まず棚卸しをする

整理の出発点は、現状を一枚にまとめることです。次の項目を借入ごとに並べてください。

  • 金融機関名
  • 当初金額と現在の残高
  • 金利
  • 毎月の返済額と残り回数
  • 担保(何を差し入れているか)
  • 保証(誰が保証しているか、保証協会の保証が付いているか)
  • 資金使途(何に使った借入か)

リース債務も忘れずに含めてください。運送会社では車両リースが実質的な借入として大きな比重を占めます。

この一覧を作るだけで、見えていなかった問題が出てきます。 「もう手放した車両の借入がまだ残っている」「同じ担保に複数の抵当が付いている」といったことです。

返済負担を測る

次の2つを計算してください。

年間返済額

元金返済とリース料の年間合計です。元金返済は費用になりませんが、現金は出ていきます。

返済原資

税引後利益 + 減価償却費

おおまかに、これが返済に充てられる金額です。

年間返済額が返済原資を上回っていれば、手元資金が減り続けます。 どこかで新たな借入をしないと回りません。この状態が続いているなら、整理が必要です。

整理の方向

1. 借換えでまとめる

複数の借入を1本にまとめ、返済期間を延ばす方法です。

  • 利点:毎月の返済額が下がる。管理が楽になる
  • 注意:総支払利息は増えることがある。担保・保証の再設定が必要

2. 返済期間の延長(リスケジュール)

既存の借入について、返済条件の変更を相談する方法です。

  • 利点:手元資金の流出を抑えられる
  • 注意:金融機関の評価に影響する場合があります。新規の借入がしにくくなることがあります

安易に選ぶものではありませんが、資金が尽きてからでは選べません。 早めに相談することが重要です。

3. 資産の売却で返済する

遊休不動産、使っていない車両。持っているだけで維持費がかかる資産は、売却して借入を減らす選択があります。

4. 利率の見直し

業績が改善している、保証協会付きから固有貸出に変えられる、といった場合、条件の見直しを相談できることがあります。

金融機関との進め方

整理の話は、資料を持って自分から行くのが基本です。

  • 借入の一覧表
  • 直近の試算表
  • 資金繰り表(3か月〜1年先)
  • 改善の計画(何をして、いつまでにどうなるか)

「苦しいので何とかしてください」ではなく、「こう改善するので、この形にしたい」という順序で話してください。銀行への説明資料のつくり方をご覧ください。

メインバンクを決める

取引金融機関が多すぎると、どこも本気で支えてくれません。中心となる1行を決め、そこに情報を厚く出すほうが、いざというときに動いてもらえます。

承継・M&Aへの影響

親族内承継の場合

借入が多いほど、後継者が引き継ぐ個人保証の額も大きくなります。「保証があるなら継ぎたくない」という理由での辞退は実際に起きています。

借入を減らすことが、そのまま保証解除の交渉材料になります。個人保証の解除保証の引き継ぎ交渉をご覧ください。

M&Aの場合

株式の価値は、おおまかに事業価値から純有利子負債を差し引いて算定されます。つまり借入が多いほど、売り手が受け取る金額は少なくなります

ただし、借入を減らすために手元資金を使えば、その分も差し引かれます。単純に「返せば高く売れる」わけではありません。 借入金の扱いと純有利子負債をご覧ください。

M&Aで意味があるのは、返済負担が重すぎて利益を圧迫している状態を解消することです。利益が出る体質になれば、事業価値そのものが上がります。

やってはいけないこと

  • 金融機関に黙って状況を悪化させる:信用を失います
  • 社長個人の資金で穴埋めし続ける:実態が見えなくなります
  • 高金利の資金でつなぐ:一時しのぎにしかなりません
  • 売掛債権の安易な現金化に頼り続ける:構造問題は解決しません

公私混同の解消が最優先である理由をご覧ください。

まとめ

借入整理の第一歩は、金融機関・残高・金利・担保・保証を一枚に棚卸しすることです。年間返済額が返済原資を上回っていないかを測り、借換え・期間延長・資産売却などを組み合わせます。金融機関には資料と改善計画を持って自分から相談してください。借入の圧縮は、そのまま保証解除の交渉材料になります。