不招請勧誘の禁止
訪問購入では、売主から求められていないのに訪問して勧誘することが禁じられています。いわゆる飛び込み営業はできません。
これは、高齢者宅を回って貴金属を安く買い集めるといった行為が問題になった経緯から設けられたものです。業界全体の信用に関わる規制だと理解してください。
この経緯を現場に伝えておくことには意味があります。規制の背景が分かると、守る意味も理解されます。「決まりだから」という説明では忙しいときに省略されます。
「求められた」といえる範囲
実務で判断に迷うのはここです。次のような場面があります。
- お客様から電話やウェブで買取を依頼された → 求められている
- チラシを見て問い合わせがあり、訪問した → 求められている
- 「近くまで来たので寄りました」 → 求められていない
- 過去に取引があるからと、連絡なしに訪問した → 求められていない
判断が難しい場合は、依頼の記録が残っているかを基準にしてください。電話やフォームの履歴があれば説明できます。
依頼の記録を基準にするという考え方が実務では最も確実です。電話、フォーム、来店。どの経路でも依頼を受けた日時と内容を記録に残す運用にしておけば、後から説明できます。
依頼された品目以外への勧誘
もう一つの論点です。「不要な食器を見てほしい」と依頼されて訪問し、その場で貴金属の売却を勧める。こうした行為には制限があります。
実務としては、次のルールを置くのが安全です。
- 訪問前に、査定する品目を確認して記録する
- 現場で他の品目の話が出た場合は、お客様から申し出があったことを記録する
- こちらから品目を広げる勧誘はしない
2番目の記録が現場を守ります。お客様から「これも見てもらえますか」と申し出があった場合は、その事実を書き残してください。記録がなければ後から区別がつきません。
再勧誘の禁止
売らないという意思を示された相手に、重ねて勧誘することも制限されます。断られたら引く。これを現場のルールにしてください。
担当者の評価を訪問件数や成約率だけで見ていると、粘る動きが生まれます。評価制度の設計が、法令遵守に直結します。
評価制度が法令遵守に直結するという点は見落とされがちです。訪問件数と成約率だけを追っていれば、粘る動きが構造的に生まれます。適正な手続きを評価に含めてください。
書面の交付と記録
契約時には、定められた事項を記載した書面の交付が必要です。あわせて、次を記録に残してください。
- 依頼を受けた日時と方法(電話・フォーム・来店)
- 依頼された品目
- 訪問日時と担当者
- 実際に査定した品目と、それがどう決まったか
- 交付した書面の控え
この5つは、訪問1件ごとの記録として1枚にまとめておくと管理しやすくなります。依頼から訪問、査定、書面交付までが一連で辿れる形にしてください。
現場に落とす
担当者が判断できるよう、次を用意してください。
- 訪問前チェックリスト(依頼の記録、品目、持参する書面)
- やってよいこと・いけないことの一覧(1枚に収める)
- 迷ったときの連絡先
- 評価指標に「適正な手続き」を含める
2番目の一覧は、1枚に収めることが大切です。複数ページの手順書は現場で読まれません。やってよいこと・いけないことを短く並べた紙を持ち出しセットに入れてください。
訪問前チェックリストの中身
1枚に収まる形で次を並べておいてください。出発前に確認する習慣がつけば、手続きの漏れはほぼなくなります。
- 依頼の記録があるか — 誰から、いつ、どの経路で。これが手続きの前提です
- 査定する品目 — 依頼された品目を事前に確認して書いておきます。現場で広げないための備えです
- 持参する書面 — 訪問購入用の様式、行商従業者証、預かり証
- 本人確認の方法 — 現場で何をどう確認するか。手順書を携帯します
- 査定の上限額と決裁者 — 現場で判断できる範囲と、超える場合の連絡先
- やってよいこと・いけないこと — 依頼外品目への勧誘、断られた後の再勧誘。短く並べておきます
- 持ち帰る場合の扱い — 期間中は販売できないことを担当者が理解しているか
このリストは、担当者を縛るためのものではありません。判断に迷う場面で一人で抱えずに済むようにするための道具です。そう伝えて配ってください。
まとめ
訪問購入では、求められていない訪問・勧誘、依頼外品目への勧誘、再勧誘に制限があります。
守る鍵は、依頼の記録を残すことと、件数だけで評価しないことです。訪問前チェックリストから整えてください。
訪問前チェックリストは今日作れます。依頼の記録、査定する品目、持参する書面。この3項目から始めてください。整え方についてはご相談いただけます。