3つの選択

  1. 不動産ごと譲る:会社が所有している場合、株式譲渡なら自動的にこの形
  2. 不動産を残し、賃貸する:譲渡前に会社から分離しておく
  3. 不動産を別途売却する:事業は事業、不動産は不動産で

不動産ごと譲る

利点

  • 手続きが簡単(株式譲渡ならそのまま)
  • 一度に現金化できる
  • 買い手にとって、家賃負担がないため収益性が良く見える

課題

  • 買い手の資金負担が大きくなり、候補が絞られる
  • 不動産の評価が、事業の評価と混ざる
  • その後の家賃収入がなくなる

不動産を残して賃貸する

利点

  • 引退後の安定収入になる
  • 買い手の資金負担が減り、候補が広がる
  • 事業の価値と不動産の価値を分けて評価できる

課題

  • 会社から不動産を分離する手続きが必要(税務上の論点あり)
  • 賃貸借契約を新たに結ぶ必要がある
  • 買い手が退去した場合、次のテナントを探すリスク
  • 建物の維持管理の責任が残る

買い手の見方

買い手によって好みが分かれます。

  • 資金力のある同業:不動産ごと欲しい(家賃が不要になる)
  • 資金を抑えたい買い手:賃貸のほうが良い
  • ファンド:不動産を切り離すことを求めることが多い

両方の選択肢を示せると、候補が広がります。

賃貸にする場合の設計

  • 賃料を相場水準にする:高すぎても安すぎても、評価に影響します
  • 契約期間を長めにする:買い手の安心材料になります
  • 修繕の責任分担を明確にする
  • 買い手が退去した場合の条件
  • 将来の買い取り選択権を設けることも

税務の論点

会社から不動産を分離する場合、次が生じ得ます。

  • 会社に譲渡益が出れば、法人税の対象
  • 個人が買い取る場合、その資金が必要
  • 登録免許税、不動産取得税
  • 賃料収入への課税

必ず税理士に試算してもらってから決めてください。手取りが大きく変わります。

3つの選択肢を金額で比べる

どの形が有利かは、試算しないと分かりません。

  1. 不動産ごと譲る場合の手取りを試算する — 譲渡に伴う課税を含めます
  2. 賃貸を続ける場合の収入を試算する — 年間賃料から、固定資産税と維持費を引きます
  3. それぞれの税負担を確認する — 一時の課税か、毎年の所得かで異なります
  4. 賃貸の場合の空室リスクを見込む — 買い手が退去する可能性です
  5. 建物の維持費・修繕費を見込む
  6. 相続時の扱いも検討する

いずれの選択も税務上の判断を伴います。必ず税理士にご相談ください。譲渡所得の計算、賃貸収入の課税、相続時の評価は、それぞれ扱いが異なります。試算を経てから判断してください。

賃貸を選ぶ場合の設計

継続的な収入になる一方、条件の整備が必要です。

  • 賃料を相場水準にする — 譲渡の前に是正しておきます
  • 契約期間を明確にする — 買い手にとって、事業継続の前提です
  • 更新の条件を定める
  • 修繕の負担区分を定める — 建物の維持費を誰が負担するかです
  • 中途解約の条件を定める — 買い手が撤退した場合の備えです
  • 賃料の改定条項を入れる

5番目を必ず入れてください。買い手が事業を縮小したり撤退したりする可能性があります。その場合の予告期間と原状回復の範囲を定めておかないと、突然の空室に直面します。契約書の作成は、弁護士に依頼してください。

買い手の見方を理解する

不動産を含めるかどうかは、買い手にとっても判断が分かれます。

  • 不動産を含めると、必要資金が大きくなる — 候補が絞られます
  • 賃貸のほうが、初期の負担が軽い
  • 一方、賃料は固定費として継続する
  • 立地が事業の要なら、所有を望む買い手もいる — 賃貸では、将来の不確実性が残ります
  • 金融機関の評価にも影響する — 不動産は担保になります

両方の選択肢を提示できる形が最も柔軟です。「不動産込み」と「賃貸」の両方の条件を用意しておけば、買い手の資金状況に応じて選んでもらえます。候補の数を増やす効果もあります。それぞれの条件を事前に試算しておいてください。

まとめ

不動産ごと譲るか、残して賃貸するか。買い手の資金力と、引退後の収入をどうするかで判断してください。

両方の選択肢を示せると候補が広がります。分離する場合は税務の試算を必ず。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。