この法律が扱う主な支援

  1. 遺留分に関する民法の特例
  2. 金融支援
  3. 事業承継税制の前提となる認定
  4. 所在不明株主に関する会社法の特例

制度の内容・要件・手続きは改正されることがあります。 最新の内容は中小企業庁の公表資料や、認定支援機関・都道府県の窓口で確認してください。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。

1. 遺留分に関する民法の特例

何が問題なのか

後継者に自社株を集中させても、他の相続人から遺留分を請求される可能性があります。

  • 自社株の評価が高いほど、請求額も大きい
  • 後継者が現金で支払う必要が生じる
  • 会社の資金では払えず、個人の負担になる
  • これが承継を壊すことがある

相続人が複数いる場合の株の分け方をご覧ください。

特例の内容

推定相続人全員の合意を前提に、次のような取扱いを可能にする仕組みがあります。

  • 除外合意:後継者が取得した自社株を、遺留分の算定から除外する
  • 固定合意:自社株の価額を合意時点の評価で固定する(その後の価値上昇分を除ける

固定合意は、業績が伸びている会社で意味を持ちます。 後継者の努力で価値が上がった分まで遺留分の対象になる、という不合理を避けられます。

手続き

  • 推定相続人全員の合意が必要
  • 経済産業大臣の確認
  • 家庭裁判所の許可

全員の合意が前提である点が最大のハードルです。生前の話し合いが不可欠になります。家族への切り出し方をご覧ください。

2. 金融支援

承継に伴って資金が必要になる場面があります。

  • 後継者が株式を買い取る資金:親族内承継、社内承継(社内承継の流れと資金調達
  • 相続税・贈与税の納税資金
  • 他の相続人への代償金
  • 会社の運転資金:承継に伴う信用不安への対応
  • M&Aで事業を買い取る資金

都道府県知事の認定を受けることで、日本政策金融公庫等の融資や、信用保証の特例が利用できる場合があります。

認定には要件と手続きがあります。 取引金融機関または都道府県の窓口に相談してください。社内承継の資金調達方法をご覧ください。

3. 事業承継税制の前提となる認定

自社株にかかる相続税・贈与税の納税猶予を受けるには、この法律に基づく認定が前提になります。

  • 事前の計画提出が必要な場合がある
  • 認定後も報告義務がある

事業承継税制を運送業で使うときの注意をご覧ください。

4. 所在不明株主に関する特例

古い会社では、連絡が取れない株主がいることがあります。

  • 設立時の名義株主が転居し、行方が分からない
  • 相続が起きたが、相続人が判明しない

会社法には、一定期間連絡が取れない株主の株式を 所定の手続きで整理する仕組みがありますが、この法律により、その期間が短縮される特例が設けられています(要件と手続きがあります)。

M&Aでは、株主が確定できないと取引が進みません。 該当する場合は、早めに専門家に相談してください。名義株の整理をご覧ください。

運送業で特に意味を持つ場面

  • 不動産の含み益で自社株評価が高い → 遺留分の特例、事業承継税制
  • 後継者に株式を買い取る資金がない → 金融支援
  • 古い会社で株主が不明 → 所在不明株主の特例
  • 社内承継で幹部に資金がない → 金融支援

使うための準備

  1. 自社株の評価を把握する自社株の評価方法の基本
  2. 後継者を決める
  3. 推定相続人と話し合う:遺留分の特例には全員の合意が必要
  4. 認定支援機関に相談する:税理士、金融機関など
  5. 都道府県の窓口に確認する
  6. 期限を確認する:計画の提出期限がある場合があります

使わない判断もある

制度には要件と、使った後の縛りがあります。

  • 将来M&Aの可能性があるなら、税制の適用は慎重に
  • 手続きと報告の負担が見合うか
  • 他の方法(生前贈与、保険、譲渡)と比較する

制度を使うことが目的ではありません。 会社と後継者にとって最善かで判断してください。誰に相談すべきかをご覧ください。

まとめ

経営承継円滑化法は、遺留分の特例・金融支援・事業承継税制の認定・所在不明株主の特例という支援を用意しています。遺留分の特例には推定相続人全員の合意が必要で、生前の話し合いが前提になります。制度の内容は改正されるため、認定支援機関や都道府県の窓口で最新の内容を確認してください。