リユース業と社内承継の相性
社内承継が向いているのは、事業の価値が人に紐づいている業種です。リユース業はまさにそれにあたります。
目利きができる従業員は、外から連れてきても代わりになりません。長年その店で値付けをしてきた人が継ぐのであれば、引き継ぎのリスクは最小です。取引先や常連客も動揺しません。
もうひとつの利点は、時間をかけて見極められることです。代表を先に任せてみて、経営判断ができるかを確かめたうえで株を移すという段取りが取れます。親族内承継と違い、相手を選び直す余地が残るのが社内承継の特徴です。
最大の壁は株の購入資金
問題は、従業員に株を買う資金がないことです。中小のリユース会社でも、株の評価額は数千万円になることがあります。在庫が多い会社ほど、この額は大きくなります。
資金の作り方には、主に次の選択肢があります。
- 後継者が金融機関から借り入れる
- 持株会社を設立し、その会社が借入で株を買い取る
- 役員報酬を引き上げ、数年かけて自己資金を作る
- 段階的に譲渡し、時間をかけて移す
4つのうち現実的なのは、3番目と4番目の組み合わせです。役員報酬を上げて自己資金を作りながら、株を数年に分けて移していく。時間はかかりますが、後継者に大きな借入をさせずに済みます。評価額が高い会社ほど、この方法を取るための助走期間が必要になります。
持株会社を使う場合の考え方
後継者が新たに会社を作り、その会社が借入をして株を買い取る形です。返済は、買い取った会社からの配当などで賄います。
この方式が成り立つ条件は、安定して利益とキャッシュが出ていることです。在庫に資金が寝ていて手元現金が薄い会社では、返済計画が立ちません。
つまりここでも、先に在庫を軽くしておくことが前提になります。
加えて、返済期間中の業績変動にも備えが要ります。返済計画が業績の上振れを前提にしていると、一度落ち込んだときに立て直せません。保守的な見込みで返済が回るかを確認してから進めてください。金融機関との協議では、この点を必ず聞かれます。
個人保証をどう扱うか
借入がある会社では、現経営者の個人保証が付いているのが通常です。承継にあたって、この保証をどうするかを必ず決めてください。
そのまま後継者に引き継がせると、従業員だった人が突然、家を担保に入れる立場になります。ここで承継の話が止まることは少なくありません。
選択肢としては、承継を機に保証の解除を金融機関と協議する、借入そのものを圧縮してから承継する、といった方向があります。在庫を減らして借入を軽くすることが、ここでも効いてきます。
協議を始める時期は、承継の1〜2年前が目安です。直前になって相談すると、金融機関としても判断の材料が足りません。在庫を軽くし、借入を減らし、月次の数字が出る状態を作ってから話に行くと、応じてもらえる可能性が上がります。
進める順番
実務としては、次の順に進めるとつまずきにくくなります。
- 後継候補の意思を確認する(家族の理解を含めて)
- 自社株の評価額を試算する
- 在庫を圧縮し、借入を軽くする(1〜3年)
- 代表を先に交代し、経営を任せてみる
- 金融機関と資金・保証の協議をする
- 株式を移転する
代表交代を先に行い、株の移転は後にする。この順番なら、うまくいかなかったときに戻せます。
4番目の代表交代を先に置くのが、この順序の要点です。経営を任せてみて初めて分かることが多くあります。株を移してしまうと戻せませんが、代表交代の段階なら方針を見直す余地が残ります。
古物商許可の手続きを忘れずに
代表者が変わる場合、古物商許可について変更の届出が必要になります。営業所の管理者を兼ねていた場合は、管理者の届出も見直しが要ります。
手続き自体は難しくありませんが、期限があります。代表交代のスケジュールが決まった時点で、管轄の警察署に確認してください。
あわせて、取引先や仕入先への通知も忘れないでください。オークション会場の会員資格、モールの出店契約、リース契約の名義など、代表者の変更にともなって手続きが必要なものがあります。一覧を作って順に処理してください。
打診する前に確かめておきたいこと
候補者に話を持っていく前に、次の点を自分の側で整理しておいてください。準備なしに打診すると、断られたときに関係が気まずくなります。
- 株の評価額のおおよその見込み — 金額を言えないと相手も判断できません
- 資金をどう用立てる想定か — 「自分で借りてほしい」だけでは受けてもらえません。会社としてどう支えるかを示してください
- 個人保証をどう扱うか — ここが最も断られる理由です。解除に向けた方針があるかで受け止めが変わります
- いつまでに答えが欲しいか — 家族と相談する時間が必要です。即答を求めないでください
- 断られた場合の次の手 — 他の候補、M&A、廃業。選択肢を持ったうえで打診してください
最後の項目が、実は相手への配慮になります。断りにくい状況で打診されると、相手は本心を言えません。他の道もあると伝えたうえで聞くほうが、正直な答えが返ってきます。
まとめ
社内承継の成否は、後継者の意欲ではなく資金設計で決まります。そして資金設計の前提は、在庫を軽くして借入を減らしておくことです。
候補者が頭に浮かんでいるなら、まず自社株の評価額を出すところから始めてください。
候補者が頭に浮かんでいる段階でも、ご相談いただけます。評価額の試算と、在庫を軽くする計画づくりから始めれば、資金設計の見通しが立ちます。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務上の取扱いや補助金の対象・要件は、制度の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家および管轄窓口にご確認ください。