最低車両数という考え方

一般貨物自動車運送事業では、営業所ごとに配置する事業用自動車の数について基準が定められています。一般には5両が基準として知られていますが、事業の種類や地域によって扱いが異なる場合があります。

自社に適用される基準と、その数え方(けん引車・被けん引車の扱いなど)は、管轄の運輸支局または行政書士に確認してください。

なぜ基準があるのか

一定の事業規模がなければ、運行管理・整備管理の体制を維持できないという考え方に基づいています。安全に事業を継続できる最低限の規模を担保するための要件です。

減車が問題になる場面

1. ドライバー不足で車が余っている

最も多いケースです。ドライバーが辞めて車が動いていない。維持費とリース料だけかかるので減らしたい——という判断は経営的には自然です。

しかし、基準を下回るまで減車すると、許可の要件を満たさなくなります。減車する前に、何両まで減らせるかを確認してください。

2. 車両更新のタイミング

古い車両を処分し、新車の納車を待つ間に台数が一時的に減ることがあります。納期が長期化している状況では、この期間が数か月に及ぶこともあります。事前に計画を立ててください。

3. 営業所を統廃合する

複数営業所を持つ会社が拠点を集約する場合、営業所ごとの台数が問題になります。全社では足りていても、各営業所で基準を満たす必要があります。営業所の新設・移転をご覧ください。

4. 事故や故障で長期離脱

登録上は在籍していても、実際に使える状態にない車両が続くと、実態として問題になり得ます。

減車の手続き

車両数の変更は事業計画の変更にあたり、届出が必要です。減らしてから届け出るのか、事前なのか、期限はいつかは手続きの内容によって異なります。管轄に確認してください。

届け出ずに減らしたまま放置すると、台帳と実態のずれとして監査・巡回指導で指摘されます。

基準を下回りそうなときの選択肢

  1. ドライバーを確保して車を動かす:本筋の解決策(ドライバー不足への対応
  2. 営業所を統合する:複数拠点なら、集約して各営業所の台数を確保する
  3. 車両の入れ替えで台数を維持する:古い車を処分し、小型車などに置き換える
  4. 事業の方向を見直す:規模の縮小が続くなら、承継・譲渡・廃業の検討

4番目は重い判断ですが、台数を維持できない状態が続くこと自体が事業継続の危険信号です。傷が深くなる前に選択肢を検討してください。廃業と承継の比較をご覧ください。

承継・M&Aでの扱い

買い手が見る点

  • 登録台数と、実際に稼働している台数の差
  • 稼働していない車両がある理由(ドライバー不足か、車両の状態か)
  • 基準に対する余裕があるか
  • 車齢構成と更新の必要額

稼働していない車両が多い会社は、実働率が低い会社として評価されます。ただし、原因がドライバー不足で、買い手が採用力を持っていれば伸びしろとして見られます。実働率・実車率と収益力の見せ方をご覧ください。

売り手が準備すること

  • 車両台帳を現物と一致させる
  • 稼働・非稼働を区分し、理由を説明できるようにする
  • 廃車・売却済みの車両を帳簿から除却する
  • リース残債の一覧を作る(リース残債が価格に与える影響

「とりあえず名義だけ残す」は危険

基準を満たすために、動いていない車両を登録上だけ残す——という対応を考える方もいます。しかし、使用の実態がない車両は、監査で問題になり得ます。維持費・保険料もかかり続けます。

根本的には、台数に見合ったドライバーを確保するか、事業規模を見直すかのどちらかです。

減らしたい理由と減らせない事情の板挟み

ドライバーが辞めて車が動いていない状態は、経営から見れば単純です。維持費とリース料だけが出ていくので、減らしたい。

ところが、基準を下回れば許可の要件に触れます。つまり、経営の合理性と制度の要件が正面からぶつかる場面です。

この板挟みは、放置すると悪化します。動かない車両の費用が利益を削り、利益が減れば人を採る余力も減り、さらに車が動かなくなる。この循環に入ると、抜け出すのは容易ではありません。

だから、気づいた時点で選択肢を並べてください。人を採るのか、拠点を集約するのか、車格を入れ替えるのか、事業の方向そのものを見直すのか。どれを選ぶにせよ、判断が早いほど選べる手が多くなります。

何両まで減らせるかを先に知る

減らす前に確認するという手順は、順序として決定的です。減らしてから確認したのでは、戻せません。

確認したいのは二つです。自社に適用される基準が何両か、そして数え方がどうなっているか。けん引する車と、けん引される側の扱い。休車の届出をしている車両の扱い。これらは自己判断が難しい部分です。

営業所が複数ある会社では、営業所ごとに確認してください。全社の合計では足りていても、個別の営業所で下回れば問題になります。

そして、確認した内容を記録に残してください。担当が代わっても、判断の前提が共有できます。

あわせて、現在の台数に対する余裕がどれだけあるかを把握しておいてください。あと何両減らせるのかが分かっていれば、日々の判断も早くなります。

更新の谷間をどう埋めるか

古い車両を処分してから新車が入るまでの間に台数が減る、という問題は、納期が読みにくい状況では現実的な課題です。

対処の基本は、順序を逆にすることです。新車が入ってから古い車を処分する。重複する期間の費用は増えますが、台数が下回るリスクは避けられます。

それが難しい場合、代替の手段を検討してください。中古車で一時的に埋める、リースで短期に借りる。所管に相談して、どういう扱いになるかを確認したうえで進めます。

そして、更新の計画を立てるときに、この谷間を織り込んでください。何台を、いつ処分し、いつ入れるのか。同じ時期に集中させると、谷間も深くなります。

納期の見通しは、発注の前に確認しておいてください。契約してから納期が延びると、計画そのものが崩れます。

拠点の集約で解決する場合

複数の営業所を持つ会社では、集約という選択肢があります。各営業所で基準を満たすのが難しくなったときに、まとめて一つにする。

ただし、集約にも手続きと影響があります。廃止の届出、車両の移管、選任の見直し。そして、荷主との関係です。

集約すると、その地域からの距離が延びます。回送の距離が増え、実車率が下がります。荷主によっては、対応が遅くなることを嫌がるかもしれません。

だから、集約の判断は台数だけで決めないでください。荷主への影響、回送の増加、人の異動。これらを並べて、それでも集約する意味があるかを確かめます。

逆に、集約によって管理が行き届くようになり、記録も揃うという効果もあります。離れた拠点を薄い体制で維持するより、一つに集めて厚くするほうが、結果的に良い場合もあります。

使えない車両が続く場合

登録上は在籍していても実際に使える状態にない車両が続くと、実態として問題になり得ます。この点は見落とされやすい部分です。

事故で長期に離脱している、故障したまま修理していない、部品の入手を待っている。理由はさまざまですが、動いていない期間が長引けば、台数として数えてよいのかという論点が生じます。

だから、稼働していない車両については、理由と見通しを記録しておいてください。いつから止まっていて、なぜで、いつ復帰する見込みか。

見通しが立たない車両については、処分するのか修理するのかを判断してください。判断を先送りにしていると、台数の数え方に不安が残ります。

この記録は、承継の場面でも役に立ちます。稼働していない車両があること自体より、理由が説明できないことのほうが評価に響きます。

名義だけ残す対応が危うい理由

動いていない車両を登録上だけ残すという対応は、短期には基準を満たせるように見えます。ただ、二つの点で危うい判断です。

ひとつは、使用の実態がない車両が監査で問題になり得ることです。台数を満たすための形式だけの登録は、要件の趣旨に反します。

もうひとつは、費用が出続けることです。維持費、保険料、リース料。動いていない車両にこれらを払い続ければ、収益はさらに圧迫されます。

そして、この対応をとっている間、根本の問題は解決しません。人が足りないのか、仕事が減ったのか。どちらであっても、時間が経つほど傷は深くなります。

だから、対症療法として一時的に使うことはあっても、恒常的な状態にしないでください。いつまでにどうするかを決めて、期限を切ることです。

台帳と現物を一致させる

売り手が準備することとして車両台帳を現物と一致させることを挙げましたが、この作業には副次的な効果があります。

台帳を作ると、まず不一致が出てきます。既にない車両が残っている、逆に台帳にない車両がある。除却の処理が漏れているものが見つかります。

次に、稼働の状況が見えます。どの車両が毎日動いていて、どれが止まっているのか。止まっている理由も、この作業の過程で確認することになります。

そして、車齢の構成が分かります。並べてみると、更新の時期が特定の年に集中していることに気づくかもしれません。

つまり、台帳の整備は、最低車両数の確認であると同時に、実働率の把握であり、更新計画の土台でもあります。一つの作業で複数の準備が進みます。

作るのは表計算の一枚で足ります。車番、車種、初度登録、走行距離、所有かリースか、稼働の状況、そして止まっている場合はその理由。年に一度の更新で維持できます。

基準に触れそうな状態は事業の信号

台数を維持できない状態が続くこと自体が事業継続の危険信号だ、という点を掘り下げます。

基準を下回りそうになる原因は、突き詰めれば二つです。人が足りないか、仕事が減ったか。どちらも、制度の問題ではなく経営の問題です。

人が足りないなら、採用と定着に手を打つことになります。ただ、この業界で人を採るのは容易ではありません。給与だけでなく、勤務の形、休みの取り方、車両の状態、休憩の環境。総合的に見直す必要があります。

仕事が減ったなら、荷主の構成を見直すことになります。減った分をどこで埋めるのか。既存の荷主の中で伸ばせる先はないか。

どちらも時間がかかります。だから、基準に触れそうだと気づいた時点で、承継や譲渡も含めた選択肢を並べておくことに意味があります。傷が浅いうちのほうが、選べる相手も条件も多くなります。

買い手から見た余裕の意味

基準に対する余裕があるかを買い手が見る、という点を補足します。

余裕がなければ、引き継いだ直後に人が数名辞めただけで要件に触れます。買い手にとっては、事業が止まるリスクです。

だから、余裕の有無は単なる数字ではなく、事業の安定性の指標として見られます。基準ぎりぎりで回している会社と、余裕がある会社では、同じ台数でも評価が違います。

逆に、稼働していない車両が多くても、その理由がドライバー不足であり、買い手に採用の力があれば、伸びしろとして見られます。車両と許可と荷主が既にあって、人だけが足りない状態だからです。

だから、説明の仕方が重要になります。「動いていない車両がこれだけあります」で終わらせず、なぜ動いていないのか、どうすれば動くのかまで示してください。同じ状態でも、受け止められ方が変わります。

届出を出さないまま減らさない

車両数の変更は事業計画の変更にあたるので、届出が必要です。届け出ずに減らしたまま放置すると、台帳と実態のずれとして指摘されます。

ずれが生じるのは、日常の判断が先に走るからです。車が壊れた、リースが満了した、売却した。その場で処理して、届出は後回しになります。

だから、車両を動かす判断をしたときに、届出を手順に組み込んでください。処分の決裁と届出をセットにしておけば、抜けません。

そして、年に一度は車検証の一覧と届出上の台数を突き合わせてください。ずれが見つかったら、所管に相談して処理を決めます。

増やす場合も同じです。増車の届出とあわせて、車庫の収容が足りるかも確認してください。台数だけを見て増やすと、置き場所で問題が出ます。

まとめ

最低車両数は営業所ごとの要件で、一般には5両が基準とされますが、事業の種類や地域で扱いが異なります。ドライバー不足による減車は要件に触れる可能性があるため、減らす前に確認してください。台帳と実態を一致させることが、監査でもM&Aでも共通の備えになります。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。許認可の具体的な取扱い・必要書類・審査期間は、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄の運輸支局等および専門家にご確認ください。