減額の主な理由
- 在庫の評価が想定と違った:最も多い
- 棚卸差異が出た
- 簿外在庫・簿外債務が見つかった
- 未払残業などの労務リスク
- 許認可の不備
- 契約上のリスク(賃貸借の条項など)
- 単に価格を下げたいだけ
応じるべき場合
次に該当するなら、応じるのが合理的です。
- こちらが把握していなかった事実が出てきた:簿外債務、未払残業
- 客観的に算定できる金額:社会保険の未加入分など
- 指摘が正しく、是正に費用がかかる
この場合、争っても勝てません。速やかに応じて、他の条件で調整するほうが得策です。
押し返せる場合
次は、見立ての違いにすぎません。データで反論してください。
- 「この在庫は動かないだろう」という予測→ 実売実績で反論
- 「社長が抜けたら利益が出ない」→ 査定基準と複数の査定担当で反論
- 「買取が広告依存だ」→ チャネル別データで反論
- 根拠が示されない一方的な減額→ 根拠の提示を求める
交渉の進め方
- 減額の根拠を、項目別に書面で出してもらう
- 項目ごとに、応じる・押し返すを判断する
- 押し返す項目には、データを添えて反論する
- 応じる項目については、他の条件での調整を求める(保証の範囲、関与期間など)
- 全体としての着地点を探る
1番目が重要です。「総額で◯円下げたい」という話には応じず、内訳を求めてください。
価格以外での調整
価格を下げる代わりに、次を得るという交渉もできます。
- 表明保証の範囲を狭める
- 補償の上限額を下げる
- 請求できる期間を短くする
- 代金の留保をなくす
- 引き継ぎ関与の期間を短くする、または報酬を上げる
- 個人保証の解除時期を早める
手取りと安心の総和で判断してください。
断るという選択
減額幅が大きすぎる場合、断ることもできます。次を確認してください。
- 独占交渉期間が残っているか
- 他の候補がいるか
- 断った場合の費用負担(契約書を確認)
- 時間的な余裕があるか
予防が最善
減額の多くは、準備不足から生じます。
- 自社で先に棚卸をして、差異を潰す
- 労務と許認可を先に是正する
- 不利な事実は先に開示する
- 基本合意で在庫の評価方法を決めておく
指摘の内容を分類する
減額の打診を受けたら、まず内容を分けて考えてください。
- 事実として認めざるを得ないもの — 在庫の評価、簿外の債務、未払いの労務費など
- 評価方法の違いによるもの — 掛け率や算定の前提が異なる場合です
- 将来の見込みに関するもの — 相場の見通しなど、確定していない事項です
- すでに開示済みだったもの — 交渉の材料として持ち出されている可能性があります
- 金額の根拠が示されていないもの
4番目は押し返せる場合が多い項目です。基本合意の前に開示し、相手が了解していた事項であれば、それを理由とした減額には応じる必要がありません。開示の記録を残しておくことが、この局面で効きます。
価格以外での調整を提案する
金額を下げる以外の解決方法があります。
- 表明保証の範囲を限定する — 指摘された事項を除外し、その分を価格に反映しない形です
- 補償の上限を設定する — 責任の範囲を金額で区切ります
- 支払いを分割し、条件を付ける — 一定期間後に問題が生じなければ支払う形です
- 特定の資産を譲渡対象から外す — 問題のある在庫や資産を、売り手が引き取ります
- 売り手側で先に処理する — 実行前に是正し、指摘の前提をなくします
4番目と5番目は、リユース業で有効な場合があります。指摘の対象が特定の滞留在庫であれば、それを対象外にするか、実行前に処分してしまえば論点自体が消えます。金額の応酬になる前に、この選択肢を提案してみてください。
予防のためにできること
減額交渉の多くは、事前の準備で回避できます。
- 自社で監査に相当する点検を行う — 買い手の視点で、事前に洗い出します
- 指摘されそうな項目を先に開示する — 基本合意の前が望ましい形です
- 在庫の評価を保守的に置く — 甘い評価は、必ず修正を求められます
- 簿外の債務を洗い出す — 未払残業、退職金、保証債務などです
- 資料の整合を確認する — 提出した資料の間で数字が食い違うと、全体が疑われます
3番目が最も効果的な予防策です。在庫を実勢に近い水準で評価して提示していれば、監査での修正幅が小さくなります。高く見せて後から下げられるより、最初から現実的な数字を示すほうが、結果として交渉が安定します。点検の方法については、M&Aの専門家にご相談ください。
まとめ
減額の根拠を項目別に出してもらい、応じる・押し返すを個別に判断してください。
見立ての違いには実売データで反論を。応じる場合は、価格以外の条件で調整を求めましょう。