営業所とは何か

運送事業を行う拠点として届け出た場所です。単なる事務所ではなく、次の機能を持ちます。

  • 運行管理を行う(点呼、指示、記録の管理)
  • 整備管理を行う
  • 運転者が発着する拠点になる

そのため、営業所には運行管理者・整備管理者の選任が必要です。営業所を増やすということは、管理者も増やすということを意味します。

確認すべき要件

1. 場所(都市計画法など)

用途地域によっては、事業所として使えない場所があります。市街化調整区域も制限があります。物件を決める前に、その土地で営業所を置けるかを確認してください。ここを飛ばして契約すると、後で使えないことが判明します。

2. 建物の適法性

建築基準法や消防法に適合していることが求められます。増築や用途変更をしている建物では、確認が必要です。

3. 使用権原

自己所有なら登記事項証明書、賃借なら賃貸借契約書で、使用する権利があることを示します。契約期間が短すぎる、転貸である、といった場合は注意が必要です。

4. 車庫との関係

営業所と車庫には、距離に関する条件があります。地域によって基準が異なるため、管轄の運輸支局に確認してください。営業所と車庫を別々に探すと、この条件で組み合わせが成立しないことがあります。車庫の要件をご覧ください。

5. 休憩・睡眠施設

運転者が休憩できる施設が必要です。長距離運行がある場合は睡眠施設の要件も関わります。営業所または車庫に併設するのが一般的です。休憩・睡眠施設の要件で整理しています。

6. 人員

  • 運行管理者(および必要に応じて補助者)
  • 整備管理者
  • その営業所に配置する運転者

人が確保できないと営業所は作れません。物件より人のほうが調達に時間がかかることもあります。

手続きの種類

営業所の新設・移転は、事業計画の変更にあたります。内容によって、認可が必要な場合と届出で足りる場合があります。どちらに当たるか、どれくらいの期間がかかるかは、手法を決める前に確認してください。認可にかかる期間の目安をご覧ください。

承継・M&Aで問題になる「実態とのずれ」

デューデリジェンスや監査で頻繁に見つかるのが、次のずれです。

  • 届出上の営業所と、実際に運行管理をしている場所が違う
  • 移転したのに変更の手続きをしていない
  • 実質的に営業所として使っている場所を届け出ていない
  • 営業所に運行管理者が常駐していない
  • 休憩施設が実際には使われていない、または物置になっている

これらは行政処分のリスクとして評価され、価格にも影響します。行政処分の種類と事業への影響評価を下げてしまう要因をご覧ください。

営業所を増やすときの判断

手続き以前に、増やすべきかどうかを考えてください。

増やす意味がある場合

  • 新しいエリアの荷主を確保できる見込みがある
  • 回送距離が長く、拠点を置くほうが効率的
  • そのエリアでドライバーを採用できる
  • 中継輸送の拠点として使える

慎重に考えるべき場合

  • 管理者を配置できるあてがない
  • 荷量の見込みが1社に依存している
  • 本社の管理が届かない距離

営業所を増やすと、管理者・施設・固定費が増えます。荷量が読めないまま拠点を増やすと、赤字拠点になります。

M&Aで営業所ごと手に入れる

買い手の立場では、営業所の新設より既存の会社を買うほうが早いことがあります。許可・営業所・車庫・管理者・ドライバーがまとめて手に入るためです。

逆に売り手から見れば、好立地の営業所を持っていること自体が価値になります。譲受側から見た運送会社M&Aの狙いで整理しています。

物件を決める前に確認する

その土地で営業所を置けるかを契約前に確認するという点は、この論点で最も費用に直結します。

物件を探すときに優先されるのは、立地と賃料と広さです。荷主に近いか、幹線に出やすいか、事務所として使えるか。用途地域や建物の適法性まで確認する習慣がある会社は多くありません。

ところが、契約してから使えないと分かれば、賃料を払いながら別の物件を探すことになります。中途解約の違約金が発生することもあります。

だから、候補が絞れた段階で、必ず所管に相談してください。所在地を示して、営業所として使えるか、車庫との距離の条件を満たすか、必要な施設を置けるか。

不動産の仲介業者は、運送業の要件を知らないことがほとんどです。「事務所として使えます」という説明を、営業所として使えるという意味に受け取らないでください。

車庫との組み合わせで詰まる

営業所と車庫を別々に探すと条件で組み合わせが成立しないことがある、という点は実務でよく起きます。

営業所として良い物件が見つかっても、条件を満たす車庫が近くにない。逆に、広い車庫が確保できても、そこから一定の範囲に営業所に使える物件がない。

だから、探すときは対で考えてください。まず車庫の候補を見つけて、そこから範囲内で営業所を探す。あるいは逆の順序でも構いませんが、片方だけを先に決めないことです。

都市部では、条件を満たす車庫を確保すること自体が難しくなっています。だから、車庫を先に押さえるほうが現実的な場合が多くなります。

そして、距離の条件は地域によって基準が異なります。自己判断せず、候補が見つかった段階で所管に確認してください。

人が確保できないと拠点は作れない

物件より人のほうが調達に時間がかかることもある、という点は、拠点を増やす判断で最も重い制約です。

営業所には運行管理者と整備管理者の選任が必要です。既存の拠点から動かすのか、新たに資格者を採用するのか、社内で育てるのか。

既存の拠点から動かす場合、元の拠点の体制が薄くなります。一人しかいない拠点から抜けば、そこが欠けます。

採用する場合、有資格者を探すことになりますが、この業界では簡単ではありません。育てる場合は、資格の取得に時間がかかります。

そして、その拠点に配置する運転者も必要です。新しいエリアで採用できる見込みがなければ、既存の人を動かすことになります。本人の生活があるので、簡単には動きません。

だから、拠点を増やす検討は、物件探しからではなく人の見通しから始めてください。人の目処が立たないうちに物件を押さえると、家賃だけが出ていきます。

手続きの種類を先に確かめる

内容によって認可が必要な場合と届出で足りる場合がある、という点は日程を左右します。

混同しやすいのは、新設なのか移転なのか、そして規模がどう変わるのかです。同じ「営業所を動かす」でも、扱いが違うことがあります。

だから、動かす前に所管に確認してください。この形なら何が必要か、期間はどれくらいか、事前に整えておくべき点はあるか。

認可が必要な場合、審査の期間を見込む必要があります。その期間は自社の努力では縮められないので、日程の固定要素として先に置いてください。

そして、手続きが済むまでは新しい場所で運行管理を始められません。物件の引き渡しと手続きの完了がずれると、家賃だけが出る期間が生じます。契約の開始時期を交渉するときに、この点を織り込んでください。

ずれが生じる典型的な経緯

実態とのずれとして挙げた項目は、いずれも悪意なく生じます。経緯を知っておくと、自社の点検にも役立ちます。

移転したのに手続きをしていないという状態は、急な引っ越しで起きます。貸主の都合、建物の老朽化、賃料の見直し。急いで移り、業務を再開し、手続きは後回しになります。

届け出ていない場所を実質的に営業所として使っているという状態は、業務が広がったときに起きます。倉庫の一角で配車をするようになった、協力会社の事務所を借りて運行管理をしている。

運行管理者が常駐していないという状態は、人が減ったときに起きます。複数の拠点を一人が見て回る、あるいは本社から遠隔で対応する。

いずれも、日常では問題になりません。だから、意識して点検する機会を作らなければ見つかりません。年に一度、現況と届出を突き合わせてください。

拠点を増やす判断の材料

増やす意味がある場合と慎重に考えるべき場合を挙げましたが、判断の順序を補足します。

まず、荷量の見通しを確かめてください。そのエリアでどれだけの仕事があるのか。一社の依頼が起点になっている場合、その一社が離れたときに拠点が空きます。複数の見込みがあるかを確認します。

次に、人の見通しです。管理者と運転者を確保できるか。採用の難易度は地域によって差があります。

三つめが、管理の距離です。本社から遠い拠点は、目が届きにくくなります。点呼の実施、記録の管理、労務の状況。離れた拠点で問題が起きても、気づくのが遅れます。

そして、固定費の増加です。家賃、管理者の人件費、通信、光熱。荷量が読めないまま増やすと、赤字の拠点になります。

この四つを並べて、それでも増やす意味があるなら進めてください。逆に、どれかが読めないなら、傭車や協力会社との連携で対応する道もあります。

好立地が価値になる条件

売り手から見て好立地の営業所を持っていること自体が価値になる、という点を補足します。

買い手にとって、拠点を新設するのは時間も費用もかかります。物件を探し、要件を確認し、手続きを経て、人を配置する。既存の会社を引き継げば、これらがまとめて手に入ります。

ただし、価値として認められるには条件があります。使用権原が明確で、届出と実態が一致していて、承継後も使い続けられること。

借りている場合は、契約の残り期間と更新の条件が焦点になります。残りが短く、更新が貸主の判断次第という状態だと、買い手は不安を持ちます。

だから、立地の良い拠点を持っているなら、その権利関係を整えておいてください。整えていなければ、価値のある土地であってもリスクとして扱われます。

そして、自社の拠点がどんな相手にとって価値があるかを考えておくと、相手を探す方向も定まります。

営業所を減らすときの検討

増やす話が中心になりがちですが、減らす判断も同じくらい重要です。荷量が落ちた拠点、人が集まらない拠点、赤字が続く拠点。

減らすときにも手続きがあります。廃止の届出、車両の移管、選任の見直し。そして、最低限の車両数を下回らないかという確認も要ります。

あわせて、その拠点の荷主をどうするかを決めてください。別の拠点から対応できるのか、傭車で埋めるのか、取引を終えるのか。相手にも準備の時間が要るので、早めに伝える必要があります。

人の処遇も課題になります。異動を打診するのか、退職になるのか。この判断は、他の拠点の人員にも影響します。

承継の準備という観点では、赤字の拠点を整理しておくと数字が見やすくなります。ただ、整理そのものに費用と時間がかかるので、早めに着手してください。

点検の手順を決める

届出と実態のずれが最頻出の指摘項目である以上、点検を仕組みにしておく価値があります。

年に一度、決算のタイミングに合わせて確認してください。見るのは四点です。届出上の営業所と実際に運行管理をしている場所が一致しているか、移転や変更の手続きが済んでいるか、選任者が実際にその拠点にいるか、そして休憩の施設が使える状態か。

確認は現地で行ってください。書類だけでは分かりません。写真を撮っておけば、記録としても残ります。

ずれが見つかったら、所管に相談して是正の方法を決めます。是正に時間がかかることもあるので、早く見つけるほど選択肢があります。

そして、確認した記録を残してください。「この時点で確認し、問題なし」という記録の積み重ねが、管理の体制があることの証明になります。

賃貸借の条件を交渉する

使用権原の確認として賃貸借契約書を挙げましたが、内容にも注意が要ります。

契約の期間が短いと、承継の場面で買い手が不安を持ちます。更新が貸主の判断次第という状態であれば、なおさらです。可能なら、一定期間の使用が担保される形にしてください。

転貸になっている場合も確認が要ります。又貸しの形では、権原を示すのに元の契約まで遡る必要があります。

そして、賃借人が変わるときや支配権が移るときに承諾が必要かという条項です。株式を譲る形なら法人格は変わりませんが、書きぶりによっては通知や承諾が要ります。

用途の制限も見てください。事務所として借りた物件を営業所として使う場合、貸主の了解が要ることがあります。

まとめ

営業所の新設・移転では、用途地域・建物の適法性・使用権原・車庫との距離・休憩施設・人員を確認する必要があります。物件を契約する前に、その場所で営業所を置けるかを必ず確認してください。届出と実態のずれは、監査でもM&Aでも指摘される最頻出項目です。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。許認可の具体的な取扱い・必要書類・審査期間は、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄の運輸支局等および専門家にご確認ください。