何のための制度か

毎月一定の時間外労働が見込まれる場合に、あらかじめ一定額を支払っておく仕組みです。給与計算の手間が減り、従業員にとっても収入が安定するという利点があります。

ただし、「いくら働かせてもよい」という制度ではありません。ここを誤解している経営者が少なくありません。

「いくら働かせてもよい」という制度ではないという点を押さえてください。誤解したまま運用していると、差額の支払いが遡って必要になることがあります。

有効に機能するための条件

一般に、次が求められると考えられています。

  1. 基本給と固定残業代が明確に区別されている(金額として分かれている)
  2. 何時間分に相当するかが示されている
  3. その時間を超えた分は、別途支払われている

3つ目が抜けている例が最も多くあります。超過分を払っていなければ、制度そのものの有効性が問われます。

3つ目が抜けている例が最も多くあります。超過分を払っていなければ制度そのものが有効と認められない可能性があります。設計の見直しは社会保険労務士に相談してください。

リユース店で起きやすい誤り

  • 「月給25万円(残業代込み)」とだけ書いてある(金額も時間数も不明)
  • 時間数は決めているが、超過分を計算していない
  • 雇用契約書には書いてあるが、就業規則に規定がない
  • 設定した時間数が、実態と大きくかけ離れている
  • 歩合給がある場合の計算に、固定残業代の扱いが反映されていない

1番目のような「残業代込み」という記載だけでは要件を満たしません。金額と時間数を分けて明記する必要があります。雇用契約書の文面を確認してください。

超過分の管理

制度を有効に保つには、毎月の実労働時間を把握し、設定時間を超えた分を計算して支払う必要があります。

つまり勤怠管理をやめてよいわけではありません。「固定残業代にしたから打刻は不要」という運用は、制度を無効にしかねません。

「固定残業代にしたから打刻は不要」という運用は、制度を無効にしかねません。勤怠管理をやめてよいわけではないという点が最も誤解されやすい部分です。

設定時間の決め方

実態に近い時間数にすることが大切です。実際は月20時間程度なのに40時間分としていると、その分だけ人件費が固定化されます。

逆に、実態が40時間なのに10時間分としていれば、毎月超過分の支払いが発生します。直近1年の実績から、実態に合った時間数を設定してください。

直近1年の実績から決めるのが確実です。実態とかけ離れた設定は、人件費の固定化か毎月の超過払いのどちらかを招きます。

制度を見直すときの進め方

既存の制度を変える場合、従業員にとって不利益な変更になる可能性があります。

  1. 直近1年の実労働時間を集計する
  2. 新しい設計で試算し、影響を把握する
  3. 不利益になる人がいれば、調整措置を検討する
  4. 個別に説明する
  5. 就業規則・賃金規程を改定する

手続きの進め方は、必ず社会保険労務士に確認してください。

2番目の試算は、必ず個人ごとに出してください。全体では影響が小さく見えても、特定の人だけ大きく下がることがあります。その人に個別に説明できるかが分かれ目です。

設定時間を決めるための集計

実態に合った時間数にするには、直近の実績が必要です。次を集計してください。

  1. 個人ごとの月間時間外労働時間 — 直近12か月分。季節による波も見えます
  2. 職種・役割ごとの傾向 — 査定担当と販売担当で時間外の出方が違うことがあります
  3. 店舗ごとの差 — 特定の店だけ多いなら、人員配置か業務の流れに原因があります
  4. 時間外が発生する理由 — 閉店後の台帳入力、棚卸、催事の準備。理由が分かれば減らせる部分が見えます

集計してみると、時間外の大半が特定の業務から出ていることが多いものです。その業務を営業時間内に移せれば、設定時間を下げられます。制度の設計を考える前に、まず減らせないかを検討してください。

まとめ

固定残業代は、金額と時間数を明示し、超過分を払って初めて機能します。勤怠管理も必要です。

まず自社の雇用契約書に、金額と時間数が明記されているかを確認してください。

自社の雇用契約書に金額と時間数が明記されているかを確認してください。書かれていなければそこが最初の課題です。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。労働法令の具体的な適用や必要な手続きは、法改正や個別の事情によって異なります。実際の対応にあたっては、社会保険労務士等の専門家および所轄の労働基準監督署にご確認ください。