そもそも「償却前利益の何倍」とは

EBITDAとは、ざっくり言えば本業で生み出している現金の量です。営業利益に減価償却費を足して求めます。

買い手は、この現金が何年分あれば投資を回収できるかを考えます。「◯倍」というのは、その回収年数の目安と考えると理解しやすくなります。

注意したいのは、この計算に使う利益が調整後の数字である点です。社長個人の経費、相場の適正な賃料との差、一時的な損益。これらを正常化した後の利益が基礎になります。決算書の数字がそのまま使われるわけではありません。

リユース業で倍率が低く出る理由

他業種と比べて、リユース業は倍率が控えめになりやすい傾向があります。理由は3つです。

  • 在庫リスク:買った後に相場が下がれば損が出ます。継続性が読みにくい
  • 社長依存:値付けの精度が個人に紐づいていると、引き継いだ後の利益が保証されません
  • 仕入れの不安定さ:買取は待ちの商売です。持ち込みが減れば売上も減ります

この3つは、いずれも引き継いだ後の利益が読めるかどうかという一点に集約されます。倍率が控えめなのは業種そのものの評価ではなく、再現性への不安の表れです。不安を減らせば倍率は動きます。

倍率を上げる要素

逆に、次が揃っていると評価は上がります。

  • 在庫回転が速く、日齢が管理されている
  • 社長以外が値付けできる。基準が文書になっている
  • 買取が広告依存でなく、リピートや法人取引で回っている
  • 販路が複数ある(店頭・EC・業者間市場)
  • 月次で数字が出る。カテゴリ別の粗利が見える
  • 古物台帳と本人確認記録が整っている

並べてみると分かるとおり、「社長がいなくても同じ利益が出るか」という一点に集約されます。

この6つのうち、短期で示せるのは月次決算と記録の整備です。在庫回転と査定の仕組み化は年単位かかりますが、効果も大きくなります。残り期間に応じて、どこに力を入れるかを決めてください。

利益の質も見られる

同じ利益額でも、中身によって見方が変わります。

たとえば、たまたま高額品が一つ売れて出た利益と、毎月安定して積み上がっている利益では、後者のほうが評価されます。買い手は来期も同じ利益が出るかを見ています。

一時的な要因は、あらかじめ自分から説明しておくのが得策です。隠していると、後で発見されて信用を失います。

説明のしかたとしては、3期分の月次推移を並べるのが有効です。毎月の粗利が安定していればそれ自体が根拠になりますし、波があるならその理由を先に説明できることが信用につながります。

在庫は倍率とは別に効く

注意したいのは、リユース業の評価が倍率だけで決まらないことです。多くの場合、時価純資産に営業権を乗せる考え方が使われます。

つまり、在庫を含む純資産の評価が土台にあり、そこに利益の何年分かが上乗せされる。在庫の質が悪ければ土台が削られ、社長依存が強ければ上乗せが薄くなる、という構造です。

つまり、在庫の整理は土台を守る施策であり、査定の仕組み化は上乗せを増やす施策です。性格の違う2つを並行して進める必要があります。どちらか一方では、評価の片側しか動きません。

いま何をすべきか

倍率を意識するより、次の2つを進めるほうが確実です。

  1. 在庫の日齢を管理し、滞留を落とす(土台を守る)
  2. 査定基準を文書にし、社長以外が値付けできるようにする(上乗せを増やす)

この2つは、いずれも今日から着手できます。日齢の記録を始めるのも、ベテランの査定を書き取るのも、特別な投資は要りません。着手が早ければ早いほど、評価に反映される時間が長く取れます。

倍率という言葉に振り回されないために

「同業が◯倍で売れたらしい」という話はよく耳に入ります。ただ、その数字をそのまま自社に当てはめるのは危険です。次の点が違えば、倍率は変わります。

  • 会社の規模 — 利益の絶対額が大きいほど倍率も高くなる傾向があります
  • 在庫の質 — 同じ利益でも、滞留在庫の多寡で土台の評価が変わります
  • 社長依存の度合い — 引き継いだ後の再現性が上乗せの厚みを決めます
  • 買い手の事情 — その商圏に出店したい相手なら高く出ます。相手次第で変わる部分です
  • 取引の時期 — 業界の動きや金利の環境で水準は動きます

聞いた数字を目標にするのではなく、自社の何が評価を下げているかを特定するほうが確実です。在庫と属人性のどちらが重いかは、会社によって違います。

まとめ

倍率は結果であって、目標にするものではありません。動かせるのは、在庫の質と社長依存の度合いです。

この2つに手を入れれば、倍率でも純資産でも評価は上がります。まず日齢分布を出すところから始めてください。

倍率の数字を気にするより、自社の在庫日齢と査定の属人度合いを把握するほうが先です。その2つが分かれば、何を直せば評価が動くかが具体的に見えてきます。