この法律が扱う主な支援
- 遺留分に関する民法の特例
- 金融支援
- 事業承継税制の前提となる認定
- 所在不明株主に関する会社法の特例
制度の内容・要件・手続きは改正されることがあります。 最新の内容は中小企業庁の公表資料や、認定支援機関・都道府県の窓口で確認してください。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
1. 遺留分に関する民法の特例
何が問題なのか
後継者に自社株を集中させても、他の相続人から遺留分を請求される可能性があります。
- 自社株の評価が高いほど、請求額も大きい
- 後継者が現金で支払う必要が生じる
- 会社の資金では払えず、個人の負担になる
- これが承継を壊すことがある
相続人が複数いる場合の株の分け方をご覧ください。
特例の内容
推定相続人全員の合意を前提に、次のような取扱いを可能にする仕組みがあります。
- 除外合意:後継者が取得した自社株を、遺留分の算定から除外する
- 固定合意:自社株の価額を合意時点の評価で固定する(その後の価値上昇分を除ける)
固定合意は、業績が伸びている会社で意味を持ちます。 後継者の努力で価値が上がった分まで遺留分の対象になる、という不合理を避けられます。
手続き
- 推定相続人全員の合意が必要
- 経済産業大臣の確認
- 家庭裁判所の許可
全員の合意が前提である点が最大のハードルです。生前の話し合いが不可欠になります。家族への切り出し方をご覧ください。
2. 金融支援
承継に伴って資金が必要になる場面があります。
- 後継者が株式を買い取る資金:親族内承継、社内承継(社内承継の流れと資金調達)
- 相続税・贈与税の納税資金
- 他の相続人への代償金
- 会社の運転資金:承継に伴う信用不安への対応
- M&Aで事業を買い取る資金
都道府県知事の認定を受けることで、日本政策金融公庫等の融資や、信用保証の特例が利用できる場合があります。
認定には要件と手続きがあります。 取引金融機関または都道府県の窓口に相談してください。社内承継の資金調達方法をご覧ください。
3. 事業承継税制の前提となる認定
自社株にかかる相続税・贈与税の納税猶予を受けるには、この法律に基づく認定が前提になります。
- 事前の計画提出が必要な場合がある
- 認定後も報告義務がある
事業承継税制を運送業で使うときの注意をご覧ください。
4. 所在不明株主に関する特例
古い会社では、連絡が取れない株主がいることがあります。
- 設立時の名義株主が転居し、行方が分からない
- 相続が起きたが、相続人が判明しない
会社法には、一定期間連絡が取れない株主の株式を 所定の手続きで整理する仕組みがありますが、この法律により、その期間が短縮される特例が設けられています(要件と手続きがあります)。
M&Aでは、株主が確定できないと取引が進みません。 該当する場合は、早めに専門家に相談してください。名義株の整理をご覧ください。
運送業で特に意味を持つ場面
- 不動産の含み益で自社株評価が高い → 遺留分の特例、事業承継税制
- 後継者に株式を買い取る資金がない → 金融支援
- 古い会社で株主が不明 → 所在不明株主の特例
- 社内承継で幹部に資金がない → 金融支援
使うための準備
- 自社株の評価を把握する(自社株の評価方法の基本)
- 後継者を決める
- 推定相続人と話し合う:遺留分の特例には全員の合意が必要
- 認定支援機関に相談する:税理士、金融機関など
- 都道府県の窓口に確認する
- 期限を確認する:計画の提出期限がある場合があります
使わない判断もある
制度には要件と、使った後の縛りがあります。
- 将来M&Aの可能性があるなら、税制の適用は慎重に
- 手続きと報告の負担が見合うか
- 他の方法(生前贈与、保険、譲渡)と比較する
制度を使うことが目的ではありません。 会社と後継者にとって最善かで判断してください。誰に相談すべきかをご覧ください。
まとめ
経営承継円滑化法は、遺留分の特例・金融支援・事業承継税制の認定・所在不明株主の特例という支援を用意しています。遺留分の特例には推定相続人全員の合意が必要で、生前の話し合いが前提になります。制度の内容は改正されるため、認定支援機関や都道府県の窓口で最新の内容を確認してください。