よくある2つのパターン
- 賃料が相場より高い:役員報酬の代わりに設定している
- 賃料が相場より安い、または無償:会社の負担を軽くしている
どちらも、会社の利益が実態を映していないという点で同じ問題です。
賃料が高い場合の影響
会社の利益が実際より少なく見えます。
正常化では、相場との差額を利益に戻します。これは売り手にとって有利な調整です。ただし根拠が必要です。
賃料が安い場合の影響
会社の利益が実際より多く見えます。
正常化では、相場との差額を利益から差し引きます。売り手にとって不利ですが、これを示さないと信頼を失います。
とくに無償で使っている場合、承継後は賃料が発生します。買い手はその分を必ず織り込みます。
相場の確かめ方
- 近隣の類似物件の募集賃料を調べる
- 不動産業者に査定してもらう
- 面積・立地・築年数が近い事例と比べる
資料として残しておくと、正常化の根拠として使えます。
承継時の選択肢
- 賃貸を継続する:社長が引き続き所有し、買い手に貸す
- 不動産も売却する:会社または買い手に売る
- 譲渡前に会社が買い取る:不動産ごと譲渡する形にする
賃貸を継続する場合
引退後の安定収入になります。ただし次を整えてください。
- 賃料を相場水準にする:譲渡前に見直しておく
- 賃貸借契約を書面にする:口約束なら必ず作成
- 契約期間を長めにする:買い手の安心材料
- 修繕の責任分担を明確にする
- 買い手が退去した場合の想定
契約書がないまま譲渡すると、買い手は不安になります。
注意点
- 賃料の変更は、税務上の論点になることがあります(税理士に確認)
- 相場から著しくずれた賃料は、税務上の問題を招く可能性があります
- 譲渡直前の変更は、意図を疑われることがあります
- 買い手にとって、賃料は毎年の固定費です。高すぎれば価格交渉の材料になります
相場を確かめる方法
賃料が適正かどうかは、根拠をもって示す必要があります。
- 近隣の募集事例を集める — 同程度の面積・立地の物件を複数見ます
- 坪単価に換算する — 面積が違う物件とも比較できます
- 不動産会社に査定を依頼する — 書面で受け取れば、資料になります
- 不動産鑑定を取る — 費用はかかりますが、最も客観性が高い形です
- 契約条件も比較する — 賃料だけでなく、更新料や修繕の負担範囲も含めます
金額が大きい場合は、3番目か4番目を用意してください。自分で集めた募集事例だけでは、恣意的な選択だと見られる可能性があります。第三者の書面があれば、調整の根拠として通りやすくなります。
承継時の選択肢を比べる
個人所有の物件をどうするかには、いくつかの形があります。
- 賃貸を継続する — 賃料収入が続きます。契約条件の整備が必要です
- 買い手に売却する — 一度に現金化できますが、譲渡に伴う課税が生じます
- 会社に売却してから、会社ごと譲る — 手続きと課税の関係を確認する必要があります
- 買い手が別の場所へ移転する — 立地が事業の要でない場合の選択肢です
どの形が有利かは、税務と個別の事情で大きく変わります。必ず税理士・弁護士にご確認ください。とくに2番目と3番目は、譲渡所得の取り扱いや、同族間取引としての妥当性が論点になります。早い段階で相談し、選択肢ごとの手取りを試算しておいてください。
賃貸を続ける場合の契約整備
継続を選ぶなら、契約を整えておく必要があります。
- 契約書の有無を確認する — 口頭のまま運用している例が少なくありません
- 契約期間と更新条件を明確にする — 買い手にとって、事業継続の前提です
- 賃料を相場水準に改定する — 譲渡の前に済ませておくほうが説明が容易です
- 修繕の負担区分を定める — 建物の維持費を誰が負担するかです
- 中途解約と原状回復の条件を定める
- 相続が発生した場合の扱いを想定する
2番目が買い手の最大の関心です。短期の契約や、いつでも解約できる条件では、立地を前提とした事業計画が立てられません。一定期間の継続を保証する条項があるかどうかが、評価に直結します。契約書の内容は、弁護士にご確認ください。
まとめ
賃料が相場とずれていると、利益が実態を映しません。正常化で調整し、根拠を示してください。
賃貸を継続するなら、譲渡前に賃料を相場水準にし、契約書を整えておきましょう。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。