の数値と、自社の配当・利益・純資産を比べる
この計算は、経営者が自分で行うものではありません。ただしどちらの方式の影響が大きいのかを知っておくことには意味があります。影響の大きい方式が分かれば、何を直せば評価が動くのかも見えてくるからです。
リユース業は純資産の影響が大きい
会社の規模が小さいほど、純資産価額方式のウエイトが大きくなります。中小のリユース会社の多くは、この区分に入ります。
そして純資産価額方式では、持っている資産が多いほど評価が上がります。利益が出ていなくても関係ありません。
この点は、他業種の経営者と話していると認識のずれが生まれやすいところです。「利益が出ていないから相続税は関係ない」という理解は、利益をもとに評価される業種では成り立ちますが、資産が厚い業種では成り立ちません。リユース業は後者です。
棚卸資産が評価を押し上げる仕組み
棚卸資産は、原則として帳簿の金額をもとに評価されます。ここに問題があります。
3年前に10万円で仕入れた商品が、いま実際には2万円でしか売れないとします。それでも評価減を計上していなければ、帳簿には10万円のまま載っています。その10万円が、そのまま純資産に含まれます。
これが店中の棚で起きていると、実態のない資産が積み上がった状態で株が評価されることになります。
この状態は、決算書を見ても気づきにくいものです。棚卸資産の合計額は載っていますが、そのうち何年も動いていないものがいくらあるかは書かれていません。帳簿の数字と実際に売れる金額の差を把握しているかどうかが、対策の出発点になります。
類似業種比準方式なら軽くなるのか
類似業種比準方式は、配当・利益・純資産の3要素で比べます。利益が薄い会社では評価が下がりやすい面があります。
ただし、この方式のウエイトは会社の規模によって決まります。小規模な会社では純資産価額方式の比重が高くなるため、期待するほど下がらないことが多くなります。
いずれにしても、どちらの方式でどう計算されるかは会社の状況によって決まるため、自分で判断するものではありません。税理士に試算してもらい、「どの要素が評価を押し上げているか」を説明してもらうのが確実です。
評価を下げる最も確実な打ち手
結論はひとつです。売れない在庫を実際に処理すること。
滞留在庫を売り切れば、資産が現金に変わり、多くの場合は損失が出ます。純資産が下がり、株の評価も下がります。適切な評価減の計上も同じ方向に働きます。
小手先の対策と違い、これは本業にとってもプラスです。資金繰りが楽になり、後継者が引き継ぐ負担も軽くなります。
処理には抵抗があるのが普通です。損失として数字に出るため、金融機関の見方が気になるという声もよく聞きます。ただ、処理した理由と戻った資金をあわせて説明できれば、管理が効いている証拠として受け止められます。会計上・税務上の処理には要件があるため、税理士にご相談ください。
年に1回、評価額を出してもらう
評価額は毎年変わります。業績が落ちた年、大きく評価減を計上した年は、株の評価も下がります。株を移すなら、その年を狙うのが定石です。
そのためには、毎年おおよその評価額を把握しておく必要があります。決算のたびに税理士へ試算を依頼する習慣をつけてください。数字を知らないままでは、動くべき年が分かりません。
試算を依頼するときは、評価額の数字だけでなく「何がその金額を作っているか」も聞いてください。棚卸資産が押し上げているのか、土地の評価なのか、内部留保なのか。内訳が分かれば、手を入れる場所が特定できます。
評価を押し上げているものを見分ける
在庫以外にも、評価を押し上げる要素があります。自社に当てはまるものがないか確認してください。
- 店舗用の土地建物 — 自社所有の場合、相続税評価額で計上されます。取得時より地価が上がっていれば含み益が評価に乗ります
- 長年の内部留保 — 利益を配当せず積み上げてきた分は、そのまま純資産を厚くします
- 役員保険の解約返戻金 — 資産として評価される場合があります
- 回収が難しい売掛金・貸付金 — 帳簿に残っていれば資産として数えられます
- すでに使っていない設備 — 償却が終わっていない分は資産に残ります
このうち在庫と回収困難な債権は、実態に合わせる余地がある領域です。土地や内部留保は簡単には動かせないため、手を入れやすいところから始めるのが現実的です。
まとめ
リユース会社の自社株評価は、在庫の帳簿価額に強く引っ張られます。実態と帳簿がずれているほど、評価だけが高くなります。
まずは一度、評価額を出してもらってください。金額を見れば、在庫の整理に何年かけるべきかが決まります。
試算は決算書があれば進められます。金額を知らないままでは、在庫の整理に何年かけるべきかも決められません。まずは数字を出すところから始めてください。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。