事業の構造
- 仕入れも販売も、相手は事業者
- 取引量がまとまる
- 継続的な関係
- 掛け取引(与信管理が必要)
- 店舗が不要なことも
個人相手と違い、取引が読めて、記録が残るのが特徴です。承継でも評価されやすい構造です。
取引網が資産
買い手が求めているのは、この取引網です。
- 仕入先の数と、継続年数
- 販売先の数と、継続年数
- 取引額の推移
- 特定先への依存度
依存度が高いと、リスクとして見られます。上位数社への集中度を確認してください。
契約化が価値を守る
取引が口頭の関係だけだと、承継で失われます。
- 基本契約を書面にする
- 窓口を複数にする
- 取引条件(価格、支払、納期)を明文化する
- 取引実績を記録する
与信管理
掛け取引が中心のため、回収リスクの管理が必要です。
- 与信限度額の設定
- 支払条件と回収サイト
- 売掛金の年齢管理
- 遅延時の対応手順
売掛金の回収状況は、買収監査で必ず確認されます。
在庫の性質
卸中心の場合、在庫の持ち方が小売と異なります。
- 受注してから仕入れる(在庫を持たない)
- まとめて仕入れ、まとめて売る(回転が速い)
- 在庫が薄い分、時価純資産も薄い
在庫が薄い分、のれん(取引網)の比重が大きくなります。
承継の論点
- 取引網(仕入先・販売先の数と継続性)
- 取引の契約化
- 特定先への依存度
- 売掛金の回収状況
- 担当者個人への依存
- 古物営業法上の記録(事業者間取引も対象)
取引網を数字で示す
この事業では、取引先との関係が資産そのものです。
- 取引先の数と、継続年数の分布
- 取引先別の売上と粗利
- 上位取引先への集中度
- 新規取引先の獲得数
- 契約書のある取引先の割合
- 取引の頻度
3番目は不利に見えても示してください。上位数社への依存が高ければ、それはリスクとして評価されます。ただし、長期の契約があり、関係が会社に紐づいているなら、安定性として説明できます。集中度と、その関係の性質をあわせて示してください。
契約化を進める
継続的な取引でも、書面がなければ承継できません。
- 取引先ごとに、取り決めの内容を書き出す
- 相手に確認する — 認識が一致しているかです
- 基本契約書を交わす — 取引条件、支払条件、品質、責任の分担
- 承継に関する条項を入れる
- 窓口を複数名にする
- 契約書を一元的に保管する
4番目を今後の契約に入れておいてください。事業譲渡の際に個別の同意が必要かどうかは、契約の定めによります。将来の可能性として、あらかじめ定めておけば、承継の手続きが軽くなります。
在庫と資金の性質を示す
法人向け卸では、在庫と資金の回り方が個人向けと異なります。
- まとまった数量を扱う — 1件あたりの金額が大きくなります
- 売掛での取引が中心になる — 資金の回収まで時間がかかります
- 在庫の回転は速い場合が多い — 出口が決まってから仕入れる形もあります
- 資金繰りの管理が重要になる
- 与信の管理が必要になる
2番目と4番目を説明できる形にしてください。売掛金の回収サイクルと、仕入れの支払いサイクルの差が、必要な運転資金を決めます。この構造を示せれば、買い手が必要な資金を見積もれます。
承継で問われる点
買い手が確認する項目を整理しておいてください。
- 取引先との契約の有無
- 窓口の属人性
- 売掛金の年齢分析 — 長期の未回収がないかです
- 与信管理の体制
3番目は必ず点検してください。回収できていない売掛金があれば、資産として評価されません。定期的に確認し、回収の見込みがないものは処理しておいてください。この管理が行き届いていることが、体制の証明になります。
まとめ
取引網が最大の資産です。契約化と窓口の複数化で、会社に紐づけてください。
特定先への依存度と、売掛金の回収状況を数字で示せるようにしましょう。