委託販売とは
商品の所有権を委託者(お客様)に残したまま、店が販売を代行する形です。売れたら、手数料を差し引いて委託者に支払います。
買取と違い、売れるまで店は代金を払いません。資金負担がない代わりに、粗利も手数料分に限られます。
自社の在庫ではない
所有権が委託者にある以上、会計上も自社の棚卸資産には含めません。
これを在庫として計上していると、次の問題が生じます。
- 企業価値の算定を誤る
- 買収監査で指摘される
- 税務上も問題になり得る
- 実際には売っても自社の売上にならない(手数料のみ)
管理の分離
- 物理的に分けるか、タグで明示する
- システム上、別のステータスで管理する
- 在庫金額の集計から除外する
- 売上も、手数料のみを計上する(総額ではなく)
契約で決めるべき点
- 委託期間:いつまで預かるか
- 販売価格の決定権:委託者か、店か
- 値下げの可否と手続き
- 手数料率
- 精算の時期と方法
- 期間内に売れなかった場合:返却か、買取か、処分か
- 保管中の破損・紛失の責任
- 店が閉店・譲渡する場合の扱い
最後を書いている店は少ないのですが、承継のときに必ず問題になります。
古物営業法上の扱い
委託販売についても、古物営業法上の記録が必要になる場合があります。取扱いの要否を管轄の警察署に確認してください。
また、委託者の本人確認についても、運用を決めておく必要があります。
承継時の対応
譲渡の際、委託品は次のように扱います。
- 譲渡対象から除外する
- 委託者に連絡し、返却するか、新しい店で継続するかを確認する
- 契約を新しい会社に引き継ぐ場合、委託者の同意を得る
- 一覧を作成し、買い手に開示する
譲渡の前に、長期の委託品を整理しておいてください。
委託販売を使うかの判断
そもそも委託を扱うべきかも検討の余地があります。
| 利点 | 課題 |
|---|---|
| 仕入れ資金が不要 | 粗利が手数料分だけ |
| 高額品を扱える | 管理の手間が増える |
| 断らずに済む | 売場を占有する |
| — | 企業価値には反映されない |
契約書に入れておくべき事項
口頭の取り決めで運用している店が少なくありません。書面にしてください。
- 所有権の所在 — 販売されるまで委託者にあることを明記します
- 販売価格の決定方法 — 誰が決めるか、値下げの可否と条件
- 手数料の率と精算方法 — 精算の時期と方法です
- 保管期間と、期間経過後の扱い — 引き取りか、値下げか、返却かです
- 破損・紛失時の責任分担 — 保険の有無も含めます
- 契約解除の条件と手続き
- 事業譲渡があった場合の承継の扱い
7番目を入れておくと、承継の場面で手続きが軽くなります。契約の承継に相手方の同意が要る場合、委託者の人数だけ手続きが発生します。将来の可能性として、あらかじめ定めておいてください。
承継・譲渡の場面での扱い
委託品は自社の資産ではないため、譲渡の対象になりません。手続きが必要です。
- 委託品の一覧を作る — 委託者、品目、預かり日、設定価格
- 契約の承継可否を確認する — 契約書の条項を確認します
- 方式による違いを確認する — 株式譲渡と事業譲渡で、手続きが変わります
- 委託者への連絡方法と時期を決める — 公表の時期と整合させます
- 返却を希望する委託者への対応を準備する
- 買い手に、委託品が在庫に含まれないことを明示する
手続きの詳細は、譲渡の方式によって異なります。弁護士・M&Aの専門家にご確認ください。委託者の数が多い場合、この手続き自体が譲渡の日程を左右することがあります。早めの確認をお勧めします。
委託販売を続けるかの判断
承継を見据えるなら、委託販売を続けるかどうかも検討の対象になります。
- 手数料収入の規模を確認する — 全体の粗利に対する比率を出します
- 管理の手間を金額に換算する — 区分管理、精算、問い合わせ対応の時間です
- 買取に切り替えられるかを検討する — 委託者の希望次第ですが、選択肢になります
- 集客への貢献を評価する — 委託目的の来店が、他の取引を生んでいる場合があります
- 承継時の手続き負担を見込む
4番目を見落とさないでください。委託販売そのものの収益は小さくても、その顧客が買取や購入の顧客になっているなら、単体の採算だけで判断すべきではありません。委託者のうち何割が他の取引もしているかを、一度確認してみてください。
まとめ
委託品は自社の在庫ではありません。会計上も管理上も分離してください。
契約に「店が譲渡・閉店する場合の扱い」を必ず入れておきましょう。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。