件数で評価すると何が起きるか
買取件数だけを歩合の基準にすると、担当者は件数を取りに行きます。当然の反応です。
その結果、次が起きます。
- 高く買ってでも成約させる(原価率が上がる)
- 回転の遅い商材まで買い取る(在庫が重くなる)
- 相場が下がっている商材を抱える
件数は増え、粗利は減る。評価の基準が、そのまま行動になります。
この結果は、担当者の姿勢の問題ではありません。評価されるとおりに動いているだけです。望む行動が生まれていないなら、評価の基準を見直すのが先です。指導や叱責では変わりません。
粗利を基準にする
より適切なのは、買い取った商品が実際に売れたときの粗利を基準にすることです。
これなら、適正な価格で買うインセンティブが働きます。高く買いすぎれば自分の評価が下がるからです。
運用上の課題は、売れるまで評価が確定しないことです。次のような工夫で対応できます。
- 四半期など、一定期間でまとめて確定させる
- 一定日数以内に売れた分のみを対象にする(回転も同時に促せる)
- 暫定の評価を月次で出し、後で調整する
3つの工夫のうち、2番目には副次的な効果があります。「一定日数以内に売れた分」を対象にすると、担当者が回転も意識するようになります。高く買えば売るのに時間がかかるため、自然と適正な価格に近づきます。
回転も評価に入れる
粗利だけだと、高粗利だが売れるまで長くかかる商材に偏ることがあります。回転日数も見るようにしてください。
たとえば「買取から90日以内に売れた分の粗利」を対象にすると、粗利と回転の両方が意識されます。
日数の設定は、カテゴリごとに変えてください。回転の速い商材と遅い商材で同じ日数を当てると、遅い商材の担当者が一方的に不利になります。平均回転日数を参考に決めてください。
割増賃金の計算に注意
ここからが労務の論点です。歩合給がある場合、時間外労働に対する割増賃金の計算方法が、固定給のみの場合と異なります。
歩合部分を含めずに計算していると、支払っているつもりでも不足が生じます。制度を導入するとき、または変更するときは、必ず社会保険労務士に計算方法を確認してください。
この論点は、制度を作るときだけでなく基準を変えるたびに確認が必要です。歩合の計算方法を変えれば、割増賃金の計算も影響を受けます。制度変更のたびに専門家に確認する習慣をつけてください。
最低賃金との関係
歩合の比重が大きい設計では、成績が振るわなかった月に賃金が下がりすぎないかを確認する必要があります。労働時間に対して、法令上の水準を下回らない仕組みにしておいてください。
あわせて、成績が振るわなかった月の手取り額の見通しも担当者に伝えておいてください。想定より下がったときに不信感が生まれると、制度そのものへの反発につながります。
制度を変えるときの進め方
件数評価から粗利評価に切り替える場合、既存の担当者にとっては不利になることがあります。丁寧に進めてください。
- 新しい基準で過去半年を試算し、影響を把握する
- 個別に説明し、狙いを伝える(会社の利益ではなく、在庫が軽くなることの意味)
- 移行期間を設け、当面は不利にならない調整を入れる
- 就業規則・賃金規程を改定する
不利益な変更にあたる可能性があるため、手続きの進め方を専門家に確認してください。
1番目の試算は、必ず個人ごとに出してください。全体では影響が小さく見えても、特定の担当者だけ大きく下がることがあります。その人に個別に説明できるかが、移行の成否を分けます。
育てた人を評価する項目も入れる
査定の仕組み化を進めたいなら、教えたことを評価に入れてください。自分の成績だけが評価されるなら、ベテランが教える理由がありません。
「育てた人の買取粗利」を一定割合で加点する。この一項目で、育成の進み方が変わります。
加点の割合は、最初は小さくても構いません。大切なのは、教えることが評価の対象になっていると伝わることです。割合は運用しながら調整してください。
評価に入れると効く項目
買取の粗利と回転だけでなく、次の項目を評価に入れると会社として整えたい方向に現場が動くようになります。
- 基準表どおりに運用できているか — 成果だけでなく、手順を守っているかを見ます。偶然の当たりを評価しないためです
- 本人確認と記録の正確さ — 法令対応は評価されないと後回しになります。記載漏れの件数を見てください
- 育てた人の成果 — 教えることが評価されないと、ベテランが協力する理由がありません
- 値下げ・販路変更の実施 — 在庫を動かす行動を評価しないと、判断が先送りされます
- 相場情報の共有 — 気づいた相場の動きを共有した人を評価すると、情報が個人に留まらなくなります
とくに4番目は、買取時の判断と分けて評価することが大切です。値下げした担当者の成績が下がる制度では、誰も進んで下げません。
まとめ
歩合は、件数ではなく粗利と回転を基準に。割増賃金の計算方法は必ず専門家に確認。制度変更は試算と説明から。
いまの評価基準が、現場のどんな行動を生んでいるか。そこから見直してみてください。
いまの評価基準がどんな行動を生んでいるかを一度書き出してみてください。意図していなかった動きが見えてくることがあります。制度設計についてはご相談いただけます。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。労働法令の具体的な適用や必要な手続きは、法改正や個別の事情によって異なります。実際の対応にあたっては、社会保険労務士等の専門家および所轄の労働基準監督署にご確認ください。