試算する三つ

項目内容
入ってくるもの在庫の売却、退職金、株の売却代金、年金
出ていくもの借入の返済、原状回復、廃棄費用、税金
その後の生活費年間いくら必要か

在庫はいくらになるか

帳簿の金額でそのまま売れるとは限りません。売り方によって手取りが変わります。

  • 店頭で通常販売:時間はかかるが単価は高い
  • セール販売:早いが単価が落ちる
  • 古物市場に出品:早い、相場次第
  • まとめて業者に売る:最も早い、単価は最も低い

時間があるほど手取りは増えます。ここが早く動く最大の理由です。

売り切る段取り

  1. 在庫を回転の速さで分類する
  2. 動きの遅いものから先に処分する
  3. 仕入れを段階的に絞る
  4. 残った高額品は市場や専門業者へ
  5. 値の付かないものの処分費用を見込む

順番を逆にすると、最後に売れないものだけが残ります。

出ていくお金を忘れない

  • 店舗の原状回復
  • 廃棄・処分の費用
  • 借入の一括返済
  • 従業員への対応
  • 税金(売却益、退職金など)

税務の確認

在庫の売却、株式の譲渡、退職金の受け取りは、それぞれ課税の扱いが違います。受け取り方によって手取りが変わることもあります。税理士に相談して設計してください。

在庫の現金化を試算する

引退後の資金は、在庫がいくらになるかで大きく変わります。

  1. 在庫の取得価格の合計を出す
  2. 日齢別に分ける
  3. 日齢別の掛け率を当てる — 実売実績から決めます
  4. 売り切るまでの期間を見積もる
  5. その間の保管費用を差し引く
  6. 売れない分の処分費を差し引く

6番目まで含めた金額が、実際に手元に残る目安です。取得価格の合計を資産だと考えていると、実際の回収額との差に驚くことになります。早い段階で現実的な試算をしておいてください。

売り切る段取りを決める

時間をかけるほど、回収額は増えます。

  • 閉店を決めた時点から処理を始める — 直前のセールでは安くなります
  • 日齢の長い在庫から着手する
  • 販路を複数使う — 店頭、EC、業者間市場
  • まとめ売りは最後の手段にする
  • 処分費のかかる品目を先に判断する
  • 古物商許可の維持期間を確認する

6番目を確認しておいてください。閉店後も在庫を販売するなら、許可の維持が必要な場合があります。返納の時期を、在庫の処理計画と合わせて決めてください。所轄の警察署にご確認ください。

出ていくお金を見込む

収入だけでなく、支出も試算してください。

  • 閉店・撤退の費用 — 原状回復、撤去、処分
  • 従業員の処遇に伴う費用
  • 借入の返済
  • 税負担 — 譲渡や在庫の売却に伴うものです
  • 個人保証が残る場合の負担
  • 専門家への費用

4番目は必ず税理士に試算してもらってください。受け取り方や処理の方法によって、税負担が大きく変わります。手取りの見通しが立たなければ、引退後の生活設計もできません。早い段階で相談してください。

生活設計と突き合わせる

試算した金額を、引退後の生活と照らしてください。

  • 年金の受給見込みを確認する
  • 健康保険の切り替えを確認する
  • 月々の生活費を見積もる
  • 不足があるかを確認する
  • 不足がある場合の対応を考える — 就労、賃貸収入、資産の活用

4番目で不足が見えたら、引退の設計自体を見直してください。時期を後ろにずらす、譲渡の条件を変える、引き継ぎ期間の報酬を交渉する、といった対応があります。試算を先に行うことで、選択肢を検討する時間が確保できます。

まとめ

引退後の資金は、在庫をどう現金化するかで決まります。

時間をかけられるほど手取りは増えます。早めの試算をおすすめします。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。