外部鑑定を使う判断軸

次の3つを掛け合わせて考えます。

  • 損失の大きさ:偽造品だった場合、いくら失うか
  • 社内判定の確からしさ:そのカテゴリを自社で見抜けるか
  • 販売価格への影響:鑑定書が付くことで、いくら高く売れるか

3つ目を見落としがちです。鑑定費用は、販売価格の上乗せで回収できる場合があります。

3番目を見落とすと、鑑定を費用としてだけ捉えることになります。鑑定書が付くことで売価が上がる商材では、費用を回収できるだけでなく利益が増えることもあります。カテゴリごとに検証してください。

線引きの決め方

実務的には、次のような基準を置くと運用しやすくなります。

条件対応
買取額が一定額超原則として外部鑑定に出す
社内で扱い慣れていないブランド外部鑑定に出す
チェック項目に疑問あり二次判定 → 必要なら外部
鑑定書付きで売れるカテゴリ費用対効果を見て判断
低単価・扱い慣れた品社内判定のみ

金額の水準は、自店の平均単価と粗利から決めてください。

金額の水準を決めるときは、偽造品だった場合の損失と鑑定費用を比べてください。損失が鑑定費用の何倍にもなる価格帯では、出したほうが合理的です。逆に、損失が鑑定費用と同程度なら社内判定で足ります。

回転への影響を計算に入れる

鑑定に出している間、その商品は売れません。日数がかかるほど、在庫回転が落ち、資金が寝ます。

とくに相場が動く商材では、鑑定を待つ間に相場が下がるリスクがあります。回転の速いカテゴリでは、この点を踏まえて判断してください。

この点は、相場が動く商材でとくに重要です。鑑定を待つ間に相場が下がれば、真贋は確認できても利益が消えることがあります。相場商材は、出すかどうかを慎重に判断してください。

費用を原価率に織り込む

鑑定費用は仕入れに付随するコストです。買取上限を計算するとき、諸経費の一つとして引いてください。

買取上限 = 想定売価 −(必要な粗利)− 送料・手数料・クリーニング費 − 鑑定費用

ここを忘れると、鑑定に出すカテゴリだけ粗利が薄くなります。

織り込みを忘れると、鑑定に出すカテゴリだけ粗利が薄くなります。それに気づかないまま「このカテゴリは儲からない」と判断してしまう例があります。原価率の計算式に欄を追加してください。

買取時に出すか、販売時に出すか

タイミングにも選択肢があります。

  • 買取時に出す:偽造品を仕入れるリスクを避けられるが、査定に時間がかかり、お客様を待たせる
  • 買取後に出す:その場で買えるが、偽造品だった場合の損失を負う
  • 販売時に出す:鑑定書を付けて売価を上げられるが、仕入れリスクは残る

高額品では、条件付きで預かり、鑑定後に金額を確定するという運用もあります。その場合は、預かり証と条件を書面で明示してください。

預かる運用を取る場合は、預かり証を必ず出してください。「預けた・預かっていない」という話になるのを防ぐためです。預かった品の状態を写真で残し、回答の予定日も明記してください。

社内判定の精度を上げれば費用は下がる

外部鑑定は最後の砦であって、常用するものではありません。社内のチェック項目を整え、判定できる人を増やすほど、外部に出す件数は減ります。

鑑定費用が増えているなら、それは社内体制への投資が足りていないサインです。

集計してみると、特定のブランドやカテゴリに偏っていることが多くあります。そこが社内体制の弱い領域です。チェック項目を厚くし、判定できる人を増やせば件数は減っていきます。

鑑定に出す件数が減っていく流れ

外部鑑定は最後の砦であって、常用するものではありません。社内体制を育てていくと自然に件数が減ります。流れとしては次のようになります。

  1. まずは幅広く出す — 体制ができていない段階では、疑わしいものは出すのが安全です。この期間の費用は体制づくりへの投資と考えてください
  2. 鑑定結果を記録する — どのブランドの何が問題だったか。結果を蓄積すると、見るべき箇所が具体的に分かってきます
  3. チェック項目に反映する — 鑑定で判明した見分け方を社内の基準に取り込みます
  4. 社内判定の範囲を広げる — 基準が厚くなれば、社内で判断できるカテゴリが増えます
  5. 出す件数と費用を月次で追う — 減っていれば体制が育っている証拠です。増えているなら基準の取り込みが進んでいません

つまり、鑑定費用は社内体制の水準を映す指標でもあります。費用が減らないなら、結果を基準に取り込む工程が抜けていると考えてください。

まとめ

外部鑑定は、損失の大きさ・社内判定の確からしさ・販売価格への効果の3軸で線を引いてください。費用は原価率に織り込みます。

まず直近1年で、鑑定に出した件数と費用を集計してみてください。線引きの見直しの材料になります。

直近1年の件数と費用を集計すれば、線引きが適切かどうかが見えます。カテゴリ別に分けて出すとさらに具体的になります。整理のしかたについてはご相談いただけます。