基本合意とは

最終契約の前に、価格と主要な条件について大枠の合意を交わすものです。多くの場合、価格の部分に法的拘束力はありません。

そのため「あくまで目安」と軽く扱われがちですが、リユース業では、ここで在庫の話を詰めておく価値があります。

なぜ在庫を先に決めるのか

買収監査の後に減額を打診される最大の理由が、在庫評価の見解の相違だからです。

「簿価3,000万円の在庫」を、売り手は2,700万円と考え、買い手は1,500万円と見る。この差が、基本合意の後に表面化すると、交渉が振り出しに戻ります。

盛り込むべき在庫の項目

  1. 在庫の評価方法:簿価か、日齢別の掛け率か、実売実績にもとづくか
  2. 日齢の区分と掛け率の考え方:どの区分をどう評価するか
  3. 実地棚卸の実施時期と方法:いつ、誰が、どう数えるか
  4. 棚卸差異が出た場合の扱い:一定範囲までは価格に反映しない、など
  5. 預かり品・委託品の扱い:譲渡対象から除く旨
  6. 基準日:いつ時点の在庫を対象とするか

その他に決めておく項目

  • 譲渡の方式(株式譲渡か事業譲渡か)
  • おおよその譲渡価格と、その算定の考え方
  • 買収監査の範囲と時期
  • 従業員の雇用に関する方針
  • 売主の引き継ぎ関与の期間
  • 最終契約の目標時期

独占交渉権

基本合意では、一定期間、他の候補と交渉しないことを約束するのが通常です。

  • 期間を確認する(長すぎると、他の選択肢を失います)
  • 期間内に成立しなかった場合の扱いを決める
  • この条項には法的拘束力があるのが一般的です

独占交渉に入る前に、複数の候補を比べ終えておいてください。

注意点

  • 基本合意の価格は上限になりやすい(そこから上がることは稀)
  • だからこそ、不確定な要素を残したまま合意しない
  • 在庫の見解が大きく違うなら、合意前に擦り合わせる
  • 法的拘束力のある条項とない条項を、必ず確認する

在庫の評価方法を先に決める

基本合意の段階で、在庫の扱いを詰めておくと後の紛糾を避けられます。

  1. 評価の基準日 — いつ時点の在庫を対象とするかです
  2. 評価の方法 — 簿価か、日齢別の掛け率か、実勢価格か
  3. 掛け率を使う場合の区分 — 日齢とカテゴリの分け方です
  4. 棚卸の実施方法 — 誰が、いつ、どの範囲で行うかです
  5. 差異が生じた場合の調整方法
  6. 基準日から引き渡しまでの変動の扱い

6番目が実務上の要点です。在庫は日々動くため、基準日と引き渡し日の間で必ず変動します。増減をどう精算するかを決めておかないと、直前に交渉が再燃します。方法については、M&Aの専門家にご相談ください。

独占交渉権の条件

買い手から求められるのが通例ですが、条件は交渉できます。

  • 期間を限定する — 2〜3か月程度が一般的な範囲です
  • 延長の条件を定める — 自動延長にしないでください
  • 買い手の義務を定める — 監査の実施時期など、進行の約束を入れます
  • 解除の条件を定める — 買い手が進めない場合に解除できる形にします
  • 違反した場合の効果を確認する

3番目と4番目を入れておくことが重要です。独占交渉権だけを取得して、その後の作業が進まないという事態を防げます。期間中は他の候補と話せないため、時間の損失が大きくなります。条項の設計は、弁護士にご相談ください。

法的拘束力の範囲を確認する

基本合意のどの部分が拘束力を持つかは、書面の記載によります。

  • 価格や条件は、拘束力を持たないのが通例 — 監査の結果によって変わる前提です
  • 独占交渉権は、拘束力を持つ形が多い
  • 秘密保持も拘束力を持つ
  • 費用負担の定めも確認する
  • どの条項が拘束力を持つかを、書面上で明示する

5番目の確認を必ず行ってください。どこまでが法的な義務なのかが曖昧なまま署名すると、後で認識のずれが生じます。拘束力を持つ条項と持たない条項を明示した書面にしてもらい、弁護士に確認してもらってください。基本合意は「仮の約束」ではなく、一部は正式な契約です。

まとめ

基本合意では、在庫の評価方法・棚卸の方法・差異の扱いまで決めてください。後の減額交渉を大きく減らせます。

そして独占交渉に入る前に、複数候補の比較を終えておきましょう。