2通りの渡し方

居抜き(設備のみ)事業ごと
渡すもの内装、什器、賃借権上記+在庫、従業員、顧客
相手他業種でも可リユース事業者
価格造作譲渡代金在庫評価+営業権
在庫自社で処理する相手に引き継ぐ
従業員他店へ配置転換または退職引き継がれることが多い

居抜きで渡す場合

店を閉め、内装と什器をそのまま次のテナントに渡す形です。

  • 利点:原状回復費が不要になる。造作の代金を受け取れることがある
  • 課題:在庫を自社で処理する必要がある。時間がかかる
  • 確認:賃貸借契約で居抜きが認められるか、貸主の承諾が要るか

原状回復費が浮くだけでも、金額としては大きい。閉店を決めたら、まず居抜きの可能性を探ってください。

事業ごと渡す場合

その店舗の営業を、在庫・従業員ごと引き継いでもらう形です。

  • 利点:在庫を処分せずに済む。従業員の雇用が続く。価格がつく
  • 課題:相手がリユース事業者に限られる。手続きが複雑
  • 方式:事業譲渡、または会社分割+株式譲渡

在庫の扱いが価格を決める

事業ごと渡す場合、価格の大部分は在庫の評価です。

  • 日齢が短く、回転の良い在庫 → 高く評価される
  • 滞留在庫が多い → 大きく割り引かれる
  • 相手の販売網に乗らない商材 → 評価されない

渡す前に、相手の商材に合わない在庫を他店へ移すという調整も有効です。

古物商許可の確認

事業譲渡の場合、買い手が自ら古物商許可を持っている必要があります。持っていなければ、営業を継続できません。

また、自社側は営業所を1つ減らすことになるため、変更の届出が必要になります。管轄の警察署に確認してください。

賃貸借契約が鍵

どちらの方式でも、店舗の賃貸借契約が引き継げるかが前提になります。

  • 譲渡・転貸を制限する条項があるか
  • 貸主の承諾が得られるか
  • 残存期間はどれくらいか
  • 原状回復の範囲はどうなっているか

まず契約書を読むところから始めてください。

渡す範囲を明確にする

「1店舗を譲る」といっても、含まれるものは案件ごとに違います。

  • 賃借権 — 貸主の承諾が要るかどうかを確認します
  • 内装・什器 — 造作の所有権と、原状回復義務の扱いです
  • 在庫 — 含めるか、別建てにするかです
  • 従業員 — 転籍か、雇用の維持かです
  • 顧客情報 — その店舗に紐づく会員情報の扱いです
  • 屋号の使用 — 一定期間の使用を認めるかです
  • 取引先との関係

6番目は交渉の対象になります。買い手にとって、既存の屋号を一定期間使えることは、顧客の離脱を防ぐ価値があります。一方で売り手が他店舗を継続する場合、屋号の共用は混乱を招きます。期間と条件を明確に定めてください。

在庫の扱いで価格が変わる

1店舗の譲渡では、在庫の扱いが金額の大部分を左右します。

  1. その店舗の在庫を特定する — 他店との移動が多いと、切り分けが困難です
  2. 基準日を決める
  3. 評価方法を決める — 日齢別の掛け率が一般的な形です
  4. 他店へ移せる在庫は移す選択もある — 譲渡対象から外す形です
  5. 移した場合、残る店舗の在庫が過剰にならないか確認する

4番目と5番目はセットで検討してください。良い在庫を他店に移してから譲ると、譲渡価格は下がります。一方、移した在庫が残る店舗で売れなければ、意味がありません。移動先の販売力を見込んだうえで判断してください。

許可と契約の手続きを確認する

店舗単位の譲渡でも、手続きが必要です。

  • 売り手側の営業所廃止に関する届出
  • 買い手側の営業所設置に関する手続き
  • 賃貸借契約の承継または再契約 — 貸主の承諾が必要な場合があります
  • リース契約の扱い — その店舗の設備に関するものです
  • 公共料金・通信の名義変更
  • 従業員の労働契約の扱い

3番目が実行の可否を左右します。貸主が承諾しなければ、店舗の譲渡そのものが成立しません。買い手候補と話を進める前に、契約書の条項を確認し、必要であれば貸主に打診してください。手続きの詳細は、所轄の警察署・弁護士にご確認ください。

まとめ

居抜きは原状回復費が浮き、事業ごとなら在庫と雇用が引き継げます。相手の性質で選んでください。

いずれも賃貸借契約の確認が出発点。事業譲渡なら買い手の許可の有無も必ず確認を。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。古物営業法にもとづく許可の要否・必要書類・審査期間や、本人確認義務の具体的な運用は、法令の改正や管轄する警察署・公安委員会の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄窓口および専門家にご確認ください。