なぜ荷待ちが発生するのか
- 到着が集中する:同じ時間帯に複数の車両が来る
- 受入体制が足りない:バース、人員、フォークリフト
- 前の作業が終わらない:連鎖的に遅れる
- 準備ができていない:荷物が揃っていない、伝票がない
- 検品に時間がかかる
- 指定時刻が実態と合っていない
どれが原因かによって、打ち手が違います。 まず実態を把握してください。
原因を見分けるには、待たされる時間帯と曜日に偏りがあるかを見るのが早道です。特定の時間に集中しているなら到着の集中が原因ですし、いつ行っても待つなら受入の体制そのものに余裕がありません。
前の作業が終わらないことによる連鎖は、こちらでは手が打てません。しかし、その事実を伝えることには意味があります。相手の側でも、どこで詰まっているかを把握していないことがあります。
準備ができていない場合は、事前の連絡で改善することがあります。到着の見込みを伝えておけば、相手も準備を始められます。これはこちらの工夫で始められる対策です。
指定の時刻が実態と合っていない場合は、話し合いで変えられる可能性があります。その時刻に着いても作業が始まらないなら、時刻を後ろにずらしても結果は変わりません。むしろ、待つ時間が減ります。
記録を取る
すべての出発点です。次を1か月記録してください。
- 到着時刻
- 作業開始時刻(=待った時間)
- 作業終了時刻
- 出発時刻
- 荷主・拠点
- 曜日・時間帯
デジタコの停車記録と日報を組み合わせると集計しやすくなります。デジタコを労務管理にどう使うか、労働時間の把握方法をご覧ください。
「なんとなく長い」ではなく「平均◯分、月間◯時間」と言えることが、交渉の前提です。
記録を取ること自体に負担を感じるかもしれませんが、多くの場合すでに材料は揃っています。運行の記録に停車の時刻が残っていれば、そこから拾えます。
足りないのは、停車中に何をしていたかの区別です。待っていたのか、作業していたのか、休んでいたのか。ここだけをドライバーに記録してもらえば、集計ができます。
記録を頼むときは、目的を伝えてください。荷主と話す材料にするためだと伝われば、協力が得られます。ただの管理だと思われると、正確に記録されません。
一か月分がたまったら、荷主別、現場別、時間帯別に集計してみてください。どこに問題が集中しているかが見えます。全部を一度に扱おうとせず、いちばん大きいところから手をつけます。
荷主への提案
提案の順序
- 事実を示す:御社での平均待機は◯分、月間◯時間
- 影響を伝える:拘束時間の規制、運行が組めなくなる
- 改善案を出す:具体的に
- それが無理なら料金:待機料の設定
3を先に、4を後にしてください。荷主にとっては、待機を減らすほうが安く済むことが多いためです。
改善案の例
- 予約制・時間指定の導入:到着を分散させる
- 納品時刻の変更:混雑時間を避ける
- 受付・検品の簡略化:事前にデータで送る
- バースの割り当て:車格・荷主別に
- 荷役の分担見直し:荷主側で行う
- パレット化:手積み・手降ろしをなくす
パレット化は効果が大きい一方、パレットの管理・回収という別の課題が生じます。回収方法まで含めて話し合ってください。
この順序が大事なのは、料金の話から入ると身構えられるからです。改善の提案から入れば、一緒に考える話になります。
相手にとっても、待たせている状態は望ましくありません。荷物が予定どおり動かなければ、相手の業務にも影響します。だから、事実を示せば検討してもらえる可能性があります。
提案するときは、相手の負担が小さいものから並べるとよいでしょう。時刻をずらす、事前に連絡する、伝票の渡し方を変える。設備の投資が要らない案なら、すぐに試せます。
それでも改善が難しい場合に、料金の話になります。この順序を踏んでいれば、相手も無理な要求とは受け取りません。改善できないなら費用がかかる、という筋道は理解されやすいはずです。
予約制の効果と課題
トラック予約受付システムの導入が進んでいます。
効果
- 到着が分散し、待ち時間が減る
- 荷主側も作業計画が立てやすい
- 実績データが残る
課題
- 渋滞などで予約時刻に間に合わないことがある
- 予約が取れないと、その日に運べない
- 運送会社側の運用負担
柔軟性をどう確保するかを、導入時に話し合ってください。
導入されるかどうかはこちらでは決められませんが、荷主が検討している段階なら意見を伝える機会があります。実際に運ぶ側の事情を知っているのはこちらです。
伝えるとすれば、枠の取り方、遅れたときの扱い、変更の手続きの三点になります。使いにくい設計になると、結局は運用でつまずきます。
自社でできること
- 到着時刻の調整:混む時間を避けて配車する
- 順序の見直し:待たされる先を後に回す
- 事前連絡:到着予定を伝えて準備してもらう(動態管理の活用)
- 待ち時間の活用:休憩時間として扱えるか(実態が休憩でなければ労働時間です)
4番目は注意が必要です。車から離れられない、いつ呼ばれるか分からない状態は休憩ではありません。
四つのうち、上の三つはこちらの判断で始められます。特に到着時刻の調整は、記録があれば具体的に決められます。混む時間がわかっていれば、そこを避けて配車できます。
ただし、指定の時刻がある場合は動かせません。その場合は、待つ前提で運行を組むことになります。待つことを見込んだ時間を確保しておかないと、次の予定に影響します。
四つ目の扱いには注意が要ります。呼ばれたらすぐ動かなければならない状態は、自由に過ごせる時間ではありません。この区別を誤ると、後から問題になります。
判断に迷う場合は、社会保険労務士に確認してください。実態がどうであるかで扱いが決まるため、形式だけを整えても意味がありません。
削減が難しい場合
- 待機料を求める(待機料・附帯作業料の収受)
- その荷主の便を減らす
- 配車の優先順位を下げる
- 撤退を検討する(赤字取引の見極めと撤退)
拘束時間の規制がある以上、荷待ちが長い仕事は他の仕事の機会を奪っています。この観点で採算を評価してください。
この四つは、上から順に検討することになります。まず料金で埋められないかを試し、それが通らなければ量を減らし、それでも合わなければ離れる。
ただし、離れる判断をするときは、その仕事が抜けた後をどうするかを先に考えてください。代わりの仕事がないまま切ると、車と人が余ります。
だから、採算の合わない取引を見つけたら、代わりを探す動きを並行して始めることになります。この準備があれば、条件が変わらないときに動けます。
制度面の後押し
荷主側にも物流効率化への取り組みが求められる方向に制度が整備されています。荷待ち時間の削減は、その中核的な項目です。
「業界全体で取り組んでいることです」という切り口は、交渉を進めやすくします。荷主側の規制強化と運送会社への影響をご覧ください。
この切り口が使いやすいのは、こちらの都合ではなく業界の話として伝えられるからです。相手も、同じような話を他の取引先から聞いているかもしれません。
ただし、制度の内容を自分で説明するときは慎重にしてください。要件や時期は整備の途上にあり、変わることがあります。誤った内容を伝えると、信用を損ねます。公表されている資料を示す形にするのが安全です。
削減できたら数字にする
- 削減できた時間 × 時間あたり原価 = 削減額
- 空いた時間で受けられた仕事
- ドライバーの拘束時間の改善
成果を数字で示すと、他の荷主との交渉でも使えます。 「A社では予約制の導入で平均◯分削減できました」という実例は説得力があります。
削減額を計算するときは、時間あたりの原価を使ってください。人件費だけでなく、車両の費用も含めた額です。この数字を持っていない会社は、まず出すところから始まります。
空いた時間で何ができたかも、合わせて示せると効果的です。一日あたり一時間空けば、月にどれだけの運行が増やせるか。この計算があると、改善の意味が伝わります。
M&Aでの意味
荷待ちの実態を把握し、削減に取り組んでいる会社は、荷主と対等に話せる会社と評価されます。
また、荷待ちが長い荷主が残っていることは、買収後の改善余地として示すこともできます。実働率・実車率と収益力の見せ方をご覧ください。
待つことの本当の損失
荷待ちの損失を、待っている時間の人件費だけで見ると小さく見えます。実際の損失はもっと大きくなります。
まず、その車と人が他の仕事をできない時間が生じています。一日に二回運べたはずが一回になれば、失われるのは待った時間分ではなく、運べたはずの一回分です。
次に、拘束の時間が積み上がります。基準に収まらなくなれば、翌日の運行にも影響します。人を増やして埋めるなら、その費用も損失です。
さらに、ドライバーの負担があります。待たされる仕事は嫌われます。続けば、辞める理由になります。人を採るのが難しい状況では、この損失が最も重いかもしれません。
だから、採算を評価するときは待つ時間まで含めてください。単価が良く見える仕事でも、待つ時間を入れると合わないことがあります。
予約の仕組みを使うとき
受付の仕組みが導入されると、到着が分散して待ち時間は減ります。一方で、こちらの運用には別の負担が生じます。
予約を誰が取るのか、変更が必要になったときどうするのか、遅れそうなときにどう連絡するのか。この手順を決めておかないと、現場が混乱します。
遅れたときの扱いは、特に確認しておいてください。渋滞や前の現場での遅れは、こちらの都合では避けられません。厳格すぎる運用だと、かえって困る場面が出ます。
予約が取れない場合の対応も決めておく必要があります。その日に運べないとなれば、荷主との約束に影響します。枠の確保についても相談しておく価値があります。
成果を次の交渉に使う
ある荷主で改善できたら、その経緯を記録しておいてください。何を提案し、相手が何をして、結果としてどれだけ減ったか。
この記録は、他の荷主と話すときに使えます。実際にやってみて効果があったという事実は、机上の提案より説得力があります。
ただし、他社の名前を出すときは配慮が要ります。どこの会社かがわかる形で話すと、相手にとっては自社の情報も外で話されると受け取られます。事例として話すなら、会社名は伏せてください。
数字は、自社が測ったものとして示せます。当社の記録では、この取り組みの前後でこれだけ変わりました、という形です。
取り組みが評価につながる
荷待ちの記録を取り、削減に取り組んでいる会社は、荷主から見ても組みやすい相手になります。言われたことをやるだけでなく、改善を持ちかけてくる会社だからです。
この姿勢は、承継の場面でも評価されます。荷主と対等に話せる関係を築いていることは、取引が続く見込みを示します。
逆に、待たされていることを把握もしていない会社は、条件を変える力がないと見られます。数字を持っていること自体が、交渉の力になります。
制度の面でも、荷主の側で物流の効率化に取り組むことが求められる方向に整備が進んでいます。制度の詳細や適用の範囲は変わることがあるため、最新の内容は公表されている資料で確認してください。
社内でどう共有するか
荷待ちの記録は、取るだけでなく社内で共有すると効果が広がります。配車を組む人が知っていれば、待たされる先を考慮した組み方ができます。
ドライバーにも結果を伝えてください。自分が記録したものがどう使われ、何が変わったか。これが伝わらないと、記録する意味を感じなくなります。
改善できた場合は、その事実を共有してください。自分たちの記録が条件を変えたという実感は、次の協力にもつながります。
改善できなかった場合も、伝えたほうがよいでしょう。会社として動いたが相手が応じなかった、という事実がわかれば、少なくとも放置されていないことは伝わります。
まとめ
まず1か月、荷待ちを実測してください。交渉では、事実 → 影響 → 改善案 → 料金の順で提案します。予約制・パレット化・荷役の分担見直しが主な改善策です。削減が難しければ、待機料か、便の見直しか、撤退の判断になります。制度の後押しは交渉の追い風です。