決算書だけでは足りない理由

決算書に載っている「棚卸資産◯円」からは、次が分かりません。

  • それが売れる在庫か、滞留在庫か
  • 実際にいくらで売れるのか
  • どのカテゴリで稼いでいるのか
  • 仕入れがどこから来ているのか
  • 社長が抜けても回るのか

これらが分からなければ、買い手は保守的に見積もるしかありません。

必須の資料(財務)

  • 直近3期の決算書(税務申告書一式)
  • 直近の月次試算表
  • 借入金の一覧(残高、金利、返済予定、保証人)
  • 役員報酬の推移
  • 個人経費として計上している費目の一覧

必須の資料(在庫)

ここがリユース業の中核です。

  • 在庫の日齢分布表:カテゴリ別・日齢別の点数と金額
  • カテゴリ別の粗利率と回転日数
  • 直近1年の実売価格の実績:日齢別に出せるとなお良い
  • 評価減の計上状況
  • 棚卸の記録と差異の推移
  • 預かり品・委託品の一覧

必須の資料(事業)

  • 買取のチャネル別件数(月次の推移)
  • 販路別の売上構成(店頭・EC・市場)
  • 店舗別の採算(複数店舗の場合)
  • 主要な仕入先・提携先の一覧と取引条件
  • 査定基準(1カテゴリ分でも)

必須の資料(法務・労務)

  • 古物商許可証の写しと、届出内容の一覧(営業所、管理者、品目、URL)
  • 店舗の賃貸借契約書
  • リース契約の一覧
  • 従業員名簿(雇用形態、勤続年数、査定可否)
  • 雇用契約書、就業規則、賃金規程
  • 直近1年の勤怠記録
  • 保険の証券一覧

準備の順序

  1. すでにあるものを1フォルダに集める:1日でできます
  2. 足りないものを洗い出す
  3. すぐ作れるものを作る:契約書の一覧、従業員名簿
  4. 時間がかかるものに着手する:在庫の日齢データ、査定基準の文書化

4番目に数か月かかることがあります。だから相談の前に始めてください。

資料が揃っていることの効果

  • 買い手からの信頼が上がる(管理されている会社と見られる)
  • 買収監査の期間が短くなる
  • 減額交渉に反論できる
  • 複数候補との交渉が同時に進められる

準備の順序を決める

全部を一度に揃えようとすると、着手できません。

  1. すでにあるものを集める — 決算書、契約書、許可証
  2. システムから出せるものを出す — 在庫リスト、販売実績、買取実績
  3. 集計が必要なものを作る — 日齢分布、カテゴリ別粗利、チャネル別実績
  4. 不足している記録を洗い出す — 作成できないものは、その旨を整理します
  5. 専門家に確認してもらう — 労務と法務の点検です
  6. 不備を是正する

4番目で見つかる不足が、準備期間を決めます。個品管理ができていない、契約書がない、記録に漏れがあるといった状態は、短期間では直りません。何が足りないかを早く把握することが、日程を立てる出発点です。

準備の有無が結果に及ぼす差

準備の有無は、金額にも日程にも影響します。

  • 買い手の判断が早くなる — 検討に必要な情報が揃っているためです
  • 監査の期間が短くなる — 費用も減り、買い手の負担が下がります
  • 減額交渉の材料が減る — 不明点が少ないためです
  • 管理された会社という印象を与える
  • 候補が複数集まりやすい — 検討しやすい案件として扱われます
  • 秘密保持の期間が短くて済む — 交渉が長引かないためです

6番目は見落とされがちな利点です。交渉が長引くほど、情報が漏れる確率が上がります。準備が整っていれば全体の期間が短くなり、秘密保持の面でも有利になります。

リユース業で特に求められる資料

他業種の一般的な資料に加えて、この業種固有の項目があります。

  • 在庫リスト — 管理番号、仕入日、仕入額、カテゴリ、状態、保管場所
  • 在庫日齢の分布と推移
  • 棚卸の実施記録と差異率
  • 買取チャネル別の件数・金額・粗利
  • 古物台帳と、記録の整備状況
  • 査定基準・手順書
  • 預かり品・委託品の一覧

1番目の粒度が、評価の精度を決めます。カテゴリ別の合計金額しか出せない状態では、日齢別の評価ができず、保守的な掛け率が適用されます。1点ごとのリストを出せるかどうかが、この業種の準備における最大の分かれ目です。

まとめ

決算書に加えて、在庫の日齢分布と買取チャネル別件数が必須です。この2つが価格を左右します。

まず既存の資料を1フォルダに集め、足りないものを洗い出すところから始めてください。