ギャップの構造
| 出ていくお金 | タイミング |
|---|---|
| ドライバーの給与 | 毎月(最も大きい) |
| 燃料費 | 翌月払いが多い |
| 高速代 | 翌月 |
| 傭車費 | 翌月 |
| リース料・借入返済 | 毎月 |
| 保険・税金 | 時期による |
一方、運賃の入金は月末締めの翌月末、翌々月ということが珍しくありません。
売上が増えるほど、必要な運転資金も増えます。 「忙しいのに現金がない」という状態は、この構造から生まれます。
必要な運転資金を計算する
必要運転資金 = 売掛金 + 貯蔵品 - 買掛金・未払金
おおまかには、次でも把握できます。
月商 × (回収サイト - 支払サイト)÷ 30日
この金額が、常に会社から出ている状態です。手元にこれを賄う資金がなければ、借入で埋めることになります。
ギャップを縮める方法
1. 回収を早める
- 請求を早く出す:月初に出せば、それだけ早く回ります(請求業務の電子化)
- 請求漏れをなくす:待機料・附帯作業料の計上漏れ
- サイトの短縮を交渉する:新規取引の条件として
- ファクタリング:手数料と相手先への影響を確認したうえで
請求を早く出すだけで、資金繰りは改善します。 月末月初に請求業務で数日かかっている会社は、ここに改善余地があります。
2. 支払いを適正化する
- 燃料・高速代の支払条件を確認する
- リース・割賦の返済計画を見直す
ただし、協力会社への支払いを遅らせるのは避けてください。 取引の公正さの問題であり、信頼も失います。下請法・物流特殊指定の基本をご覧ください。
3. 運転資金を借りる
構造的に必要な資金なので、借入で賄うのは正常です。
- 当座貸越・短期の借入枠を確保しておく
- 季節変動に備えた枠
- 金融機関に事業の構造を説明する(金融機関への説明)
資金が必要になってから相談するのでは遅いことがあります。平時に枠を作っておいてください。
新規取引で注意すること
大口の新規荷主を獲得すると、売上が増える前に資金が出ていきます。
- 車両・ドライバーの手配
- 燃料・高速代
- 初回の入金まで2か月
受注前に、必要な運転資金を計算してください。資金が足りずに受けられない、という判断もあり得ます。
与信管理
直取引が増えると、回収リスクも増えます。
- 新規取引前に信用状況を確認する
- 取引限度額を決める
- 入金の遅れを月次で確認する
- 遅れが続く先には早めに対応する
1件の貸倒れが、数か月分の利益を消すことがあります。直取引の開拓をご覧ください。
資金繰り表を作る
月次で、次を並べてください。
- 月初の現金残高
- 入金予定(荷主別)
- 支払予定(給与、燃料、リース、返済、税金、保険)
- 月末の残高見込み
3か月先まで見える状態にしてください。これがあれば、資金不足を事前に察知できます。
この表は、金融機関への説明でも、M&Aのデューデリジェンスでも求められます。財務デューデリジェンスで指摘されやすい点をご覧ください。
季節変動への備え
- 繁忙期:売上は増えるが、入金は後。資金は最も苦しくなります
- 閑散期:売上は減るが、固定費は変わらない
- 賞与、税金、保険の支払い月
年間のどの月が最も苦しいかを把握し、そこに備えてください。
燃料高騰時の影響
燃料が急騰すると、支払いが先に増え、運賃への転嫁は後になります。この時間差が資金繰りを直撃します。燃料高騰時の資金対策、燃料価格の変動とどう付き合うかをご覧ください。
承継・M&Aでの意味
買い手は、運転資金の必要額を必ず見ます。
- 回収サイトと支払サイト
- 売掛金の回収状況(滞留はないか)
- 必要運転資金の水準
- 季節変動
月次の資金繰り表があると、説明が格段に楽になります。 また、回収サイトが長い荷主が多いと、その分の資金負担として評価されます。
まとめ
運送業は先払い・後入金の構造で、売上が増えるほど運転資金も増えます。まず必要運転資金を計算してください。改善策は、請求を早く出す・請求漏れをなくす・サイトを交渉する・借入枠を平時に確保する、の4つです。3か月先まで見える資金繰り表を作ることが出発点になります。