再配達が生む負担

  • 走行距離と時間が増える:燃料費、人件費
  • 売上は増えない:多くの場合、追加料金は取れない
  • 拘束時間が延びる:規制への影響
  • ドライバーの負担:徒労感が離職につながる
  • 配送計画が崩れる:他の配達にも影響

1件あたりの原価が倍近くになることを、まず数字で把握してください。

一件あたりの原価が倍近くになるというのは、同じ場所へもう一度行くのだから当然です。しかし、この当然のことが数字として把握されていない会社が多くあります。

把握するには、再度届けた件数と、それにかかった時間を記録するだけで足ります。一か月分がたまれば、月あたりの負担が金額として出せます。

四つ目のドライバーの負担は、金額に出にくいものの実際には重い問題です。届けたのに受け取ってもらえず、また行く。この繰り返しが続けば、仕事への意欲が落ちます。

だから、この問題は費用の話であると同時に、人が続くかどうかの話でもあります。会社として取り組んでいる姿勢を見せることに、それ自体の意味があります。

まず実態を測る

  • 再配達の発生率(全体の何%か)
  • 地域別・時間帯別の発生率
  • 1件あたりの追加時間と距離
  • 月間の追加コスト

「月間◯件、◯時間、◯円の負担」と示せると、荷主との交渉材料になります。

測ったものを金額に換算するには、時間あたりの原価が要ります。人件費と車両の費用を合わせた額です。この数字を持っていない会社は、まずそこから出すことになります。

換算してみると、思っていたより大きな額になることが多いはずです。一件あたりは小さくても、月の件数を掛けると無視できない金額になります。

受取方法の多様化

1. 置き配

玄関前などに置いて完了とする方法です。再配達を大きく減らせます

ただし次の課題があります。

  • 盗難・紛失時の責任
  • 雨天時の扱い
  • 受取人の同意
  • 写真による記録の手間

責任の所在を、荷主・EC事業者と事前に取り決めてください。荷主との契約書を整える事故時の保険と賠償の考え方をご覧ください。

2. 宅配ボックス

マンションの共用設備、戸建て向けの個人設置。設置が進めば再配達は減りますが、運送会社が設置を進められるものではありません

3. コンビニ・駅・ロッカーでの受取

受取人が指定の場所で受け取る方式です。まとめて配達できるため効率的です。

4. 時間指定の精度向上

指定が正確に守られれば、不在は減ります。到着予測を受取人に通知する仕組みが有効です。動態管理の活用をご覧ください。

四つの方法のうち、こちらの判断で進められるものは限られます。多くは、発送する側や受け取る側が決めることです。

だから、こちらができるのは選択肢を提案し、実態を伝えることになります。どの方法がどれだけ効果があったかを記録して示せば、相手も検討しやすくなります。

玄関先に置く方法については、責任の所在を先に決めておくことが欠かせません。なくなった場合、傷んだ場合に誰が負うのか。決めないまま始めると、問題が起きたときに揉めます。

記録の手間も見込んでおいてください。置いた場所を写真に残す運用なら、その分の時間が一件ごとに加わります。件数が多ければ、まとまった時間になります。

どの方法を選ぶにしても、受け取る側の同意が前提になります。勝手に置いて完了とすることはできません。同意の取り方も、発送する側の仕組みによります。

事前通知の効果

配達前に受取人へ通知することで、不在率が下がります。

  • 配達予定日時の通知
  • 到着直前の通知
  • 受取方法の変更を受け付ける

これはEC事業者・元請の仕組みによることが多いため、連携が必要です。自社で受注から担う場合は、導入を検討してください。

この仕組みは効果が大きい一方、こちらだけでは導入できないことが多くなります。注文の情報を持っているのは発送する側だからです。

自社で受注から担っている場合は、導入を検討する価値があります。連絡先を取得し、配達の予定を伝える。この一手間で、無駄足が減ります。

元請を通している場合は、元請に提案することになります。現場の実態を伝えれば、相手も荷主に伝えやすくなります。

荷主・EC事業者との連携

再配達を減らすには、発送側の協力が不可欠です。

  • 注文時に置き配を選べるようにする
  • 正確な連絡先を取得する
  • 配達予定の通知を行う
  • 受取方法の選択肢を用意する

データ(再配達率)を示して提案してください。EC事業者にとっても、配送コストと顧客満足の問題です。EC物流の拡大がもたらす変化をご覧ください。

この連携が進まないのは、相手にとって再配達の負担が見えていないからです。届かなかったことは伝わっても、それにいくらかかっているかは伝わりません。

だから、数字を出すことが出発点になります。この取引での再配達の率、月あたりの件数、それにかかっている時間。事実として示せば、相手も自分の問題として考えます。

相手にとっての利点も添えてください。受け取ってもらえないことは、相手の顧客にとっても不便です。届く方法が増えれば、満足にもつながります。

提案するときは、相手が決められる範囲のことを挙げてください。注文のときに選べるようにする、連絡先を正確に取る、配達の予定を知らせる。どれも発送する側でできることです。

料金への反映

再配達が一定率を超える場合の追加料金を、契約で定められないか検討してください。

  • 再配達1件あたりの料金
  • 再配達率が一定を超えた場合の割増
  • 置き配を選択した場合の料金差

実測データがないと交渉できません。 まず測ってください。待機料・附帯作業料の収受と同じ進め方です。

自社でできる工夫

  • 配達ルートの見直し:不在の多い地域・時間帯を避ける
  • 不在情報の蓄積:この住所は夜間なら在宅、といった記録
  • 不在票の工夫:受取方法の選択肢を分かりやすく示す
  • 連絡手段の提供:電話以外(アプリ、SMS)

2番目はドライバーの経験知です。個人の頭の中にとどめず、記録として共有してください。ベテランの引き止めと技能の継承をご覧ください。

二つ目の記録は、この分野でいちばん効く工夫かもしれません。どの家がいつ在宅かという情報は、経験のある人の頭のなかに蓄積されています。

この情報が個人にとどまっていると、担当が代わったときに失われます。新しい人は同じ失敗を繰り返し、再配達が増えます。

記録として残す方法は、地図に書き込む形でも、一覧にする形でも構いません。大事なのは、担当が代わっても引き継がれる形にすることです。

ただし、個人の生活に関わる情報でもあります。誰が見られるか、どう保管するかは決めておいてください。

ドライバーの負担への配慮

再配達はドライバーにとって精神的な負担が大きい作業です。

  • 再配達の件数を評価の減点にしない(本人の責任ではありません)
  • 不在が多い地域の担当を固定しすぎない
  • 改善の取り組みを共有する(会社が動いていることを伝える)

ドライバーの離職防止をご覧ください。

三つ目の共有が、実は最も効きます。会社が何もしていないと感じると、諦めが広がります。動いていることが見えれば、我慢もできます。

共有するときは、結果が出ていなくても伝えてください。提案したが変わらなかった、という報告でも、動いた事実は伝わります。

制度・社会的な動き

再配達の削減は、物流の効率化に関する政策課題としても取り上げられています。置き配の推進や、受取方法の多様化を促す動きがあります。

「業界全体・社会全体の課題です」という切り口は、荷主やEC事業者との話を進めやすくします。荷主側の規制強化と運送会社への影響をご覧ください。

この切り口を使うときも、制度の内容を自分で断定して説明しないほうが安全です。政策の方向や施策の内容は変わることがあります。公表されている資料を示す形にしてください。

率を測るところから始める

この問題への取り組みは、すべて率を知ることから始まります。測っていなければ、対策の効果もわかりません。

測り方は簡単です。届けた件数のうち、再度行った件数がどれだけかを数える。日ごとに記録すれば、月の率が出ます。

地域別、時間帯別に分けて見ると、さらに使えます。特定の地域で高いなら、その地域の配達の時間を変えられるかもしれません。時間帯に偏りがあるなら、回る順序を変える余地があります。

ドライバー別に見ることもできますが、これは慎重に扱ってください。率の違いは、担当する地域の性質によることが多く、本人の努力の差ではないことがあります。

対策の効果を確かめる

何かを試したら、その前後で率がどう変わったかを見てください。変わらなければ、その方法は効いていません。

効果を見るには、少なくとも一か月は続ける必要があります。日によって変動があるため、短い期間では判断できません。

複数の対策を同時に始めると、どれが効いたかがわかりません。一つずつ試すほうが、後の判断に使えます。

効果があった方法は、他の地域や他の荷主にも広げられます。この記録が積み上がると、自社にとって何が効くかがわかってきます。

ドライバーを責めない

再配達の件数を個人の評価に使うと、この取り組みは失敗します。不在は本人の責任ではないからです。

それどころか、責められると隠す動きが出ます。記録を正確につけなくなり、実態がわからなくなります。対策の土台が崩れます。

だから、記録を求めるときは目的を明確に伝えてください。会社として改善するために測る、個人を評価するためではない。この線をはっきりさせておく必要があります。

取り組みの経過も共有してください。荷主に提案した、こういう返答があった、この方法を試すことになった。会社が動いていることが伝われば、協力も続きます。

料金の話にどう持っていくか

減らす努力をしても、限界はあります。だから、残る分をどう扱うかの話が必要になります。

持ちかける順序としては、まず減らす提案をし、それでも残る分について相談する形が自然です。減らす努力をせずに料金だけを求めると、話が進みません。

示す材料は、率と件数と時間です。これだけ取り組んでもこれだけ残る、その分にこれだけかかっている。事実として示せば、検討の対象になります。

取り決めの形としては、一件あたりで決める、一定の率を超えた分について決める、受取の方法によって差をつけるといった案があります。どの形が合うかは、取引の内容によります。文面の作成は弁護士に確認しながら進めてください。

配達の順序をどう組むか

不在を減らす工夫のうち、こちらの判断だけで進められるのが順序の見直しです。同じ件数を回るにしても、順序が変われば結果が変わります。

記録があれば、地域ごと時間帯ごとの不在の傾向が見えます。日中に不在が多い地域は夕方に回す、といった調整ができます。

ただし、時間の指定がある荷物は動かせません。指定のあるものを軸に組み、指定のないものを傾向に合わせて配置する形になります。

順序を変えると、走る距離が増えることもあります。増えた距離と、減った再配達を比べて、どちらが得かを見てください。記録があれば、この比較ができます。

受け取る側との接点をどう作るか

不在のときに残す通知は、次にどう受け取るかを決めてもらうための唯一の接点です。だから、わかりやすさが結果を左右します。

載せておきたいのは、いつ再度届けられるか、他にどういう受け取り方があるか、どう連絡すればよいかの三点です。書いてあっても伝わらなければ意味がないため、文字の大きさや並べ方も工夫の余地があります。

連絡の手段も、電話だけでは足りない場面があります。日中に電話をかけにくい人もいます。他の手段が用意できれば、連絡の率が上がります。

これらの仕組みは、発送する側や元請が用意していることが多いはずです。使いにくい点があれば、現場の声として伝えてください。実際に届けている側が気づくことがあります。

まとめ

再配達は売上を生まずコストだけがかかる作業です。まず発生率と月間の追加コストを測ってください。置き配・事前通知・受取方法の多様化が主な対策ですが、いずれも発送側の協力が必要です。データを示して提案し、料金への反映も検討してください。ドライバーを責めないことが前提です。