2つの法律の関係
自動車リサイクル法は、使用済自動車という特定の物について、専用の処理の流れを定めています。この流れに沿って処理する限り、廃棄物処理法の許可がなくても行える範囲があります。
一方、使用済自動車の流れから外れるものを扱う場合は、廃棄物処理法の世界に入ります。ここが線引きの基本です。
解体業許可だけで足りる範囲
おおまかには、次のような作業が該当します。
- 引き取った使用済自動車を、自社のヤードで解体する
- 取り外した部品を再利用のために保管し、販売する
- 解体後の廃車ガラを、破砕業者へ引き渡す
- エアバッグ類、フロン類を所定の流れで引き渡す
これらは自動車リサイクル法の枠内で完結します。移動報告を適切に行うことが前提です。
廃棄物処理法の許可が必要になる場面
① 他社の廃棄物を運ぶ
最も間違いが起きやすいのがここです。自社が排出した廃棄物を自社で運ぶのは、収集運搬業の許可が不要とされています。しかし他社が排出した廃棄物を運ぶなら、許可が必要です。
実務では、次のような場面で境目が曖昧になります。
- 取引先の整備工場から、廃タイヤやバッテリーをついでに引き取ってくる
- 同業者のヤードから、処理しきれない廃棄物を運んでくる
- 解体現場で出た廃棄物を、依頼を受けて運ぶ
「ついでだから」「頼まれたから」で運んでいるうちに、無許可の収集運搬になっていることがあります。誰が排出者なのかを、その都度確認してください。
② 自動車以外の廃棄物を受け入れる
家電、建設廃材、事業所から出た金属くず。これらを受け入れて処分するなら、廃棄物処理法の許可の対象になり得ます。
スクラップヤードを併設している会社では、この判断が日常的に必要になります。有価で買い取っているのか、費用をもらって処理を引き受けているのか。お金の流れる向きが、判断の重要な手がかりになります。
③ 中間処理として破砕・圧縮を行う
他社から受け入れた廃棄物を、破砕したり圧縮したりする行為は、中間処理にあたり得ます。自社の使用済自動車を処理するのとは別の話です。
有価物か廃棄物か
この業界で最も判断が難しいのがここです。同じ鉄くずでも、売れる状態なら有価物、費用を払って引き取ってもらうなら廃棄物、という整理になります。
問題は、相場によって同じ物の扱いが変わることです。相場が高いときには買い手が付いたものが、下落局面では逆有償になることがあります。
判断の際には、取引価格だけでなく、物の性状、通常の取引形態、占有者の意思など複数の要素が考慮されます。迷ったら、行政に事前相談するのが確実です。口頭での確認ではなく、相談した日付と担当者、回答の内容を記録に残してください。
両方持っている会社の管理
解体業許可と産業廃棄物処理業の許可を併せ持つ会社は少なくありません。この場合、管理の負担が倍になります。
- 許可の更新時期がそれぞれ異なる
- 変更の届出先が異なる
- 報告書の様式と提出先が異なる
- 帳簿の記載事項が異なる
これらを1人の担当者が抱えている会社が多く、その人が辞めた瞬間に管理が止まります。一覧表にして、複数人が把握できる状態にしておいてください。
承継のときに確認すること
産業廃棄物処理業の許可も、法人が受けているものです。株式譲渡なら残り、事業譲渡なら取り直しになります。
ただし解体業許可と異なり、この許可には別の承継の仕組みが用意されている場合があります。合併や分割、相続の場面での取り扱いについては、所管の窓口に確認してください。
いずれにせよ、保有する許可を漏れなく把握することが先決です。「あるはずだが、どこにあるか分からない」という状態は、調査の場面で必ず問題になります。
取引先から持ち込まれるものに注意する
実務で最も判断を求められるのが、取引先が持ち込んでくるものです。
整備工場が車を持ち込む際、ついでに廃タイヤやバッテリー、廃油を置いていく。同業者が処理しきれない廃棄物を持ってくる。工場から出た金属くずを引き取ってほしいと頼まれる。
いずれも「断りにくい」場面です。しかし受け入れる根拠があるかどうかは、その都度確認する必要があります。
判断の手がかりは次のとおりです。
- それは使用済自動車の処理に伴って発生したものか、それとは別に持ち込まれたものか
- お金は自社が払うのか、相手が払うのか
- 自社にその品目を扱う許可があるか
- 誰が排出事業者にあたるのか
現場の判断で受け入れてしまい、後から問題になる例があります。受け入れてよいものの一覧を作り、迷ったら断る、という運用にしておくほうが安全です。
相場が下がったときこそ確認する
有価物と廃棄物の境目は、相場によって動きます。買い取っていたものが、下落局面では処理費をもらわないと引き受けられなくなる。この転換点で、扱いが変わります。
ところが実務では、取引の形だけが以前のまま続くことがあります。契約書の内容も、記録の付け方も変えないまま、実態だけが変わっている状態です。
相場が大きく動いた局面では、主要な品目について扱いを見直す。この点検を年に一度でも行っておくと、後の指摘を防げます。
※ 廃棄物該当性や許可の要否は個別の事情によって判断が分かれます。実際の運用は所管の自治体窓口および専門家にご確認ください。