想定されるケース

  1. 引き渡した在庫から、買い手が偽造品を発見した
  2. 買い手が販売した後、購入者から指摘があった
  3. 権利者(ブランド側)から買い手に連絡が来た
  4. 売り手が過去に販売した分について、成約後に問題が発覚した

4番目を忘れないでください。引き渡した在庫だけでなく、過去の販売分も論点になり得ます。

責任の切り分け

次の観点で、責任の所在を整理します。

  • いつの取引か:譲渡前に仕入れたものか、譲渡後か
  • いつ発覚したか:保証期間内か
  • 買い手の検品を経ているか:買収監査で確認された範囲か
  • 売り手が知っていたか:故意・重過失があるか

条項に盛り込む要素

  1. 補償の対象:どの損害まで含むか(返金額、回収費用、権利者への対応費用、弁護士費用)
  2. 補償の上限額
  3. 1件あたりの下限額:少額は請求しない
  4. 累計の下限額
  5. 請求できる期間
  6. 通知の義務:買い手が発見したら、速やかに売り手に通知する
  7. 売り手の関与権:対応方針の協議、和解への同意
  8. 買い手の軽減義務:損害を拡大させない努力

6番目と7番目が重要

通知されないまま買い手が高額の和解をし、後から請求されるのは避けたいところです。

  • 発見から一定期間内の通知を義務づける
  • 売り手が対応方針の協議に参加できる
  • 一定額を超える和解には、売り手の同意を要する

故意・重過失の扱い

上限額や期間の制限は、売り手に故意や重過失があった場合には適用されないのが通常です。

つまり、「偽造品と知りながら在庫に混ぜた」という場合は、制限なく責任を負います。ここは受け入れざるを得ない条項です。

成約後の対応手順

実際に発生した場合、次の順で動いてください。

  1. 通知を受けたら、事実関係を確認する
  2. 自社の記録(仕入れ、真贋判定、販売)を照合する
  3. 契約上の責任範囲を、弁護士と確認する
  4. 買い手と対応方針を協議する
  5. 記録を残す

日常の運用が交渉力になる

真贋に関する責任を限定するには、体制の裏づけが必要です。

  • 真贋確認の手順書 — カテゴリごとに、何を確認するかを定めた文書です
  • 判断の記録 — 何を根拠に判断したかを、案件ごとに残します
  • 鑑定の外部委託の記録 — 高額品を外部に確認依頼した記録です
  • 疑わしい品物を扱わなかった記録 — 買取を断った事例です
  • 従業員への教育記録
  • 過去に発覚した事例と、その対応

4番目の記録が意外に効きます。断った案件の記録は、慎重に運用してきたことの証明になります。買取を断る際、その理由を記録に残す運用にしておいてください。日常の一手間が、交渉の材料になります。

偽造品条項で明確にする点

偽造品に関する条項では、次の点を明確にしてください。

  1. 対象期間 — 引き渡し前に仕入れた在庫に限定します
  2. 発覚の期限 — 引き渡しから何年以内に発覚したものかです
  3. 通知の期限 — 発覚後、何日以内に通知する義務かです
  4. 補償の範囲 — 仕入額か、販売額か、対応費用まで含むかです
  5. 補償の上限額
  6. 売り手の関与の権利 — 判定や対応方針に関与できるかです
  7. 第三者への対応の主体 — 顧客や権利者への対応を誰が行うかです

6番目と7番目を必ず入れてください。買い手が単独で判断し対応した結果を、売り手が負担する形になると、費用が際限なく膨らみます。判定に関与できる権利と、対応方針の協議義務を定めておいてください。条項の設計は、弁護士にご依頼ください。

発覚した場合の実務手順

実際に問題が起きたときの流れを、契約で定めておくと混乱が減ります。

  • 買い手から売り手へ通知する — 期限と方法を定めます
  • 双方で事実を確認する — 仕入れの記録を照合します
  • 真贋の判定方法を決める — 第三者機関に依頼する形が客観的です
  • 対応方針を協議する — 回収、返金、廃棄のいずれかです
  • 費用の負担を精算する
  • 行政・権利者への対応を検討する

6番目は法的な判断を伴います。必ず弁護士にご相談ください。偽造品が発覚した場合、法令上の対応が必要になる可能性があります。誰が、どの立場で対応するかは、事案によって異なります。契約段階で、この場合の協議義務を定めておくことが重要です。

まとめ

補償条項では、上限額・下限額・期間に加え、通知義務と売り手の関与権を必ず入れてください。

そして日頃の真贋判定の記録が、責任範囲を狭める最大の材料になります。