簡易査定の性質

限られた情報(決算書数期分程度)で算出される概算です。次を理解しておいてください。

  • 在庫の実態を見ていない
  • 社長依存の度合いを把握していない
  • 労務や許認可のリスクを織り込んでいない
  • 買収監査で下がるのが通常

出発点であって、成約価格ではありません。

リユース業では特にずれやすい

決算書の棚卸資産をそのまま純資産に算入すると、実態より高い数字が出ます。

滞留在庫が多い会社ほど、簡易査定と実際の評価の差が大きくなります。

簡易査定の数字を見るとき、「在庫をどう扱っているか」を必ず確認してください。

高い数字が出る理由

次のような事情があることも、頭に入れておいてください。

  • 依頼を獲得するため、期待させる数字を出すことがある
  • 在庫を簿価で計算している
  • 正常化の調整をしていない、または楽観的
  • リスクを織り込んでいない

「思ったより高い」と感じたら、算定の前提を聞いてください。

複数取る意味

1社だけでは判断できません。3社程度から取って比べてください。

  • 数字のばらつきが分かる
  • 算定の前提の違いが見える
  • 各社の業界理解の程度が分かる

算定の過程を説明できる会社が、信頼できる会社です。

確認すべき質問

  1. 「在庫はどう評価されましたか」
  2. 「日齢別に見ていただけましたか」
  3. 「正常化の調整は、どの項目を入れましたか」
  4. 「社長依存はどう評価されましたか」
  5. 「買収監査で下がる可能性はありますか」

これらに具体的に答えられるかで、その数字の信頼度が分かります。

活用のしかた

  • おおよその桁を知る:数千万円か、億単位か
  • 準備すべきことを知る:どこが評価を下げているか
  • 担当者の実力を測る:業界理解の確認
  • 家族との話し合いの材料にする

数字より大事なこと

簡易査定で最も価値があるのは、「何をすれば上がるか」の助言です。

「在庫の日齢を短くすれば◯円上がる」「査定基準を作れば上乗せが付く」。こうした指摘をくれる相手なら、その関係を続ける価値があります。

簡易査定の前提を確認する

数字を受け取ったら、どう計算されたかを確認してください。

  1. どの算定方法を使ったか — 年買法か、他の方法かです
  2. 在庫をどう評価したか — 簿価のままか、掛け率を当てたかです
  3. 利益は調整後か、決算書のままか
  4. 年数は何を根拠に置いたか
  5. 簿外の債務を考慮しているか
  6. その金額で成約した実績があるか

2番目が、リユース業での最大のずれの原因です。在庫を簿価のまま資産として計算していれば、実勢より高い数字が出ます。滞留在庫が多い会社ほど、この差が大きくなります。必ず確認してください。

高い数字が出る構造を理解する

簡易査定は、事業を獲得するための入口として提供されることがあります。

  • 限られた情報で算定される — 決算書の数字だけでは、在庫の質は分かりません
  • 買収監査を経ていない — 簿外の債務や在庫の実態は反映されていません
  • 条件が織り込まれていない — 残留期間、支払い方法、表明保証の範囲は考慮されません
  • 成約価格ではない — 提示額と成約額には、差が生じるのが通例です

数字の大小で依頼先を選ばないでください。高い数字を示した先が、その金額で成約させられるとは限りません。判断の材料にすべきは、算定の前提を説明できるか、業種の実態を理解しているか、過去の実績はどうかという点です。

査定を情報収集の機会として使う

金額そのものより、対話から得られるものがあります。

  • 自社の弱点を聞く — 「どこを直せば評価が上がりますか」という質問です
  • 想定される買い手を聞く — 同業か、異業種か、投資会社か
  • 期間の見通しを聞く — 成約までにどれくらいかかるかです
  • 費用の体系を確認する — 着手金、中間金、成功報酬の有無と水準です
  • 類似案件の実績を聞く — リユース業の取扱経験があるかです
  • 複数社に同じ質問をする

1番目の回答が、最も価値があります。価格を上げるために何をすべきかが分かれば、譲渡までの期間を使って改善できます。査定額を聞くだけで終わらせず、改善点を引き出す場として使ってください。

まとめ

簡易査定は出発点です。在庫を簿価で計算していると、実際より高く出ます。

3社程度から取り、算定の前提を確認してください。「何をすれば上がるか」の助言が最も価値があります。