なぜ3年なのか

1年で在庫を半分にしようとすると、値下げ幅を大きく取るしかありません。結果として粗利が消え、常連客に「待てば安くなる店」という印象を残します。

逆に5年かけると、途中で仕入れが元に戻り、計画が有名無実になります。3年は、粗利を守りながら意識を維持できるちょうどよい長さです。

もうひとつの理由は、仕入れ側の習慣を変えるのに時間がかかることです。出口だけ広げても、買取の基準が変わらなければ滞留は生まれ続けます。1年目で出口を作り、2年目で入口を締め、3年目で定着させる——この流れに必要な長さが3年だと考えてください。

出発点は日齢分布を出すこと

最初にやるのは値下げではありません。在庫を入荷日からの経過日数で区分し、それぞれいくらあるかを出します。

  • 30日以内/31〜90日/91〜180日/181〜365日/365日超

ほとんどの店で、365日超が想像より多いことに気づきます。ここが減らすべき対象です。売れ筋を減らす必要はありません。

分布を出すときは、金額と点数の両方を並べてください。金額では小さく見えても点数が多ければ棚を占領していますし、点数が少なくても金額が大きければ資金を縛っています。どちらの問題なのかで、打つべき手が変わります。

システムが入っていない場合でも、仕入台帳と現物を突き合わせればおおよその分布は出せます。全点数をやる必要はなく、金額の大きいカテゴリから始めれば十分です。完璧な数字より、手をつける場所が分かることが先です。

日齢ごとに出口を決めておく

担当者の判断に任せると、値下げは先送りされます。あらかじめルールにしてください。

日齢やること
91日売価を見直す(相場に合っているかの確認)
181日値下げ、またはECへ出品先を変更
271日業者間市場へ出す
365日まとめ売り・一括処分の対象にする

数字は店の商材に合わせて調整して構いません。大事なのは期限が来たら自動的に次へ進む形にすることです。

ルールを入れた直後は、現場から反発が出ることがあります。「まだ売れる」「もったいない」という声は自然なものです。説明のしかたとしては、その1点が棚を占領している間、次の仕入れができないという言い方がいちばん伝わります。棚と資金という具体的な話に落としてください。

例外を認める場合は、記録を残してください。「この品は相場が戻る見込みがあるので保留」という判断はあって構いませんが、記録がないまま例外が積み上がるとルールそのものが機能しなくなります。半年ごとに例外の一覧を見直す場を作ると歯止めになります。

年ごとの目標の置き方

3年を次のように配分すると無理がありません。

  • 1年目:365日超をゼロに近づける。ここがいちばん痛みますが、効果も最大です
  • 2年目:181日超を圧縮する。同時に仕入れの上限を見直します
  • 3年目:新しく滞留を作らない。ルールが回っているかを月次で点検します

目標は金額ではなく比率で置くほうが続きます。「365日超を在庫総額の◯%以下にする」という形なら、仕入れが増えた月でも判断がぶれません。金額目標だと、季節によって達成不能に見えて意欲が落ちてしまいます。

仕入れを絞らないと減らない

出口だけ広げても、入口が同じままなら在庫は減りません。買取原価率の上限をカテゴリ別に決め、回転の遅いカテゴリは上限を下げます。

ここで注意したいのは、買取件数を減らさないことです。件数が減ると集客そのものが弱まります。単価の上限を絞るのであって、断る件数を増やすのではありません。

あわせて、断り方も決めておいてください。上限を超える品を持ち込まれたとき、担当者が「買えません」としか言えないと、お客様との関係が切れます。「この価格なら」と提示する、他店を紹介する、後日改めて相談すると伝える——断り方の選択肢を用意しておくことが、件数を守ります。

3年計画が途中で止まる理由

計画を立てても2年目で止まる会社が多くあります。止まり方には型があります。

  • 1年目の痛みで意欲が落ちる — 滞留品の処理は損失として数字に出ます。ここで「やらないほうがよかった」と感じてしまうと続きません。処理した分だけ資金が戻っていることをあわせて示してください
  • 入口を締めないまま出口だけ回す — 減った分だけ新しい滞留が生まれ、数字が動きません
  • 見る場が消える — 月次で確認する議題から外れると、数か月で元に戻ります
  • 担当者が交代する — 引き継ぎでルールの背景が伝わらず、運用だけが残って形骸化します

いずれも仕組みより続け方の問題です。月次の議題に固定し、数字と一緒に「戻った資金」を示す。この2つで大半は防げます。

数字が良くなると出口が広がる

3年後、棚卸資産が減って借入が軽くなった決算書は、買い手からまったく違って見えます。承継する後継者にとっても、引き継ぐ負担が小さくなります。

在庫圧縮は「出口の準備」であると同時に、本業の資金繰りを楽にする打ち手でもあります。引退の予定がなくても取り組む価値があります。

効果は決算書だけでなく、日々の売場にも出ます。滞留品が減ると棚の鮮度が上がり、お客様が「行くたびに何かある店」と感じるようになります。来店頻度が上がれば買取の持ち込みも増えます。在庫圧縮は、集客の施策でもあります。

まとめ

在庫を減らす鍵は、日齢で区切って出口を自動化することです。判断を人に委ねている限り、滞留はなくなりません。

まず日齢分布を1枚の表にしてください。それを見た瞬間に、どこから手をつけるかが決まります。

3年計画は長く感じますが、最初の3か月で分布を出してルールを決めてしまえば、残りは運用です。着手が早いほど、選べる手も多く残ります。現状の数字が出ていない段階からご相談ください。