なぜ金額だけでは足りないのか
在庫金額が3,000万円という数字だけでは、良いのか悪いのか分かりません。売れ筋が3,000万円分あるのと、5年前の売れ残りが3,000万円あるのとでは、意味がまるで違います。
この違いを可視化するのが日齢です。入荷日からの経過日数で在庫を並べ直すだけで、問題の所在が見えます。
金額だけを追っていると、在庫を減らす取り組みも的を外します。総額を下げようとして売れ筋の仕入れを絞れば、売場が弱くなるだけです。減らすべきは滞留分であって、在庫全体ではありません。その区別をつけるのが日齢です。
区分の決め方
まずは次の5区分から始めるのが実用的です。
- 30日以内
- 31〜90日
- 91〜180日
- 181〜365日
- 365日超
細かくしすぎると運用が続きません。5区分で十分に判断できます。それぞれの金額と点数を月末に出してください。
金額と点数の両方を出してください。金額では小さく見えても点数が多ければ棚を占領していますし、点数が少なくても金額が大きければ資金を縛っています。どちらの問題なのかで、打つ手が変わります。
カテゴリごとに基準を変える
回転の速さは商材によって大きく違います。同じ日数で判断すると無理が出ます。
| 商材の性格 | 「滞留」とみなす目安 |
|---|---|
| 回転が速い(ゲーム・小型家電など) | 90日 |
| 標準的(衣料・雑貨など) | 180日 |
| 回転が遅い(家具・専門品など) | 365日 |
自店の実績から、カテゴリ別の平均回転日数を出し、その2倍あたりを目安に線を引くと現実的です。
基準を決めるときは、現場の実感とすり合わせてください。数字の上では滞留に見えても、季節が来れば動く商材があります。そうした例外は基準を変えるのではなく、例外として記録に残すほうが運用が崩れません。
個品管理が前提になる
日齢を取るには、1点ごとに入荷日を記録する必要があります。型番単位の管理では、同じ型番の商品がいつ入ったか区別できません。
リユース業では、そもそも同じ商品でも状態が違います。個品管理は日齢のためだけでなく、値付けの精度のためにも必要です。
とはいえ、既存在庫を遡って登録するのは負担が重すぎます。今日から仕入れるものを個品管理にし、古い在庫はおおよその時期で区分する。この線引きで始めれば、半年後には実用に足るデータがそろいます。
月次で見る形
毎月末に、次の表を1枚作ってください。
| 日齢区分 | 点数 | 金額 | 構成比 | 前月比 |
|---|---|---|---|---|
| 30日以内 | ||||
| 31〜90日 | ||||
| 91〜180日 | ||||
| 181〜365日 | ||||
| 365日超 |
見るべきは構成比の推移です。181日超の比率が上がり続けているなら、出口の手当てが足りていません。
この表は、会議で配る資料として1枚に収めてください。複数ページになると読まれません。見る場が固定されていることが運用の生死を分けます。毎月の会議に議題として置いてください。
データを行動につなげる
表を作っただけでは在庫は減りません。日齢が一定の区分に入ったら自動的に次のアクションに進む、というルールとセットにしてください。
値下げ、販路の変更、業者間市場への出品。あらかじめ決めておけば、担当者が判断に迷うこともなくなります。
ルールを作ったら、対象を自動で抽出できる形にしてください。該当する商品を探す手間があると、忙しい月に飛ばされます。探さなくても一覧が出る状態が、続けるための条件です。
日齢を見ると何が変わるか
日齢の分布が出るようになると、社内の会話が具体的になります。実際に変わるのは次の点です。
- 会議の言葉が変わる — 「なんとなく在庫が多い」から「181日超が前月比で◯%減った」へ。数字で話せると打ち手が決まります
- 値下げの判断が軽くなる — 個人の目利きの問題ではなく、期限が来たという事実になります
- 仕入れの基準が見直せる — 滞留しやすいカテゴリが分かれば、買取上限を調整できます
- 資金繰りの見通しが立つ — 回転日数が分かれば、必要な運転資金も計算できます
- 外部への説明ができる — 金融機関にも買い手にも、管理できている会社として伝わります
最後の項目は、承継や譲渡の場面で大きく効きます。在庫の実態を数字で語れる会社は、それだけで評価が変わります。
始め方
システムがなくても始められます。
- 今日から入荷するものに、入荷日を記録する
- 既存在庫は、おおよその入荷時期で3区分程度に分ける
- 1か月後、最初の分布表を作る
- 3か月続けてから、システム導入を検討する
手作業で回してみると、何を自動化すべきかが分かります。先にシステムを入れると、たいてい使われません。
手作業の期間を経ることには、もうひとつ意味があります。自店にとって本当に必要な項目が分かるのです。先にシステムを入れると、使わない機能に合わせた運用になり、入力が続きません。
まとめ
日齢管理は、在庫を金額ではなく時間で見る方法です。区分は5つ、カテゴリごとに基準を変える。これだけで始められます。
今日入荷する商品に日付を書くところから始めてください。3か月後には判断が変わっています。
今日入荷する商品に日付を書く。それだけで始まります。3か月で最初の傾向が見え、半年で判断の材料になります。始め方についてはご相談いただけます。