品位が単価を決める
買い手が価格を決める際に見るのは、量だけではありません。
- 異物の混入率
- 品目ごとの純度
- サイズと形状(受け入れ設備に合うか)
- 付着物の有無(油、樹脂、塗装)
混ざりが多ければ、買い手は自分で選別する手間を負います。その分が価格から差し引かれます。選別は、その手間を自社で引き受けて対価を得る作業です。
手選別と機械選別
手選別
- 向くもの:判断が要るもの、量が少ないもの、価値の高い品目
- 利点:投資が不要。判断の精度が高い。
- 限界:人手に依存する。量に比例して時間がかかる。人が育つのに時間を要する。
機械選別
- 向くもの:量が多いもの、性質で分けられるもの(磁性、比重、粒度)
- 利点:量をこなせる。人手に依存しない。
- 限界:投資が必要。設置スペースが要る。細かい判断はできない。
実務では両方を組み合わせます。機械で大まかに分け、価値の高い部分を手で仕上げるという形が一般的です。
まず現状の歩留まりを測る
投資を考える前に、今どれだけ取り切れているかを把握してください。
方法としては、次のようなものがあります。
- 1台あたりの品目別回収量を、一定期間測る
- 出荷先からの評価(品位に関する指摘)を記録する
- 雑品として出している中に、分けられるものが残っていないか確認する
- 同業者や出荷先に、一般的な水準を聞く
取り残しがどこにあるかが分かれば、そこに手をかけるという順序になります。測らずに設備を入れると、効果のない部分に投資してしまいます。
手をかけるべき品目の見極め
すべてに手をかける必要はありません。判断の基準は単純です。
「手をかけて上がる単価 × 量」が「かかる人件費・設備費」を上回るか。
この計算をすると、次のような結論になることがあります。
- 銅は少量でも手をかける価値がある(単価が高い)
- ある品目は、量がまとまらないと手間が回収できない
- 雑品の一部は、そのまま出したほうが得
結論は相場によって変わります。相場が上がった品目は、手をかける価値も上がるという関係があります。年に一度は見直してください。
設備投資の判断
選別設備を検討する際、確認すべき点を挙げます。
- 対象となる品目の量:処理量が少なければ回収できません。
- 単価の向上幅:出荷先に確認してください。「品位が上がればいくら上がるか」を具体的に聞きます。
- 人件費の削減:手選別に充てていた時間が空きます。その人を他に回せるか。
- 設置スペース:ヤードの他の用途と競合しないか。
- 維持費:電力、消耗品、点検。
- 回収期間と引退時期:これが最後の関門です。
6番目を必ず確認してください。回収に10年かかる設備を、引退の3年前に入れるべきではありません。
ただし例外があります。設備が稼働して収益を生んでいる状態であれば、譲渡の際に価値として評価されます。回収期間の残りを、譲渡価格で回収できる可能性はあります。 判断に迷うなら、その設備を入れた場合と入れない場合で、譲渡時の評価がどう変わるかを含めて考えてください。
投資せずに改善できること
設備の前に、費用をかけずにできることがあります。
- 置き場を分ける:混ざる原因の多くは、置き場が決まっていないことです。
- 解体の段階で分ける:後で選別するより、外した時点で分けるほうが早いのです。
- 基準を明文化する:どこまで分けるかの判断が人によって違うと、品位が振れます。
- 出荷先の評価を現場に伝える:品位が良いと褒められた、悪いと指摘された。これを共有すると行動が変わります。
4番目が特に効きます。現場は、自分の作業が価格にどう影響しているかを知りません。数字で伝えると、選別の質が変わります。
技能を人に残す
選別の判断は、経験に依存する部分があります。ベテランが見れば一瞬で分かるものが、新人には分かりません。
この技能を残す方法を挙げます。
- 品目ごとに実物のサンプルを並べて置く
- 判別の要点を写真付きで文書化する
- 迷ったときの置き場(保留用)を作る
- 新人が分けたものを、ベテランが確認する期間を設ける
1番目が最も効果的です。言葉で説明するより、実物を並べたほうが早く覚えます。費用はかかりません。
そして、この仕組みは承継の場面で評価されます。選別の技能が特定の1人にしかない会社は、その人が辞めれば品位が落ちます。買い手はそこを見ています。
解体の段階で決まる部分が大きい
選別を「解体後の工程」と捉えると、改善の余地を狭めてしまいます。実際には、解体のやり方が歩留まりを決めています。
例を挙げます。
- ハーネスを丁寧に外せば銅として回収できるが、車体ごと潰せば雑品に混ざる
- アルミ部材を先に外せば単独で出せるが、後からでは分けられない
- 触媒を確実に外すかどうかで、1台の収益が変わる
- 樹脂や内装材を先に抜けば、金属の品位が上がる
つまり、どこまで手をかけて解体するかという判断が、選別の前提を作っています。
この判断は多くの場合、熟練者の頭の中にあります。「この車はここまで取る」「この年式はここは取らない」。基準として言語化し共有すれば、担当者が変わっても歩留まりが落ちません。
※ 単価の向上幅は出荷先と品目によって異なります。投資判断は自社の処理量と出荷先への確認に基づいて行ってください。