公開されている数字の性質

ネットで見かける相場は、次のような性質を持っています。

  • 成約した案件の平均:成約しなかった案件は含まれない
  • 規模の幅が大きい:数店舗の店と数十店舗の会社が混在
  • 業態が混ざっている:総合、専門、ECで条件が違う
  • 時期が古いことがある
  • 集客のために提示されていることがある

リユース業で当てはまらない理由

この業種は、会社ごとのばらつきが極端に大きいのが特徴です。

  • 在庫の質(日齢、簿価と実勢の差)で、価格が倍以上変わる
  • 社長依存の度合いで、営業権が付くか付かないかが決まる
  • 取扱商材によって、買い手の関心がまったく違う
  • 買取チャネルの再現性で、評価が分かれる

「年商の◯%」という一律の目安が、最も機能しない業種の1つです。

「年商の◯%」がなぜ危険か

年商が同じでも、次で価値はまったく違います。

A社B社
年商2億円2億円
在庫健全(日齢短い)滞留が半分
査定できる人3名社長のみ
買取の広告依存低い高い
評価純資産+営業権純資産のみ、しかも在庫が減額

実際の目安を掴む方法

  1. 時価純資産を出す:在庫を実勢価格に置き換え、負債を引く
  2. 正常化後の利益を出す:役員報酬、個人経費、一時的損益を調整
  3. 営業権が付くかを判断する:社長依存、チャネルの再現性から
  4. 付くなら、利益の数年分を上乗せする

この計算をすれば、自社の目安が出ます。ネットの相場より、はるかに実態に近い数字です。

無料査定の数字も同じ

簡易査定は、限られた情報での概算です。在庫を実際に見ていない段階の数字は、あくまで出発点と考えてください。

高めの数字が出ることもありますが、買収監査で下がるのが通常です。

何を見るべきか

相場を探すより、次を整えるほうが価格に直結します。

  • 在庫の日齢を短くする
  • 実売データを蓄積する
  • 査定基準を文書化する
  • 買取チャネルを分散する

公開されている数字の限界

参考にはなりますが、そのまま当てはめられない理由があります。

  • 成約した案件だけが集計される — 不成立の案件は含まれません
  • 業種の分類が粗い — 「小売業」の平均は、リユース業を表しません
  • 規模の幅が大きい — 数億円と数千万円では、構造が違います
  • 条件が反映されていない — 支払い方法、残留期間、補償の範囲
  • 在庫の扱いが見えない — 除外されているのか、含まれているのか

5番目がリユース業では決定的です。在庫を含む譲渡と、在庫を別建てにした譲渡では、表示される金額がまったく違います。公表されている数字がどちらなのか分からないまま比較しても、意味がありません。

自社の水準を把握する方法

相場の数字を探すより、確実な方法があります。

  1. 時価純資産を自分で試算する — 在庫を実勢価格に置き換えます
  2. 正常化後の利益を出す — 役員報酬と個人経費を調整します
  3. 年買法の考え方で幅を出す — 年数を複数置いて、幅として捉えます
  4. 複数の専門家に見立てを聞く — 前提とあわせて確認します
  5. 実際に候補と話す — 最終的には、提示を受けて初めて分かります

3番目のように、幅で捉えることが実務的です。単一の数字を期待すると、それを下回る提示を受けたときに感情的になります。前提によって金額が変わることを理解したうえで、幅の中で交渉してください。試算は税理士にご相談ください。

数字より確認すべきこと

相場を調べる時間があるなら、別のことに使ってください。

  • 自社の弱点を把握する — 買い手が減点する要素です
  • 改善できる項目を特定する — 在庫、記録、属人性
  • 改善に要する期間を見積もる
  • 準備の順序を決める
  • 専門家を確保する

相場を知っても、自社の価格は変わりません。変えられるのは、自社の状態だけです。「いくらで売れるか」を調べる時間を、「いくらで売れる状態を作るか」に使うほうが、確実に手取りが増えます。相場の数字は、準備が整った段階で、専門家の見立てとして聞けば十分です。

まとめ

「年商の◯%」はリユース業には当てはまりません。会社ごとのばらつきが大きすぎるためです。

時価純資産と正常化後の利益から、自社の目安を計算してみてください。