在庫について(5項目)
- 在庫の日齢分布を出せるようになっているか
- 365日を超えた在庫がいくらあるか把握しているか
- カテゴリ別の粗利率と回転日数が出るか
- 簿価と実勢価格の差をおおよそ把握しているか
- 実地棚卸を年に1回以上行い、差異の原因を追えているか
この5つは今日から着手できます。データを取り始めるだけなら、来月には最初の数字が出ます。
このうち4番目が、最も判断に影響します。簿価と実勢の差が大きい会社は、決算書の見え方と実際の体力がずれています。その差を知らないまま譲渡や相続の話に入ると、想定が大きく外れます。おおよその感覚でも構わないので、一度カテゴリごとに見積もってみてください。
目利きについて(4項目)
- 自分以外に値付けができる人がいるか
- 取扱いの多いカテゴリについて査定基準が文書になっているか
- 買取金額の上限と決裁ルールが決まっているか
- 自分が1か月不在でも買取を続けられるか
ここは年単位です。基準づくりに半年、育成に2年程度を見てください。最も早く着手すべき領域です。
4番目は、実際に試してみると分かります。1週間でも店を離れてみて、買取が止まらなかったか、判断の相談が何件来たかを数えてください。相談が多いほど、仕組みに移せていない部分が残っているということです。
許可と記録について(4項目)
- 古物商許可が個人名義か法人名義かを確認したか
- 届け出ている取扱品目と、実際の取扱いが一致しているか
- 営業所・管理者の届出が現状と合っているか
- 本人確認記録と取引記録が、求められたときすぐ出せる状態か
買収監査でも相続でも、必ず見られる箇所です。ずれがあれば、早めに管轄の警察署に相談してください。
とくに1番目は、個人事業として始めてそのまま続けている店で見落とされがちです。個人名義の許可は、相続でそのまま引き継がれるわけではありません。将来を考えるなら、早い段階で名義と手続きの見通しを確認しておいてください。
契約について(3項目)
- 店舗の賃貸借契約の残存期間と解約予告期間を把握しているか
- 原状回復の範囲が契約書のどこに書いてあるか確認したか
- 什器・システムのリース契約の残債と満了日を一覧にしたか
これは1日で終わります。契約書を出して読むだけです。それでも後回しにされがちな項目です。
読んだときに確認したい箇所を挙げると、解約予告期間、原状回復の範囲、中途解約の違約金、譲渡や名義変更に関する制限条項の4つです。最後の項目は、M&Aのときに店舗を引き継げるかを左右します。貸主の承諾が必要と書かれている場合は、早めに関係を作っておくことが効きます。
資金について(2項目)
- 借入残高と個人保証の有無を正確に把握しているか
- 引退後の生活費が何年分あるか計算したか
個人保証は、譲渡でも廃業でも論点になります。金融機関との交渉には時間がかかるため、早めに状況を確認しておいてください。
2番目は、会社の話と切り離して計算してください。毎月の生活費、住宅ローンなど個人の借入、公的年金の見込み額を並べ、不足が何年分あるかを出します。この金額が、譲渡や廃業の判断における「最低ライン」になります。
家族と社内について(2項目)
- 家族に「継ぐ/継がない」を一度でも確認したか
- 自分に何かあったとき、店を回せる人と手順が決まっているか
最後の項目がいちばん重要です。店主が倒れた翌日から誰が査定するのか。ここに答えがない状態は、それ自体がリスクです。
1番目は、聞き方に工夫が要ります。「継ぐ気はあるか」と正面から尋ねると、気を使って曖昧な答えが返ってきます。会社の数字を見せながら「自分ならどうしたいか」を聞く形にすると、本当の考えが出てきやすくなります。
印がつかなかったときの優先順位
できていない項目が多くても、慌てる必要はありません。次の順で手をつければ、限られた時間を有効に使えます。
- 目利きの引き継ぎ(6〜9番) — 最も時間がかかります。今日始めても2年はかかるため、ここが最優先です
- 在庫の日齢管理(1〜2番) — 記録を始めるだけなら来月には最初の数字が出ます。すべての判断の土台になります
- 許可と記録の点検(10〜13番) — ずれがあれば解消に時間がかかることがあります。早めに確認してください
- 契約書の確認(14〜16番) — 1日で終わります。手が空いた日に済ませてください
- 資金と家族(17〜20番) — 判断の前提になる情報です。数字を出したら、家族と共有する場を設けてください
この順序を守れば、準備期間が3年あれば十分に間に合います。逆に、2と4から始めて1を後回しにすると、時間が足りなくなります。
まとめ
20項目のうち、契約と在庫の確認は今すぐできます。目利きの引き継ぎと許可の整理は年単位です。
できていない項目に印をつけて、年単位のものから着手してください。順番さえ合っていれば、準備は必ず間に合います。
20項目すべてに印がつく会社はほとんどありません。大事なのは、できていない項目のうち、年単位のものを先に始めることです。契約書を読むのは後からでも間に合いますが、目利きの引き継ぎは後からでは間に合いません。