純資産価額方式が重要になる会社とは

純資産価額方式は、会社を今解散したらいくらの純資産が株主に残るか、という発想に近い評価方法です。帳簿上の数字をそのまま使うのではなく、資産や負債を時価に置き換えて計算する点が大きな特徴です。

とくに土地や工場建屋を自社で保有している整備・鈑金業では、この方式が評価に強く効いてきます。長年保有してきた土地に含み益があると、帳簿価額と時価の差が株価を押し上げる要因になるためです。

自社が資産を多く抱えるタイプか、それとも身軽に事業を回すタイプかによって、この方式の影響度は変わります。まずは自社がどちらに近いかを意識してみましょう。

純資産価額方式の基本的な考え方

この方式では、まず会社の資産と負債をすべて時価で評価し直します。そのうえで、資産の時価総額から負債を差し引いた純資産を求め、そこから一定の調整を行って一株あたりの価額を導きます。

帳簿では取得したときの価額のまま記録されている資産も、時価で見ると大きく値上がりしていることがあります。逆に、老朽化した設備は帳簿より価値が下がっていることもあり、こうした差を反映するのがこの方式の狙いです。

計算の具体的な手順や控除の割合などは制度で定められており、改正されることもあります。細かな数値は最新のルールに沿う必要があるため、ここでは考え方の骨格を押さえてください。

含み益のある不動産の評価

純資産価額方式で最も影響が大きいのが、土地などの不動産です。何十年も前に取得した土地が値上がりしている場合、帳簿価額と時価の差、いわゆる含み益が純資産を大きく押し上げます。

整備工場は敷地面積が比較的広く、立地によっては土地の評価が事業の実態以上に株価を高めてしまうことがあります。事業の稼ぐ力は変わらないのに、土地の含み益だけで承継の負担が重くなる、というのは現場でよく聞かれる悩みです。

土地の時価評価の基準は複数あり、どの基準で見るかによっても金額が変わります。評価には専門的な判断を要するため、独自の見積もりで判断しないことが大切です。

設備・在庫など事業用資産の時価評価

不動産以外にも、整備工場には時価評価の対象となる資産があります。代表的なものを整理すると次のとおりです。

  • リフトやピット、塗装ブースなどの設備
  • 工具や測定機器
  • 中古車や部品の在庫
  • 代車として保有する車両

これらは帳簿では減価償却が進んで低い価額になっていることが多い一方、市場でまだ価値がある場合には時価が帳簿を上回ることもあります。逆に、型落ちで実勢価格が下がっているものは評価が下がる方向に働きます。

在庫については、長期間動いていない不良在庫が含まれていないかも確認したいところです。実態に合わない在庫は、評価だけでなく承継後の引き継ぎでも問題になりやすいため、早めの整理が有効です。

含み益にかかる法人税相当額の控除

純資産価額方式には、含み益に対して一定の法人税相当額を差し引くという考え方があります。これは、もし資産を実際に売却して利益を実現すれば法人税がかかるため、その分を評価から控除するという発想です。

この控除があることで、含み益がそのまま丸ごと株価に反映されるわけではなく、一定程度は緩和されます。とはいえ控除の割合は制度で定められており、改正の対象となることもあるため、最新のルールを確認する必要があります。

控除の有無や割合は評価額に無視できない影響を与えます。含み益の大きい会社ほど、この点を正しく反映できているかが重要になります。

帳簿の整理が評価の精度を左右する

純資産価額方式は帳簿をもとに時価へ引き直す作業のため、そもそもの帳簿がどれだけ実態を映しているかが精度を左右します。実在しない資産が残っていたり、回収不能な売掛金が計上されたままだと、評価が実態からずれてしまいます。

承継の準備段階で、次のような点を確認しておくとスムーズです。

  1. 実在しない固定資産が帳簿に残っていないか
  2. 回収見込みのない債権が資産に含まれていないか
  3. 計上漏れの負債や引当金がないか
  4. 個人資産と会社資産が混在していないか

こうした整理は評価の適正化だけでなく、買い手による調査の場面でも信頼につながります。地道な作業ですが、早めに手をつける価値があります。

純資産価額方式と他方式の使い分け

自社株評価では、純資産価額方式だけを単独で使うとは限りません。会社の規模区分によっては、類似業種比準方式と組み合わせて評価するのが一般的です。純資産の比重が高いほど、含み益の影響が株価に強く出ます。

一般論として、含み益の大きい不動産を抱える会社では純資産価額方式の水準が高くなりやすく、収益力の高い会社では類似業種比準方式のほうが有利になる場合もあります。ただし、どちらが有利かは会社ごとに異なり、一概には言えません。

実際には複数の方式で試算し、自社の状況に合った見方を確認することが欠かせません。

評価が高くなりすぎたときの考え方

土地の含み益によって株価が想定以上に高くなり、承継の負担が重く感じられるケースは少なくありません。その場合、事業用不動産を会社から切り離す、承継の順序を工夫するといった選択肢を検討することがあります。

ただし、こうした対策はスキームによって税務上の扱いが変わり、実行を誤るとかえって負担が増える可能性もあります。あくまで事業の実態に沿った範囲で、専門家と設計を詰めることが前提になります。

評価が高いこと自体は、それだけ会社に価値がある証でもあります。数字に一喜一憂せず、承継全体の設計のなかで落ち着いて向き合うことが大切です。

専門家に相談する前にそろえたい資料

純資産価額方式での試算を依頼する際は、資産の実態が分かる資料があると精度が上がります。整備工場では次のようなものが役立ちます。

  • 直近の決算書と固定資産台帳
  • 土地・建物の権利関係が分かる資料
  • 設備や在庫の一覧
  • 個人所有と会社所有の区分が分かるメモ

資料が完全にそろっていなくても相談は可能です。まずは現状を共有し、足りない部分を一緒に整えていく進め方でも問題ありません。

まとめ

純資産価額方式は、会社の資産と負債を時価で評価し直して株価を求める方法です。土地の含み益や設備・在庫の時価が評価を左右し、含み益にかかる法人税相当額の控除も影響します。土地を保有する整備工場では特に重要な考え方です。

帳簿の整理と正確な資料が評価の精度を高めます。具体的な計算や制度の細部は年度により変わることがあるため、正式な評価と承継対策は専門家にご相談のうえで進めてください。