費用の全体像

項目内容
従業員の退職金規程がある場合。最も大きくなりやすい
未払賃金の清算残業代を含む
リース残債中途解約の違約金を含む
借入の返済資産の売却で足りるか
車庫・事務所の原状回復賃借の場合
車両の処分売却できれば収入。廃車なら費用
許可の廃止手続き行政書士への報酬など
清算の費用登記、税理士・司法書士への報酬
産業廃棄物の処理廃油、部品、事務用品

従業員の退職金

最も大きな費目になることが多い項目です。

  • 退職金規程がある場合、全員分の要支給額
  • 中退共などに加入していれば、そこから支給される部分
  • 規程がなくても、慣行として支給してきた実績があれば検討が必要

まず要支給額を計算してください。退職給付の見積りと価格調整をご覧ください。

未払賃金の清算

労働時間の記録と賃金台帳にずれがある場合、廃業時に清算を求められることがあります。

従業員が退職後に請求してくるケースもあります。廃業前に労務の状態を確認してください。未払残業代の整理の進め方をご覧ください。

リース残債

見落とされやすく、金額も大きい項目です。

  • リースは中途解約できないのが原則
  • 解約する場合、残リース料相当額の支払いが生じることがある
  • 台数が多いほど金額が膨らむ

全リース契約の残債と満了時期を一覧にしてください。 満了を待って廃業するほうが有利な場合があります。リース残債が価格に与える影響をご覧ください。

借入の返済

資産を売却して返済に充てます。

  • 車両の売却代金
  • 不動産の売却代金
  • 売掛金の回収
  • 保険の解約返戻金

売却額が借入を下回る場合、差額をどうするかが問題になります。個人保証があれば、社長個人に請求が及びます。経営者保証は外せるかをご覧ください。

車庫・事務所の原状回復

賃借している場合、契約に基づく原状回復が必要です。

  • 舗装、フェンス、看板の撤去
  • 建物の修繕
  • 敷金の返還額との差引き

契約書で原状回復の範囲を確認してください。長年使った車庫では、金額が大きくなることがあります。

車両の処分

売却できれば収入になりますが、次に注意してください。

  • 車齢が高いと、売却額はわずか
  • 特殊車両は買い手が限られる
  • 廃車には費用がかかる
  • 一斉に売ると、相場より安くなることがある

計画的に、時期を分散して処分するほうが有利です。車両の評価はどう決まるかをご覧ください。

許可の廃止手続き

運送事業を廃止する場合、届出が必要です。あわせて次の手続きが生じます。

  • 事業用自動車の登録の抹消・変更(黒ナンバーから白ナンバーへ)
  • 営業所・車庫に関する手続き
  • 運行管理者・整備管理者の解任届
  • 倉庫業・利用運送の登録がある場合、その廃止

手続きの種類と期限は個別に確認してください。行政書士に依頼する場合、その報酬もかかります。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。許認可の具体的な取扱い・必要書類・審査期間は、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄の運輸支局等および専門家にご確認ください。

清算の費用

法人を解散・清算する場合、次がかかります。

  • 解散・清算結了の登記(登録免許税、司法書士報酬)
  • 官報公告の費用
  • 清算に関する税務申告(税理士報酬)
  • 清算所得への課税が生じることがある

税務の取扱いは個別に確認してください。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。

その他

  • 産業廃棄物の処理(廃油、バッテリー、部品)
  • 事務所の什器・書類の処分
  • 各種契約の解約違約金(通信、システム、保険)
  • 帳簿・書類の保存(廃業後も一定期間必要

費用を試算する

  1. 上の項目ごとに金額を出す
  2. 売却できる資産の見込額を出す
  3. 差引きでいくら必要か(または残るか)を計算する

この数字を、譲渡した場合の手取りと比較してください。判断材料になります。廃業と承継の比較会社を残すか畳むかをご覧ください。

資金が足りない場合

  • 時期を早める:資産があるうちに
  • リース満了を待つ:残債を減らす
  • 譲渡を検討する:買い手が負債ごと引き受ける形
  • 専門家に相談する:法的整理を含めて

「資産を食いつぶしてから廃業」が最悪です。退職金も払えず、保証だけが残ります。体力があるうちに判断してください。

順序

  1. 費用を試算する
  2. 資金の目処を確認する
  3. 時期を決める
  4. 従業員に伝える(再就職の時間を確保
  5. 荷主に伝える
  6. 車両・設備を処分する
  7. 許可の廃止手続き
  8. 清算

廃業の完全ガイドで全体の流れを整理しています。

退職金の要支給額を出す

まず要支給額を計算してくださいと書きました。計算の手順を示します。

まず、規程があるかを確認してください。就業規則または別の規程に、退職金の定めがあるか。あれば、その算定の方法に従って全員分を計算します。

そして、勤続年数と、算定の基礎になる賃金を確認してください。人数が多いほど、この作業に時間がかかります。

外部の制度に加入している場合は、そこから支給される部分を確認してください。会社が用意する額は、その差額になります。

規程がない場合も、過去に支給してきた実績があるなら、検討が必要です。慣行として定着していると評価される可能性があります。

そして、未消化の有給の扱いも確認してください。買い取りの定めがある場合、その分も加わります。

これらを合計すると、必要な額が出ます。多くの場合、想定より大きな数字になります。

リース残債を一覧にする

全リース契約の残債と満了時期を一覧にしてくださいと書きました。作り方を具体的にします。

まず、リースの契約書をすべて集めてください。車両だけでなく、フォークリフト、事務機器、通信の設備。忘れやすい契約があります。

そして、契約ごとに、残りの支払い回数と金額、満了の時期を書き出してください。

そのうえで、中途で解約した場合の扱いを確認してください。契約書に書かれていない場合は、リース会社に問い合わせてください。

この一覧を満了の時期順に並べると、いつ畳むのが費用の面で有利かが見えます。

そして、保証が付いているかも確認してください。会社が払えない場合、経営者個人に請求が及ぶことがあります。

この作業は数日で終わります。ただし、やらないまま進めると、想定外の負担が生じます。

車両の処分を計画する

時期を分散して処分するほうが有利ですと書きました。計画の立て方を示します。

まず、車両ごとに状態と年式を整理してください。売れるもの、売れないもの、費用をかけて処分するもの。この三つに分けます。

そして、売れるものについては、複数の業者から見積もりを取ってください。一社だけでは、条件が妥当か分かりません。

同業に売る道も探ってください。状態を理解したうえで買ってくれる場合、条件がよくなることがあります。ただし、廃業の情報が広がる点は考慮してください。

そして、処分の時期を分けてください。一度にまとめて出すと、相場より安くなることがあります。運行を縮小する計画に合わせて、順に手放してください。

特殊な車両については、買い手が限られます。早めに探し始めてください。

そして、廃車にする場合の費用も確認してください。売却の収入だけを見込んでいると、計算が合いません。

原状回復の範囲を確認する

長年使った車庫では金額が大きくなることがありますと書きました。確認の手順を示します。

まず、賃貸借の契約書を確認してください。原状回復の範囲がどう定められているか。すべてを元に戻す必要があるのか、通常の使用による劣化は除かれるのか。

そして、自社で設置したものを洗い出してください。舗装、フェンス、看板、照明、給油の設備。これらの撤去が必要かどうか。

建物についても、変更を加えている場合は確認が要ります。間仕切り、設備の増設。

そして、見積もりを取ってください。実際にいくらかかるかは、業者に見てもらわなければ分かりません。

敷金がある場合は、その額と相殺できるかも確認してください。ただし、足りない場合は追加の負担になります。

そして、貸主とも早めに話してください。原状回復の範囲について、合意しておくほうが安全です。後から争いになると、時間がかかります。

未払いの賃金と社会保険を洗い出す

退職金と別に、必ず確認しておきたいのが未払いの賃金です。締め日から廃業日までの働いた分、残業代の不足分、まだ取得していない有給休暇の扱い。この三つは、廃業を伝えた後で従業員から指摘されることが多く、その時点では交渉の余地がほとんどありません。先に自社で洗い出しておけば、想定外の支出になりません。

残業代については、これまでの支払い方が固定額だった場合、実際の労働時間で計算し直すとどうなるかを確かめておきます。デジタコや日報から実際の拘束時間を出し、支払ってきた額と突き合わせる。差が出るなら、それは廃業時に清算する必要のある金額です。金額の計算そのものは、社会保険労務士に依頼したほうが確実です。

社会保険と労働保険も、資格喪失の手続きと保険料の精算が残ります。月末をまたぐかどうかで負担が変わるため、廃業日を決めるときに合わせて確認しておくと、余計な負担を避けられることがあります。ここは年金事務所と労働局に日程を伝えて聞くのが早く、書面で確認しておくと後で揉めません。

借入が資産で返しきれない場合

車両と不動産を処分しても、借入の残りが消えない。この状態は、廃業を考える会社では珍しくありません。大事なのは、この状態を確認した時点ですぐ金融機関に相談することです。返済が遅れてから相談するのと、返済が続いているうちに相談するのとでは、話の進み方がまったく違います。

相談の前に、いくら足りないのかを数字で出しておきます。売却で入る見込み額、返済しなければならない残額、その差。この差額が、社長個人が背負う可能性のある金額です。個人保証がついていれば、会社を清算しても保証は残ります。だからこそ、この数字を先に把握する必要があります。

差額が大きい場合、返済条件の変更や、経営者保証に関するガイドラインを踏まえた話し合いといった道があります。どれが使えるかは、借入の内容と会社の状況によって変わるため、金融機関と、必要なら弁護士や中小企業診断士を交えて相談してください。ひとりで抱えたまま時間が経つと、選べる道は減っていきます。

試算した後に何を判断するか

費用を積み上げると、必要な現金の総額が見えます。ここで見るべきは、その額を今の手元資金と資産の売却でまかなえるかどうかです。まかなえるなら、廃業は選択肢として現実的です。まかなえないなら、廃業には準備期間が要るということになります。

準備期間が要るとわかった場合、やることは二つに分かれます。一つは、費用そのものを減らす工夫。リースを満了まで走らせる、車庫の契約更新に合わせて時期を選ぶ、といった調整です。もう一つは、廃業までの間に手元資金を厚くすること。採算の悪い荷主から順に整理し、残った運行で現金を作るという動き方になります。

この二つを組み合わせると、廃業できる時期が見えてきます。「いつでも畳める」でも「畳めない」でもなく、「準備してこの時期なら畳める」という答えになる。この答えが出ていること自体が、経営の余裕につながります。

資金が足りないときに手をつける順序

資金が不足する見込みなら、支払う順序をあらかじめ決めておきます。優先すべきは、従業員への賃金と退職金です。ここを後回しにすると、廃業の話を伝えた時点で人が一斉に抜け、残った運行が回らなくなります。運行が止まれば売上も止まり、状況はさらに悪くなります。

次に、取引先への支払いです。傭車先や整備工場への未払いを残したまま廃業すると、地域での評判に響き、同業からの協力も得にくくなります。廃業後に個人として何かを始める場合にも、この評判は効いてきます。

そのうえで、金融機関との返済をどう扱うかを話し合います。順序を自分で決めずに、資金が尽きるまま進むと、いちばん影響の大きいところが後回しになりがちです。順序を先に決めておけば、限られた資金をどこに充てるかで迷いません。

この順序づけは、一人で決めきれるものではありません。弁護士や、事業引継ぎ支援センターのような公的な相談窓口に、数字を持って早めに相談してください。相談が早いほど、選べる順序は多く残っています。

まとめ

廃業には、退職金・未払賃金・リース残債・借入返済・原状回復・許可廃止・清算費用がかかります。特にリース残債は見落とされやすく金額も大きい項目です。まず費用を試算し、譲渡した場合の手取りと比較してください。資産があるうちに判断することが、従業員を守ることにもつながります。